男性産婦人科医・重見大介が伝えたいこと #14
【産婦人科医直伝】婦人科で使う診察器具や内診を受ける際のコツ、解説します
女性のからだの不調や悩みを相談する婦人科。これまでに受診したことのある女性も多いと思いますが、まだ未経験だったり定期検診しか受けたことがないという方もいらっしゃるかと思います。
産婦人科医としては小さな不安や症状でも気軽に受診していただきたいのですが、「診察でどんな器具を使われるのだろう?」「痛くないかな?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、婦人科外来で使われる主な診察器具について、その目的や使い方、痛みの目安までわかりやすく解説します。また、内診をできるだけストレスなく受ける際のコツも紹介します。
婦人科受診への心理的ハードルが下がり、皆さんが安心して診察を受けられるよう一助になれば幸いです。
婦人科外来の役割
まず、婦人科はどういうところか一緒に確認してみましょう。
婦人科は、思春期から妊娠・出産、更年期、老年期まで、女性の生涯にわたる健康管理を担う診療科です。
月経前のイライラやおりものの悩み、妊娠に関する相談、顔のほてりや不眠といった更年期の不調など、幅広い女性特有の悩みに対応し、女性の健康を支える存在です。
診察では、まず問診(症状や月経周期、妊娠の可能性などの確認)を行い、必要に応じて内診や血液検査・超音波検査などを実施します。子宮や卵巣、乳房の病気や性感染症が見つかった場合は治療が行われ、月経痛や更年期障害に対しては薬の処方や生活上のセルフケアで症状の改善を目指します。
放っておいても症状が自然に改善しないことも多いですし、隠れた病気のサインということもあるので、気になる症状があるときは我慢せず、まずは婦人科で相談していただきたいなと思っています。
婦人科で扱う主な症状や疾患
婦人科では女性の生殖器やホルモンに関わる様々な症状・疾患を扱います。特に以下のような症状がある場合、受診を検討してほしいなと思います。
月経異常
月経不順(生理周期が極端に長い・短い)、過多月経(経血量が多い)、無月経、重い月経痛(月経困難症)など、月経にまつわる異常全般が該当します。
月経異常は子宮の病気(子宮筋腫、子宮内膜症など)が原因の場合もありますし、放っておくとどんどん悪化してしまうことも多いので、早めの受診と対処が勧められます。
性感染症やおりものの異常
クラミジアや淋菌、トリコモナスなど、主に性行為がきっかけになる細菌・真菌感染による疾患です。カンジダは皮膚や腸の中などの常在菌(普段から体内に生息している微生物)である真菌(カビの一種)なのですが、それが腟で増殖し、ときに症状を引き起こします。
おりものの量・色・においの変化、外陰部のかゆみや痛みといった症状が現れやすく、適切な検査・治療が必要なため、ぜひ恥ずかしがらず早めに受診してほしい疾患です。
不正出血
月経期間以外での出血や、閉経後の出血がある場合も婦人科の対象です。排卵出血や着床出血のように生理的な場合もありますが、子宮頸部ポリープや子宮筋腫、子宮頸がん・体がんなど病気が隠れている可能性もあります。
不正出血があったら、続くかどうかしばらく様子を見るのではなく早めに婦人科で原因を調べることが大切です。
更年期の症状
40代後半〜50代で卵巣機能が低下すると、ホルモンバランスの変化から様々な不調が起こります。肩こり、疲れやすさ、顔のほてり(ホットフラッシュ)、発汗、動悸、イライラや抑うつ、不眠などの症状が典型的です。
こうした更年期症状も婦人科で相談できます。ホルモン補充療法や漢方薬の処方などによって、つらい症状の軽減が期待できますので、ぜひ早めにご相談ください。
以上のほか、排尿時や性交時の痛み、下腹部のしこり・痛みなども婦人科で対応します。
