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連載|産婦人科で働く人たち #1

【第1回】産婦人科の現場を支える、チームの全貌

前を向く5人の医師、看護師などの医療チームスタッフ

「産婦人科」と聞いて、あなたはどんな場面を思い浮かべますか?
赤ちゃんが産声をあげる瞬間。不妊治療に取り組む夫婦の涙。ドラマ『コウノドリ』やマンガ『透明なゆりかご』で描かれるような、命の重みを感じるシーンでしょうか。

こうした場面では、医師や助産師といったおなじみの職種だけでなく、驚くほどたくさんの専門職が連携して働いています。目に見える場所で、そして見えない場所で。産婦人科の医療は、たくさんの人たちのチームプレーで成り立っているのです。

今回からcrumiiでは、「産婦人科で働く人たち」という連載を始めることにしました。産婦人科の医療チームを構成するすべての職種にスポットライトを当て、仕事内容や、その仕事につくためのルートなどを解説していきます。

医師だけではない、産婦人科を動かすたくさんのプロフェッショナルの姿を、お届けします。第1回の今回は、産婦人科にはどんな仕事があるのか、まずはその全体像をお届けします。

日本テレビ系列で7月より、産婦人科を舞台にしたドラマ「ファーストクライ」もスタートします。
crumii編集長の宋先生、副編集長の重見先生も監修していますのでぜひお楽しみに。
https://www.ntv.co.jp/firstcry/

産婦人科を支える4つのプロ集団

連載で紹介していく職種を、ざっくりした役割別に4つのグループに分けてご紹介します。

1. 診療の最前線で、患者さんと共に歩む。医療のフロントランナー

手術衣で相談する医師たちの姿

医師は医師でも、診療科によってその専門性は多岐にわたります。
同じように、「産婦人科医」と言っても、お産のプロ(産科)、がん(腫瘍:しゅよう)のプロ、不妊治療のプロ(生殖医療)と、実は専門が大きく分かれています。そこに助産師や認定看護師が加わり、心身の両面から患者さんを支えるチームが作られています。いわゆる「医療従事者」と聞いて、私たちがイメージする人たちです。このグループに属する主な職種や、医師の専門領域には以下のようなものがあります。

産婦人科医

女性の生涯にわたる健康をサポートする医師。産婦人科医のなかでも、さらに以下のような専門領域に分かれ、それぞれのプロフェッショナルとして診療しています。

・周産期領域(お産のプロ)
周産期とよばれる妊娠・分娩・産後の管理を専門とし、正常分娩から帝王切開・ハイリスク妊娠まで対応。「お産」において母体と胎児の安全を守る専門家。日本周産期・新生児学会の「母体・胎児専門医」などの資格を持っていることもある。

婦人科腫瘍領域(がんのプロ)
子宮頸がんや卵巣がんなどの婦人科のがんに対し、手術や薬物療法(抗がん剤)を中心に治療にあたる。放射線治療は、放射線治療の専門医や診療放射線技師と連携して進める。 がんの診断から治療まで長く関わることが多い。実際には、病理医・放射線治療医・緩和ケアチーム・看護師・薬剤師などと協力して患者さんを支える。 日本婦人科腫瘍学会の「婦人科腫瘍専門医」という資格を保持していることが多い。

生殖医療領域(不妊治療のプロ) 
体外受精・顕微授精などの生殖医療(ART)を中心に、不妊の原因精査から治療計画の立案・実施までを統括する。胚培養士やナース、泌尿器科医とも連携しチーム医療も担う。日本生殖医学会の「生殖医療専門医」資格が該当。

女性ヘルスケア領域(女性のQOL向上のプロ) 
更年期障害・月経トラブル・骨粗しょう症など、女性のライフステージごとの健康課題に対応。ホルモン補充療法や生活指導を通じて、女性のQOL向上を目指す専門家。日本女性医学学会の「女性ヘルスケア専門医」という資格を保持していることもある。

麻酔科医(産科麻酔の担い手) 

無痛分娩の硬膜外麻酔や帝王切開の脊椎(せきつい)麻酔を担当。分娩中の母体の痛みと全身状態を管理する。緊急手術にも即応し、安全なお産を麻酔の技術で支える「痛みの番人」。大きな病院では、他の診療科の手術における麻酔も兼務していることが多い。

助産師(アドバンス助産師) 

正常分娩の自律的な介助に加え、産前教育・母乳育児支援・産後ケアまで幅広く担う。高度な実践能力を認められた助産のスペシャリスト。

看護師 

外来での診察補助、病棟での入院患者のケア、点滴・採血などの処置、患者・家族への説明や心理的支援まで、診療全体を支え、医療チームの要となることも多い職種。外来看護師と病棟看護師では役割が異なる。

