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男性産婦人科医・重見大介が伝えたいこと #21

からだと発達についてどう伝える? 〜包括的な教育解説シリーズ(6)〜

 

裸の男女のシルエットイラスト

子どもが安心して成長するためには、知識だけでなく「人との関わり方」を学ぶ機会が欠かせません。とくに思春期は、友人関係・恋愛・SNS利用などが一気に広がり、うれしい経験もあれば、誤解やトラブル、傷つくことも起こりやすい時期です。
そして、反抗期が重なってくる時期にもなります。

だからこそ家庭では、「正解」を教え込むよりも、気持ちの尊重・安全を守る・相談できる関係性などを日常の中で育むことが、将来のリスク予防にもつながるはずです。

本シリーズ記事では、今の時代に求められる包括的な性教育について、「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(文献1)をベースに分かりやすく解説していきます。

(編集部注:国際セクシュアリティ教育ガイダンスの日本語版はこちらからご覧いただけます)

本ガイダンスには、8つのキーコンセプトが含まれ、いずれも思春期に学び、考えるべきものになっています。

今回は、「キーコンセプト6:人間のからだと発達」です。

どのような内容か

子どもは、からだの変化や性に関する情報に、友だち・SNS・動画などを通じて早い段階から触れていきます。

そこで大切なのは、保護者が「完璧に教えること」ではなく、正確な言葉・名称で説明すること、そして安心して質問できる空気をつくることです。からだの話が「笑い」「からかい」「タブー」になりやすいほど、子どもは真偽のわからない情報に頼ってしまい、困ったときに大人へ相談しづらくなってしまいます。また、人のことを悪意なくからかったりしてしまいやすくなるでしょう。

家庭は、子どもが自分のからだを大切にし、他者のことも尊重できるようになる上で重要な場となります。

キーコンセプト6は、

6.1 性と生殖の解剖学と生理学
6.2 生殖
6.3 前期思春期
6.4 ボディイメージ

の4トピックで構成されています。

この4トピックを通じて、「知識」と「自己理解」がつながるような流れになっています。
具体的には、

6.1で、からだの部位や働きを正しく知る
6.2で、妊娠が起こる仕組みを理解する
6.3で、思春期の変化を安心して受け止める
6.4で、見た目へのプレッシャーから自分を守る

という感じです。

この全体像を保護者の方も理解できていると、お子さんが「今どの辺りまで理解しているか・どこで困っているか」がわかりやすくなるかと思います。

①性と生殖を正しく知ることが安全につながる

辞典を使って探求する男女

からだの部位や働きを正しい言葉で話せるというのは、子どもにとって「自分のからだを守るための言葉」を持つことになります。

特に外性器や月経、射精、勃起などはからかいの対象になりやすいですし、嫌だと感じるボディタッチをされた際にそれを言語化できないと困ってしまうことも増えるでしょう。
つまり、これは自身の健康や安全を守ることに直結します。

家庭で意識したいのは「生理的な機能として説明する」ことです。
月経は「子宮内膜がはがれて出血する生理現象」であり、精通も「からだが成長してみんなに起こる自然な変化」です。どちらも「下品」や「卑猥(ひわい)」なものでは決してありません。

お子さんにとって、驚きや不安を感じてしまうことは自然ですが、「汚い」「恥ずかしい」といったイメージと結びつけると、症状(痛み、過多月経、不正出血、陰部のかゆみ等)を一人で抱え込みやすくなります。

また、からだの仕組みをきちんと知っていると、SNS等で見かける誇張表現や誤情報に対して「それ本当?おかしくない?」と気付き、誤解や危険に巻き込まれるリスクを減らすことができるはずです。

【家庭でできること】

・からだの部位は正しい名称で呼ぶ(愛称でもよいが正式名称も知っておく)
・月経・精通は「成長のサイン」として淡々と扱い、衛生管理や相談先を伝えておく
・不調の相談については「評価」せず「確認」を(例:「そのくらい我慢できるんじゃない?」と決めつけず、まずは状況をきちんと聞く)

