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気になるキーワード 「子どものSNSと肥満」

SNSで子どもの肥満が加速!?「食べすぎ」「運動不足」だけじゃない、最新研究でわかったこと【前編】

カテゴリー:SRHR・女性医療

ボウルにいっぱいのポテトチップスに手をだす子供の手

子どもたちがスマホを手に、YouTubeやTikTok、Instagramなどを楽しむ姿は今や、すっかり当たり前になりました。ソーシャルメディア(SNS)は友だちとの交流や情報収集、学習など、多くのメリットをもたらします。一方で、子どもたちが長い時間を過ごす「生活環境」の一つになったからこそ、その健康への影響にも注目が集まっています。

今回は、今年(2026年)に掲載された総説論文(文献1)をもとに、6〜18歳の子ども・思春期の肥満とSNSとの関係について考えます。
SNSと肥満の気になる関係に迫ってみましょう。

子どもの肥満は「食べすぎ」「運動不足」だけじゃない?

肥満というと、「食べすぎている」「もっと運動すればよい」と、本人の生活習慣だけに原因を求めてしまいがちです。しかし近年では、肥満はそれほど単純な問題とは考えられていません。

肥満には、遺伝的な体質に加え、

・家庭の食環境
・経済状況
・学校や地域の環境
・睡眠
・ストレス
・利用できる食品
・運動する場所

など、非常に多くの要因が複雑に関係しています。

世界保健機関(WHO)も、肥満を「環境・社会・生物学的要因・行動などが相互に関係して生じる慢性疾患」と位置づけています。

ピザやコーラ、マフィンやケーキなど高カロリーなおやつと肥満の児童Photo:PIXTA 

そして現在、新たな「環境」として無視できなくなっているのが、スマホやSNSです。
特に学童期から思春期は、自分のスマホやタブレットを持ち始め、友人とのオンラインでのやりとりやSNSへの接触が急速に増える時期。今回の論文が6〜18歳に焦点を当てているのもそのためです。

SNSは「運動しない時間」というだけの問題ではない

「スマホばかり見ていると運動しなくなり、太りやすくなりそう」
これは比較的イメージしやすいのではないでしょうか。実際、動画やSNSを眺めて過ごす時間が長ければ、その分、身体活動に使える時間が減る傾向があります。

しかし、SNSと肥満の関係性はそれだけではないのです。

例えばSNSには、ファストフード、お菓子、清涼飲料水などの食品広告が大量に存在します。夜遅くまで動画や投稿を見続ければ睡眠にも影響します。SNSで他人の容姿と自分を比較することが、ボディイメージやメンタルヘルスに影響する可能性が大きいことも指摘されています。ストレスが強くなれば、感情的な暴飲暴食につながることもあるでしょう。

さらにSNSには、「もう少しだけ」と見続けたくなる仕組みがあります。

・無限スクロール
・自動再生
・たくさんの通知
・「いいね」などのフィードバック
・次々と変わるショート動画

こうした設計が、SNSの利用時間を長くしていることも最近では問題視されています。

つまり、
SNS → 座位時間・食行動・睡眠・心理状態などの変化 → 体重増加への影響
という複雑なプロセスを考える必要があるわけですね。

だらだらSNSを続けてしまう人のイラストPhoto:PIXTA 

とくに注目されている「デジタル広告」

SNSと子どもの肥満の関係の中でもエビデンスが比較的蓄積しているのが、食品マーケティングです。

2022年に発表されたシステマティックレビュー論文(文献2)では、子ども・思春期を対象とした35の研究結果が分析されています。その結果、SNS利用は、

・朝食を抜く
・不健康なスナックや糖分を含む飲料の摂取
・果物や野菜の摂取量が少ない

ことなどと関連していました。

SNS広告には、テレビCMとは違う特徴があります。
たとえば、好きなYouTuberやインフルエンサーが動画の中で自然にお菓子を食べていたら、子どもにとってそれが「広告」なのか、単なる日常の一コマなのか、判別するのは難しいでしょう。

9〜11歳の子どもを対象にした別の研究(文献3)では、インフルエンサーがお菓子を紹介する投稿を見た子どもは、食べ物と関係のない投稿を見た子どもに比べて、そのあと食べるお菓子の量が多かったという結果が出ています。

小規模な研究ではありますが、「日常的にスマホで見るもの」が実際の食行動に影響しうることを示す興味深い研究です。

WHOも、子どもへの食品マーケティングが、食品の好み、購入してほしいという要求、実際の摂取などに影響するとして、糖・塩分・飽和脂肪酸などを多く含む食品のマーケティングから子どもを守る多面的な政策を推奨しています。

スマートフォンでおやつのパンケーキを撮影する手Photo:PIXTA 

夜のスマホが「睡眠」を通じて影響する可能性も

もう一つ見逃せないのが睡眠です。

スマホを寝室に持ち込み、寝る直前までSNSを見る習慣があると、就寝時刻そのものが後ろにずれてしまいます。動画や投稿による心理的な刺激・興奮や、画面からの光も睡眠に影響するとされています。

6〜19歳の12万人以上を含むメタアナリシス研究(文献4)では、就寝時のスマホなどの機器の使用は、睡眠時間の不足、睡眠の質の低下、日中の眠気と関連していました。
また、睡眠不足そのものが食欲のコントロールを崩し、高カロリーな食事量を増やす可能性もあります。

ベッドの上に置かれた目覚まし時計Photo:PIXTA 

「SNSを使うと太る」は正しい?

では、一番気になることとして「SNSを使っていると太りやすくなるのか」についてはどう考えると良いのでしょうか。

ここは非常に重要なところですが、現時点では、「SNSを利用すると肥満になる」という因果関係が証明されたわけではない、というのが正確な解釈だと言えるでしょう。

SNSを長時間使う子どもには、

・もともと睡眠時間が短い
・身体活動が少ない
・家庭の生活習慣が異なる
・心理的ストレスを抱えている

など、さまざまな背景の違いがあるかもしれません。研究やデータ分析において、こうした要因を完全に取り除けるとベストなのですが、これはそう簡単なことではありません。

これまでの研究の多くが横断研究や観察研究であり、社会経済状況、育児環境、睡眠、身体活動、食事の環境、メンタルヘルス、もともとの肥満などによる影響が排除しきれていないのです。

したがって、「スマホの利用制限をすれば肥満を予防できる」というほど単純な話ではないんですね。とはいえ、上で挙げたような、さまざまな面での悪影響が起こり得る、ということはご理解いただけたのではないでしょうか。

 

まとめ:SNSは肥満リスクを強める「かもしれない」

つまり重要なのは、SNSを肥満の「最大の原因」と考えることではなく、運動不足、睡眠不足、不健康な食品の広告、心理的ストレスなど、すでに知られているいくつものリスクを増幅する可能性のある「環境」として考えることだと私は思っています。

単一の要因というよりも、いろいろな他のリスクの影響を強めてしまうかもしれないもの、というイメージですね。

では、このような環境から子どもを守るにはどうしたらいいのでしょうか?このような責任は、子ども本人や保護者にあるのでしょうか?

後編の記事では、SNSの仕組みそのものや食品広告、各国で始まっている規制、そして家庭でできることについて考えます。ぜひそちらもご覧ください。

 

<参考文献>
1.Liu Y, et al. J Med Internet Res. 2026 Aug 10;28:e95678.
2.Sina E, et al. Adv Nutr. 2022 Jun 1;13(3):913-937. 
3.Coates AE, et al. Pediatrics. 2019 Apr;143(4):e20182554.
4.Carter B, et al. JAMA Pediatr. 2016 Dec 1;170(12):1202-1208.

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