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気になるキーワード 「妊娠糖尿病」

【第3回】妊娠糖尿病のインスリン療法と産後の注意点|2型糖尿病の予防まで

糖尿病の血糖値検査をする女性

妊娠糖尿病を解説する連載。最終回の今回は、食事療法だけで血糖値がコントロールしきれない場合の「インスリン療法」と自己血糖測定、そして出産後に必要なフォローについて解説します。インスリンは胎盤を通過しないため赤ちゃんに届かない、安全性の高い治療です。

◀前回:妊娠糖尿病の赤ちゃん・母体への影響と食事療法【第2回】

インスリン療法と自己血糖測定が必要になったら

食事療法だけで血糖値がコントロールしきれない場合には、次のステップとして「インスリン療法」が始まります。いきなり本格的な治療で不安になる方もいると思いますが、順を追って説明します。

インスリン注射はいつから?赤ちゃんへの副作用がない理由

食事療法を1~3週間ほど続けても目標の血糖値に達しない場合、インスリン注射が導入されます。
赤ちゃんへの影響が気になるところですが、インスリンは分子が大きいため、胎盤を通過しません。つまり、お母さんに注射されたインスリンは赤ちゃんには届かないので、赤ちゃんへの直接的な影響はないと考えてOKです。

また、普通の糖尿病の治療の選択肢としては飲み薬(血糖降下薬)というのもあるのですが、飲み薬の中には胎盤を通過するものがあり安全性の確認が十分でないため、妊娠中はインスリン注射が標準的な治療となっています。

注射は細い針を使い、お腹や太ももに自分で打ちます。最初は緊張しますが、初めてのときは看護師さんに丁寧に教えてもらえますし、慣れてしまえば大きな痛みを感じない方がほとんどです。

インシュリン注射器
ペンのような形のインスリン注射キット Photo:PIXTA

自己血糖測定(SMBG)のタイミングと、痛くないコツ

インスリン療法と並行して、自宅で血糖値を自分で測る「自己血糖測定(SMBG)」も始まります。これは、自分の指などに小さな針を刺し、血液を取って自分で血糖を測る検査のこと。

妊娠中の場合は一般の糖尿病患者さんよりも頻繁にチェックする必要があります。毎日何度も指を刺すのは怖いかもしれませんが、血糖値のデータは赤ちゃんを守るためにとても重要です。毎回の数値にはあまり一喜一憂せずに、淡々と記録する習慣をつけていきましょう

測定のタイミングの目安

・毎食前
・毎食後1〜2時間
・就寝前 (施設の方針や医師の指示によって異なります)

痛みを減らすちょっとしたコツ

・指先の「腹側」より、側面を刺すと痛みが少ない
・穿刺(せんし)する前に指を温める(血流が増えて少量の血で測れるため)
・穿刺器具の針の深さを調整する(薄い皮膚なら浅めに)
・毎回同じ指に刺さず、指を変える(皮膚への負担を分散)

血糖値検査

管理入院(教育入院)は何をする?期間・費用の目安

施設によっては、血糖コントロールの安定や食事指導・インスリン指導のために「管理入院(教育入院)」を勧めることがあります。期間の目安は、病院・状態によって違いますが、1〜2週間となります。

入院中にすることは?

・毎食前後の血糖測定と記録
・管理栄養士による食事指導(実際の病院食を食べながら食事療法について学べる)
・インスリン自己注射の練習
・胎児のモニタリング(ノンストレステストなど)

費用の目安

健康保険が適用されるため、3割負担の方であれば概ね5〜15万円程度が目安ですが、施設や入院期間の長さで差があります。入院費が高額になった場合は、高額療養費制度の対象になる場合もあるため、加入している健康保険組合に適用の可否を確認しておきましょう。

産後のケアと将来の2型糖尿病リスクについて

「出産が終わったら、妊娠糖尿病との付き合いも終わり!」と思いたいところですが、実は産後にも必要なフォローがあります

出産後の血糖値はどうなる?産後6〜12週の再検査(75gOGTT)