②妊娠の仕組みを知ることの大切さ

エコー写真を見せる妊婦さん

妊娠は、突然起こる現象ではなく、排卵・受精・着床という連続したプロセスの上に成り立ちます。この仕組みを理解することは、将来の選択(避妊、感染予防、受診)につながる土台になり、非常に重要です。

保護者が気をつけたいのは、「妊娠=女性だけの問題」にしないことです。
生殖に関わる行為や責任、相手の意思の尊重は、性別に関係なく大切です。また、現実には不妊や流産などもあり、家族や周囲の経験に触れる機会もあります。

年齢に応じて濃淡は調整しつつ、「人や家庭によって事情はさまざま」「絶対にからかうべきじゃない」という考え方を伝えることが、お子さんの共感力と安全につながるはずです。

*「自分はどこから生まれてきたの?」という質問にどう答えたらいいか困っている、という声もよく聞きます。私のニュースレター記事で詳しく解説しているので、ご関心があれば読んでみてください。
性教育シリーズ① 〜自分はどこから生まれてきたの?〜

【家庭でできること】

・妊娠の仕組みは「怖がらせるため」ではなく「理解のため」に、端的に科学的に説明する
・まずは「同意・尊重・安全」を会話の軸にする
・不妊や流産などの話題では、他者のプライバシーと尊厳を守る大切さをセットで伝える

③思春期前後の変化は成長のサイン

ニキビが気になって鏡をみる男子学生と女子学生のイラスト

前期思春期は、からだの変化(身長、体型、体毛、汗、体臭、皮脂、乳房発育、声変わりなど)に加え、気分の揺れや対人関係の敏感さも増えやすい時期です。

ここで大切なのは、「早い・遅い」を人と比べないことです。
個人差が大きく、同じ年齢でも進み方は実際かなり違います。例えば、初潮(初めての月経)は、一般的に10〜15歳頃とだいぶ幅があります。

子どもが不安を抱えやすいポイントは、「自分だけ変かも」「みんなに変だと思われている」と感じることでしょう。
家庭では、誰にでも起こる自然な変化であること、そして変化を事実として受け止め、ケアの方法(清潔、睡眠、スキンケア、下着や衛生用品の選び方など)を具体的に伝えてあげると安心につながります。

また、

・からかわれる
・誰かと比較され変だと言われる
・プライバシー侵害を強要される

などのリスクから身を守るために、「嫌なことは嫌と言っていい」「困ったら大人に相談していい」を繰り返し伝えることが重要です。

【家庭でできること】

・「成長は人それぞれ」を口癖にし、他人との比較を家庭内で減らす
・セルフケアを「説教」にせず、便利な製品やケア(制汗、スキンケアなど)を一緒に試す
・不安やトラブルは保健室や医療機関でも相談できることを伝える

④見た目への勝手なジャッジから子どもを守る

おなかからセリフを出す女性

SNSや広告、友人関係の中で、子どもは「細さ」「可愛さ・綺麗さ・かっこよさ」など、見た目の「基準」に日々晒されます。歪んだボディイメージを持ってしまうことは、単なる「気にしすぎ」にとどまらず、自己否定や極端なダイエット、拒食症、美容整形への依存などにつながり得る大きな健康課題です。

家庭では、ぜひ「健康」と「見た目」を切り分けて話してあげてください
人気のアイドルやインフルエンサーでも痩せすぎていれば「健康的ではない」ですし、逆に太っていることを「人それぞれ」と割り切ってしまうことも健康に悪影響となります。

思春期での痩せすぎは、エネルギーや栄養の不足が身体の基盤作りに悪影響を与えます。

・成長・発育への影響
身長が伸び悩む、筋肉量が減少する。

・生殖機能への影響
無月経や月経不順が起こる。将来の不妊リスクにつながることもある。

・骨密度の低下
骨が十分に強くならず、若いうちから骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や疲労骨折のリスクが高まる。