「年齢的にまだ若いから受診するのは大げさかも」「生理中だから行かない方がいいのでは?」などと迷う必要はありません。不調があれば年齢に関係なく受診して大丈夫です。早めの受診が結果的に心身の負担を軽くするはずです。
診察に使う器具と特徴
婦人科の診察では、いくつか特徴的な器具を使用します。
どんなものかわからないと不安に感じるでしょうが、それぞれ診察や検査のために必要な目的があり、医師はできるだけ痛みが少ないよう工夫して使用しています。
ここでは婦人科で使われる主な器具について、その用途や診察手順での使われ方、患者さんへの影響(痛みや検査に要する時間など)を説明します。
クスコ式腟鏡(腟鏡)
通称「クスコ」と呼ばれる金属製の腟鏡です。鳥のくちばしのような形をしており、閉じた状態で腟内に挿入し、ゆっくり開くことで腟壁を押し広げて内部を観察します。金属製のものが多いですが、透明なプラスチック製のものもあります。
クスコ式腟鏡(腟鏡) ※左:丸の内の森レディースクリニック提供 右:Wikipediaより引用(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%86%A3%E9%8F%A1)
主に子宮頸部(子宮の入口)や腟内の様子を視診するために用いられます。腟鏡を入れるときは、患者さんへのストレスを減らすためあらかじめ器具を温めておき、温水または潤滑剤(ジェル)を塗布して使用します。
腟口の大きさや性経験の有無、年齢に応じて大小さまざまなサイズの腟鏡が用意されており、必要に応じてできるだけ小さいサイズを選択します。ただ、最小サイズでは見える範囲や検査できる範囲がかなり狭まるため、小さいサイズほど良いというわけでは必ずしもありません。
挿入時には多少の圧迫感がありますが、力を抜けば痛みは強くないことも多いです。痛みを最小限にするためのコツとしては、できるだけお尻や内腿に力を入れず、リラックスして力を抜いておくことです。
ただ、腟の狭さや性行為経験の有無によって痛みの感じ方は変わります。通常サイズの腟鏡では痛みが強い場合もありますので、性交経験が無い方やいつも痛みを感じやすい方は、診察前に医師へその旨を伝えましょう。
腟鏡で腟内や子宮頸部を観察した後、必要な検査(細胞の採取やおりもの検査など)を行い、終わったら腟鏡をゆっくり閉じて抜き取ります。診察・検査自体は数十秒〜数分以内で終わります。
綿棒・ブラシ(細胞診のための採取器具)
主に子宮頸がん検診で用いられる、細胞を採取するための綿棒やブラシです。
先端が細い綿棒状、または小さなブラシ状になった器具で、腟鏡で開いた状態の腟から子宮頸部に挿入し、子宮の入口付近の細胞をこすり取って検査します。


「サーベックスブラシ」子宮頸部の細胞を採取しやすい形状になっており、先端部分は柔らかい素材でできています。
目的は、子宮頸部の細胞にがんや異常な変化がないかを調べることです。いわゆる「子宮頸がん検査」のことで、必要に応じてHPVウイルス検査も同時に実施可能です。
細胞採取の際、チクッとした軽い痛みや違和感を感じることがありますが、通常は数秒で終了します。まれにごく少量の出血を伴うことがありますがほとんどの場合に心配はいりません。検査後に下着に薄く血が付くことがありますので、気になる場合はナプキンを持参すると安心でしょう。
*子宮体がん検査の器具やいつ受けるべきか等は私のニュースレター記事で解説しています。ぜひご参照ください。
子宮体がん検査を徹底解説! 〜検査器具や流れ、受けるべき人、要精密検査の意味など〜
経腟エコー(経腟超音波検査)
経腟エコーは、腟から細長い超音波プローブ(探触子)を挿入して、子宮や卵巣の状態を超音波画像で調べる検査です。
直径は親指ほどの太さで、先端が丸みを帯びた棒状の器具です。通常、使い捨てのカバーをかけた上で先端のプローブにたっぷりと潤滑用のジェルを塗ってから腟内に挿入するため、圧迫感はあるものの痛みはほとんど感じません。