生殖看護認定看護師 

不妊治療中の患者・カップルに対し、治療の意思決定支援や心理的ケア、自己注射指導などを行う。治療の長期化に伴う不安やストレスにも寄り添う専門職。

新生児科医(小児科医) 

出生直後の新生児を診察し、早産児・低出生体重児・先天異常などに対応する。NICU(新生児集中治療室)での管理を担い、赤ちゃんの命を守る、出生後最初の主治医となる小児科医。

2. 科学の力で病気を読み解く、技術・診断のスペシャリスト

ラボで検査をする臨床検査技師

続いて、患者さんの目にふれる機会が比較的少ない裏方の技術職をご紹介します。イメージがわきにくいかもしれませんが、このプロフェッショナルたちがいなければ現代の産婦人科医療は成り立ちません。血液検査や細胞診といった病院で行われる検査の結果は、次回の通院時に報告書で出てきますが、これは、血液や細胞を分析し、診断して結果を出してくれる人たちがいるからです。

顕微鏡で異常のある細胞を見極める検査技師、受精卵を育てる胚培養士、精密な医療機器を扱う臨床工学技士など、患者さんのいない検査室やラボといった見えない場所で、細胞を診る、機械を操る、命の卵を育てる、といった技術を極める専門家がいます。このグループの主な職種をご紹介します。

胚培養士(エンブリオロジスト) 

体外受精における卵子・精子の処理、受精操作、胚の培養・凍結をするラボの専門技術者。胚の品質評価を通じて妊娠成功率を左右する重要な役割を担う。

臨床検査技師(MT) 

血液・尿などの検体検査や心電図・脳波などの生体検査を実施し、診断に必要なデータを医師に提供する。正確な検査結果で治療方針の決定を支える。

超音波検査士(MTの専門資格) 

超音波診断装置を操作し、胎児の発育確認や腹部・乳腺などの病変を検出する。リアルタイムの画像で医師の診断を支援する「体の中を見る目」。

臨床工学技士(ME/CE) 

人工呼吸器・透析装置・手術用機器など生命維持に関わる医療機器の操作・保守点検を担う。機器トラブルを未然に防ぎ、安全な医療環境を守る技術職。

病理医 

手術や検査で採取された組織・細胞を顕微鏡で観察し、がんなどの確定診断を下す。臨床医が治療方針を決めるための「最終判断」を担う診断の専門医。

放射線技師 

X線(レントゲン)・CT・MRI・マンモグラフィーなどの画像撮影や、放射線治療の照射業務も担当する。正確な画像を提供し、診断と治療の両面を支援する。

3. 食事、薬、メンタル。多角的に「生きる」を支える、心と体のトータルケア

分包の薬を作る薬剤師

入院中の食事を手がける管理栄養士やシェフ、薬の安全を守る薬剤師、産後のからだの回復をサポートする理学療法士、そして心のケアを担う公認心理師や遺伝カウンセラーまで、入院生活や患者さんの生活管理を手がけるスペシャリストです。

薬剤師 

妊娠中の薬の安全性評価、がん化学療法の調製・投与管理、副作用モニタリングなどを担う。患者さんへの服薬指導を通じ、薬物治療の安全と効果を最大化する。

管理栄養士・栄養士 

妊娠中の栄養指導や妊娠糖尿病の食事管理、入院患者の栄養計画の策定などを行う。母体と胎児の健康を「食」から支え、術後の回復にも貢献する重要なポジション。

調理師・シェフ 

管理栄養士が設計した献立をもとに、入院食やお祝い膳を調理する。治療食の制約の中でもおいしさを追求し、入院生活の楽しみと栄養を両立させる。

パティシエ 

産後のお祝い菓子や入院中のおやつ作りを行う。見た目の華やかさと味で患者さんに喜びを届けるのが仕事。食事制限に配慮したスイーツの開発なども行う。

配膳スタッフ(サービススタッフ) 

患者のもとへ食事を運び、食事量やアレルギー対応を確認する。温かい声かけ、こまやかな気配りで、食事の時間を快適に整えるホスピタリティ担当。

公認心理師・臨床心理士

産婦人科の診療はポジティブなことばかりではない。不妊治療中の心理的ストレス、流産・死産後のグリーフケア、周産期うつなどに対して適切にカウンセリングをし、患者さんと家族の心のケアを担うメンタルケアの専門職。

理学療法士(PT) 

産後の骨盤底筋リハビリ、腰痛改善、術後の早期離床支援などを行う。身体機能の回復を運動療法や徒手療法を通じてサポートするリハビリの専門家。

認定遺伝カウンセラー

出生前診断(NIPT等)の検査前後の説明や、遺伝性疾患に関する情報提供・意思決定支援を担当する。陽性が出た場合のフォローなど、医学的知識と心理的支援を兼ね備えた相談役として活躍。