・免疫力と体力の低下
貧血、疲れやすさ、感染症にかかりやすくなる。

・精神面への影響
集中力の低下、イライラ、摂食障害への移行リスク。

一方で、肥満になると生活習慣病の予備軍となりやすく、心理的な負担も大きくなる傾向があります。

・生活習慣病のリスク増加
2型糖尿病、高血圧、脂質異常症など。

・骨、関節への負担
体重増加によるひざや股関節の痛み、脊柱(せきちゅう)への影響。

・心理的・社会的影響
容姿へのコンプレックス、自己肯定感の低下、不登校などの原因になることも。

・成人肥満への移行
思春期の肥満は、成人になっても解消されず悪化しやすい。

さらに、保護者の何気ない見た目への発言(「太ったんじゃない?」「毛が濃いね」など)は子どもの記憶に強く残りトラウマになることがあるので注意しましょう。
また、褒めるときは見た目より努力や工夫、優しさ、創造性など「行動と価値」に言及する方がベターでしょう。

【家庭でできること】

・体型の話題を減らし、褒める観点を「見た目→行動・努力・工夫」に移す
・極端な食事制限や急な体重変化、気分の落ち込みなど「異常なサイン」に早めに気づく
・SNSなどでは「見た目は操作されている」(加工・切り取りなど)事実を知ってもらう

年齢別に伝えておくべき要素のまとめ

様々な年齢、国籍の子供たちが肩を組む写真

年齢別にどこまで話すかのイメージを再確認しておきましょう。

・5〜8歳

からだの各部位の名前と機能
プライベートなからだの部位
妊娠は卵子と精子が結合して子宮に着床することで始まる
家庭ではなんでも質問してよいこと

・9〜12歳

月経・精通の基本、妊娠しやすい時期
月経の遅れは妊娠を疑うサインである
個人差があること
身体的外見は人としての価値と無関係である
からかいへの対処

・12〜15歳

思春期におけるからだの変化とセルフケア
生殖機能と性的感情は違う
同意と境界線
適切なボディイメージ

・15〜18歳以上

健康管理の方法(受診の目安含む)
見た目の非現実的な基準に対抗できる
ホルモンは生涯にわたって人の感情や身体的変化に影響する
ライフサイクルにおいて生殖能力は変化する
不妊症や不妊治療というものがある

年齢はあくまでも目安で、実際はお子さんの発達状況や環境で前後します。
重要なのは、必要なタイミングで、短くても繰り返し伝える・考えてもらうこと、をぜひ覚えておいてくださいね。

 

以上、包括的な性教育における「キーコンセプト6:人間のからだと発達」について知っておきたいポイントを紹介しました。

キーコンセプト6が目指すのは、子どもが自分のからだを「恥ずかしいもの」ではなく「大切なもの」として理解し、変化を安心して受け止め、見た目の評価に振り回されずに健康と尊厳を守れるようになることです。

4つのトピックを通じて、知識が安心に、安心が相談に、相談が安全につながるようにしたいものですね。
ぜひ、本記事をご家庭や学校等でご活用いただければ嬉しいです。

*私のニュースレターでも性教育の参考になる記事を配信しています。ご興味があればぜひ読んでみてください。
全ての男性に知っておいてほしい、女性の月経について

 

この記事の前の記事

性教育で子どもに伝えたい「スキル」とは 〜包括的な教育解説シリーズ(5)〜

 

参考文献
WOMEN, U. N., et al. International technical guidance on sexuality education: an evidence-informed approach. UNESCO Publishing, 2018.

重見大介

この記事の執筆医師

産婦人科オンライン代表

重見大介先生

産婦人科

産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。産婦人科領域の臨床疫学研究に取り組みながら、遠隔健康医療相談「産婦人科オンライン」代表を務め、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りに従事している。他に、HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんに関する啓発活動や、各種メディア(SNS、ニュースレター、Yahoo!ニュースエキスパート)などで積極的な医療情報の発信をしている。

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