※著作者:https://en.wikipedia.org/wiki/Vaginal_ultrasonography
経腟エコーでは超音波の反射を利用して、モニターに映し出された子宮や卵巣の様子を観察します。子宮筋腫や卵巣のう腫(嚢胞)、子宮内膜症など、体内にある子宮や卵巣の腫瘍・病変の有無を調べることができ、必要に応じて大きさの測定も可能です。検査自体は5〜10分程度で終わります。
なお、性交経験のない方の場合は、腟からではなく腹部の上から行ったり(下腹部にゼリーを塗り、体外から子宮・卵巣を観察する)、経直腸(肛門から挿入する)で行ったりします。このように患者さんの状態に合わせて検査方法を選択しますので、診察前に性交経験について医師に伝えていただけると助かります。
子宮鏡(ヒステロスコープ)
子宮鏡検査は、子宮の中を直接観察する内視鏡検査です。
主に子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫、不妊症の原因調査などに役立つもので、子宮内の異常を直接目で見て確認できる唯一の検査方法です。
超音波検査や子宮卵管造影検査で子宮内にポリープや筋腫などの疑いが見られた場合に、精密検査(二次検査)として行われることが多いです。

※著作者:
細いファイバースコープ(直径3〜5mm程度のカメラ)を腟から子宮の入口(子宮頸管)を通して子宮内部に挿入し、子宮内腔の形態や異常を目で確認します。
観察自体の所要時間は数分程度で、検査は外来でも可能です。スコープが非常に細いため、子宮の入口を広げずに挿入でき、観察だけであれば痛みもほとんどありません。
検査中にポリープや子宮内膜の組織を採取する場合は、直径5mm以上のやや太めのスコープを用いる必要があり、その際は子宮口を広げる処置を行うため若干の生理痛のような痛み(場合によっては強い痛み)を伴うことがあります。痛みが辛い場合には無理せず医師に伝えてください。
基本的には麻酔なしで実施可能な検査ですが、どうしても不安が強い場合は事前に相談するとよいでしょう。
コルポスコープ(腟拡大鏡)
コルポスコープという拡大鏡を用いて、子宮頸部(子宮の入口)や腟内を詳しく観察する検査をコルポスコピー検査と呼びます。(イメージ画像を国立がん研究センターのウェブサイトでご覧いただけます)
肉眼では見えにくい微細な病変も、コルポスコープを使うことで虫眼鏡でのぞくように子宮頸部などを観察できます。
基本的には子宮頸がん検診(細胞診)で異常が見つかった方や高リスク型HPV陽性と判定された方に対して行われる精密検査であり、異常の有無や広がりをより正確に判断するのが目的です。子宮頸部異形成が見つかった方のフォローアップにも使用されます。
検査では、まず腟鏡(クスコ)で腟を開き、子宮頸部に薄めた酢酸を塗布します。酢酸をかけると、異常な部分が白く変色し、病変の広がりが分かりやすくなります。その状態でコルポスコープを用いて子宮頸部を観察し、必要に応じて異常が疑われる部分の組織を米粒大に鉗子で採取(組織診といいます)します。組織を採る際、どうしても痛みと出血が生じます。麻酔は通常せず、検査は5〜10分ほどで終了します。
採取後は止血のために綿球などで子宮頸部を少し圧迫します。子宮頸部は出血しやすい場所のため、検査後に多少の出血が数日続くことがありますが多くの場合に自然止血しますので心配いりません。(ただ、稀ながら帰宅後に出血が増えてしまうこともあるため、医療機関の指示に従ってください)
診察を受ける際の工夫・ポイント
初めて婦人科を受診する際は緊張して当然ですし、何度目でも一向に慣れないと思っている女性も少なくないかと思います。
少しでも抵抗感や苦痛を減らすため、服装や持ち物、受診前の準備について工夫できることがあります。また、診察時に自分の情報を正確に伝えることや、不安を和らげるコツもぜひ知っておきましょう。