出産後は胎盤のホルモンがなくなるため、血糖値は自然に正常に戻ることが多く、インスリン注射も出産と同時に不要になるケースがほとんどですが、産後のフォローとして6〜12週のタイミングで75gOGTTの再検査が行われます

これは、妊娠糖尿病があった方は、産後に正常血糖に戻っていても、将来的に2型糖尿病(先天的なものではない糖尿病のこと)を発症するリスクが一般の方より高いためです。

産後の再検査で正常値であれば、まずひと安心。その後も、年1回程度の血糖検査をしながらフォローをしていきます。

赤ちゃんを抱っこして窓際で笑う女性
産後のフォローも大切になる Photo:PIXTA

将来の糖尿病発症リスクを最小限にする生活習慣のポイント

妊娠糖尿病を経験した方が、将来の2型糖尿病を予防するためにできることをご紹介します。

1) 授乳を続ける

母乳育児は、お母さんのエネルギーを消費します。体重管理に役立つとともに、血糖代謝の改善にも良い影響があるとされています。赤ちゃんにとってもメリットが大きいので、可能な範囲で続けてみてください。

2) 産後の体重管理

妊娠中に増えた体重を産後に適切に戻すことが、将来の糖尿病リスク低下につながります。育児も大変ですから、急激なダイエットは必要ありませんが、産後の回復とともに少しずつ意識できるようにしていきましょう。

3) 適度な運動習慣

産後の体が落ち着いたら、ウォーキングや軽いストレッチから始めてみてください。気分転換にもなりますし、筋肉はインスリンの働きをサポートしてくれる大切な組織なので、運動して体を動かすことが大事です。

4) 定期的な血糖検査

自覚症状がないまま血糖値が上昇することもあります。調子がよいからと放置せずに、年1回の検診とフォローを習慣にしましょう。

公園でヨガをする女性
ストレッチやヨガなど、負担の少ない運動から Photo:PIXTA

まとめ|妊娠糖尿病を正しくコントロールして元気な出産を迎えよう

検査で引っかかったり、妊娠糖尿病と診断されると、これからの妊娠生活が不安になってしまう人も少なからずいます。

診断が出たということは、体の異変をきちんとキャッチできたということ。知らないまま過ごすより、対策をしっかりするほうが赤ちゃんをご自身を守ることにつながります。主治医や助産師、管理栄養士をどんどん頼ってください。

この連載記事のポイントをまとめると、以下の通りです。

・妊娠糖尿病は妊娠中のホルモン変化が主な原因で、自分を責める必要はありません
・検査は2段階(妊娠初期の随時血糖または妊娠中期の50gGCT→75gOGTT)で行われます
・精密検査のOGTTは3回の採血結果のうち、診断基準を1つでも超えると診断される
・赤ちゃんやお母さんへのリスクは適切な管理で大幅に軽減できる
・食事療法の基本は分割食(1日5〜6食)、低GI食品の活用
・コンビニ食材も工夫次第で立派な管理食に
・インスリンは赤ちゃんに届かないため、安全に使用できます
・産後も75gOGTTの再検査、血糖チェックの継続で定期的なフォローを

妊娠中に病気の診断がされると、不安になる方もいると思います。診断はお母さんと赤ちゃんを守るための大切な一歩。crumiiは、正しい知識で赤ちゃんを守る女性を応援します。

 

<もっと詳しく知りたい方へ>
糖尿病と妊娠に関するQ&A 
妊娠糖尿病  日本産科婦人科学会  
<参考文献>
「妊娠と糖尿病」母児管理のエッセンス 難波光義 杉山隆 株式会社金芳堂
日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン2024 妊婦の糖代謝異常
日本内分泌学会HP 妊娠糖尿病

 

柴田綾子

この記事の監修医師

医長

柴田綾子先生

産婦人科

世界遺産15カ国ほど旅行した経験から母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修し2013年より現職。女性の健康に関する情報発信やセミナーを中心に活動。著書:女性の救急外来 ただいま診断中!(中外医学社,2017)、産婦人科ポケットガイド(金芳堂,2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社,2021)明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社,2022)

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