4. 病院という組織を動かす。バックオフィス・運営サポート

笑顔で受付業務をする女性スタッフ

病院にも、いわゆるバックオフィス的な仕事をしている人たちが存在します。

受付で最初に出迎えてくれる医療事務、入退院の手続きや生活相談に応じるソーシャルワーカー、大きな病院で地域の中小医療機関とのパイプ役を担う連携スタッフ。理系の専門分野と思われがちな医療の世界で、文系出身者も多く、活躍できるフィールドです。

保険診療を取り扱う医療機関の収入は「診療報酬」という厳格なルールによって支えられています。この厳格なルールに沿った経営を支え、接遇や部署を超えたコミュニケーションが必要な、病院の顔となる重要なポジションです。

医療事務 

受付対応、診療費の会計、レセプト(診療報酬請求)の作成・点検を担う。患者が最初に接するスタッフとして、スムーズな受診体験を支える事務方のプロ。

医療クラーク(医師事務作業補助者) 

診断書・紹介状の作成代行、電子カルテの入力補助、各種書類の準備などを行い、医師が診療に集中できる環境をつくる。医師の右腕的存在で、診察をする医師の隣でキーボードを叩いてカルテ入力している人がいたら、その人が医療クラーク。

医療ソーシャルワーカー(MSW) 

経済的不安、退院後の生活、社会福祉制度の利用などについて相談に応じ、行政や福祉機関との橋渡しをする。患者の生活全体を支援する福祉の専門職。

地域医療連携室スタッフ 

クリニックから高次病院への紹介・逆紹介の調整、転院先の確保、地域の医療機関との情報共有を担う。地域の病院間の連携を円滑にし、患者が切れ目のない医療を受けられるよう調整するのが役目。

コンシェルジュ

比較的大きな病院の入り口付近にあるブースで案内を担当する役割。来院者への院内案内、予約や各種問い合わせに対応する。ホテルのような接遇で患者の不安を和らげつつ、快適な受診体験を提供するおもてなし担当ともいえる。

経営企画・総務・人事

病院の経営戦略立案、収支管理、人材採用・労務管理、施設管理などを統括するバックオフィスの代表的な職種。医療の質と組織の持続可能性を裏側から支える経営の屋台骨となる。

産後ケアスタッフ(保育士など)

入院中の上の子の預かり保育や、産後ケア施設での育児サポートを行う。沐浴(もくよく)指導や授乳支援など、母親が安心して休める環境を整える育児の伴走者。

清掃・リネンスタッフ

病室・手術室・共用部の清掃、シーツ・タオル類の交換・洗濯管理を行う。院内感染の予防と清潔で快適な療養環境の維持を支える縁の下の力持ち。

広報・WEB担当

病院のホームページ運営、SNS発信、取材対応、パンフレット制作などを担う。正確な医療情報を外部に届け、病院のブランドと信頼を構築する情報発信の司令塔。

ここに挙げた4つのグループだけでも、30以上の職種・専門領域があることがわかります。産婦人科医療は、本当に多くの専門家の連携で成り立っているのです。

産婦人科医療を支える職種.png
本文を元にAIで生成

この連載でお伝えしたいこと

各職種の紹介回では、以下のような項目を深掘りしていきます。

その職種はどんな仕事?
 その職種のお仕事がどんなものかをお届けします。
将来のキャリアパス
 大学病院、クリニック、開業、研究。将来どんな進路があるのかを具体的に紹介します。
その職業になるには?
 必要な学部・学科、国家資格など、進路選びに直結する情報をまとめます。
インタビュー
 実際にその職種で働いている方々のインタビューをお届けします。

▶ 次回予告

第2回:産婦人科医(婦人科)〜女性の日常とパフォーマンスを支える専門家〜
誰もが知っている「お医者さん」の、あまり知られていないリアルな日常と喜び。医学部から専門医に至るまでの道のりを、わかりやすくお伝えします。

編集部より:「医療に関わる仕事に興味があるけれど、自分に何が向いているかわからない」。そんなあなたに、この連載が「こんな仕事もあったんだ!」という発見と出会いを届けることができたらうれしいです。次回もお楽しみに。

高橋孝幸

この記事の監修医師

高橋孝幸先生

産婦人科

医師・医学博士・日本産科婦人科学会専門医・指導医大阪市立大学卒業後、慶應義塾大学大学院にて医学博士号を取得。患者さんに寄り沿った医療の提供に努めており、子宮頸がんやHPVワクチンに関する情報提供についても一般の方に向けて正確で優しい形の啓発に努めている。

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