<服装>
当日はゆったりとしたスカートで行くのがおすすめです。内診の際に下着を脱ぎ、診察台で脚を開く必要がありますが、スカートであれば腰までまくり上げるだけでOKなので、下半身を全て露出せずに済みます。
タイトスカートより、着脱しやすい服装が楽かと思います。また、白系のボトムスは検査で汚れる可能性があるため避けるのが無難です。
<事前準備>
病院によっては事前予約が必要な場合もあります。受診前に医療機関のウェブサイトや電話で確認しておくと安心です。問診票に書く内容(症状、最終月経日、月経周期、妊娠・出産歴、性感染症の既往など)は事前にメモを用意していくとスムーズかと思います。
また、検査の前日は性交渉を控える方がベターです。性行為による精液や潤滑剤が腟内に残っていると、おりもの検査や細胞診の結果に影響することがあるためです。受診当日は基礎体温表やお薬手帳があれば持参し、早めに到着して問診票を記入しましょう。
<診察時に伝えておくと良いこと>
現在の症状や困りごとを具体的に伝えましょう。「いつからどんな症状があるか」「生理周期は安定しているか」「最後に生理が始まったのはいつか」「妊娠の可能性はあるか」など、問診で聞かれる典型的な質問に備えて答えを整理しておくと安心ですね。
また、性交経験の有無は必ず正直に伝えてください。恥ずかしさから「ない」または「ある」と答えてしまう方もいますが、経験の有無によって検査方法(経腟エコーを避ける等)が変わりますし、妊娠や性感染症の可能性を判断する重要な情報となります。医師はその情報を踏まえて最適な診察を行います。
他にも、内診に不安がある場合はその旨を遠慮なく伝えましょう。特に「婦人科の内診は初めてで緊張している」「痛みに弱いのでできるだけ配慮してほしい」など、事前に伝えておけば医師も慎重に進めてくれるはずです。(ここで配慮に欠ける医師であれば、今後の診察も辛くなってしまうと思うので医師を変える、または医療機関を変える方が良いかもしれません)
<不安を和らげるコツ>
内診台に上がるときは深呼吸をし、できるだけ全身の力を抜くよう意識しましょう。力が入っていると余計に痛みを感じやすくなるため、息を吐きながらリラックスすると内診の負担が軽減します。特に、お尻や内腿に力が入ったままだと診察がしにくくなり時間もかかって痛みも増しやすいので、ぜひ意識してみてくださいね。
多くの医療機関では内診室はカーテンで仕切られ、脚に掛けるタオルなども用意して患者さんの羞恥心に配慮しています。医師や看護師も「大丈夫ですよ」「痛みはないですか?」と声かけしながら進めてくれますので、不安なことはその都度伝えてください。(カーテンを開けておいてほしい場合も、その旨を伝えれば開けて診察してくれるはずです)
*内診について、「内診の具体的な手順や流れ」「内診時に産婦人科医がどのようなことを考えているか」「よくある内診の誤解あれこれ」などを私のニュースレター記事でも詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
産婦人科の「内診」について日本一詳しくお伝えします
今回は婦人科で使う診察器具や内診を受ける際のコツを紹介しました。
診察で使う器具についても正しく知っておくことで、不安が少し軽減できるのではないかと思います。どの器具も女性の体を守るために役立つものばかりで、医師もできるだけ痛みや負担を軽くするよう配慮しています。
大切なのは、不調を我慢しすぎず早めに婦人科で相談することです。「こんなことを相談していいのかな?」と思う内容でも、重要なサインだったり早期発見につながることがあります。健康管理のパートナーとして婦人科を上手に活用し、日々の生活を少しでも快適なものにしてくださいね。
















