反抗期 思春期

crumii編集長・宋美玄のニュースピックアップ #13

ミレーナを抜いたら娘の反抗期がマシになった話

今回のニュースピックアップは、時事ニュースではなく、私の個人的なニュース「9年以上入れていたミレーナを抜去してみたら大変なことになった」を取り上げたいと思います。箸休めと思って読んでいただけると幸いです。

9年寄り添ってくれたミレーナとの別れ

ずっと憧れていたミレーナを初めて入れたのは、小4の息子を産んで2ヶ月の時。経腟分娩から間もない時期だったからかほとんど痛みはありませんでした。そこから半年くらいしぶとく少量出血が続いたものの、落ち着いた後はパラダイス。たまに「生理かな?」という出血があるものの、いわゆるおりものシートで足りるくらい。3~4年するとおそらく排卵も止まってきたのか、浮腫んだり便秘がちになったりするサイクルも無くなり、本当に快適な日々を送っていました。


5年経って入れ替えし、2回目の入れ替えも近づいてきた頃、効き目が早めに切れてきたのか、ダラダラ出血が続くように。(注:それ自体はよくあることで、入れ替えを前倒しにするなどします)そこで、ふと頭に浮かんだのは、「私ももう49歳。このまま閉経までミレーナを続けてもいいけれど、それまでに一度自然にしたら周閉経期がどんなものか経験してもいいかも」ということでした。まあ、患者さんには積極的におすすめしない、生理が戻ってくる日々。そういえば、「ものは経験」と思って、無痛分娩もやらなかった。ついつい自分の人生をネタ集めに使ってしまう性格なのです。

抜去後2週間で久しぶりのアレ

ミレーナを抜いたらほとんど出血はなくなり、「もしや閉経していたのでは・・まさかね」と思った頃、久しぶりの感覚が戻ってきました。なんとなくの腹痛と、ほのかに酸っぱい感じの匂い。

「これはもしや排卵・・!?」

同僚ドクターに診てもらったところ、バッチリ排卵していた所見。おお、49歳でも排卵戻ってきたのね、と思ったけれど、子宮内膜は薄くて妊娠はさすがにできなさそうな感じ。もちろんしても困るけれど。
 

そして、その後に家族を巻き込む地獄の2週間がやってきたのでした。とにかく、些細なことでキレやすくなるのを感じる。PMSをテーマにした瀬尾まいこさんの「夜明けのすべて」という小説があって、上白石萌音さん主演で映画化もされたのでぜひチェックしていただきたいのですが、小説の中で描かれていたのと脳みその中が一緒なんです。途中からわけもわからずキレている自分が止まらなくなる感じ。まあ2週間のうち何度もあったわけではないのですが、なかなかハードです。全部をホルモンのせいにするのは違うと思うんだけど、でもふだんならそんなことにならないので、自分じゃない誰かに操られている感じもする。
 

PMSでキレて辛い、というと、いやいやキレられる周りの身にもなろうよ、と100人中100人の方が思いますよね。もちろんそうなのですが、今回我が家には瓢箪から駒のような出来事がありました。

暗いトンネルから光が見えた

さて、ここから先は家族のプライバシーもあり、事実を改変してお伝えすることを先に言っておきます。私は子育てを始めて13年以上、度々子育てが大変であることを各種SNSで発信してきたのをご存知の方もいらっしゃると思います。子供たちのプライバシーもあるので具体的なことは書けないのですが、2人とも健康に成長しているものの、色々と日々すんなりいかないことが多く、大変と感じる日が多いです。子供は一人として同じ子はおらず、子育てに「正解」はないのですが、色々とお節介な人々がいて、「ママが忙しすぎるから」「ママが構いすぎるから」「もっと厳しくしたら?」「もっと優しくしたら?」と求めてもない原因追究やアドバイスをしてこられることが度々あります。「あなたが思いつくようなことを私が試していないとでも?」という感じで辟易してしまうので、ここでは詳細なことや事実そのものは避けて書きます。
 

さて、うちの中2娘はイヤイヤ期が終わらないなあと思っていたら反抗期に入り、色々とアンタッチャブルかつアンコントローラブルに。不機嫌なことも多いので、ついつい腫れ物に触るように接しがちになってしまいます。

しかし、ある晩、「何もかもママのせい」と言われたことで、プッチーーーン。

いつもならば、「この子がこういう考え/行動になった原因はなんだろう」「この子にとって何がいいんだろうか」「大切なことわかってもらうためにはどのようなアプローチが必要だろうか」などと逡巡しながら接していて、もちろん腹が立つことやちょっとキレたりすることもあるのですが、極力理性を保って接するようにしていました。

それが、ただただ、感情のままに、プッチーーン。
 

ひえー、やってしまった。一番難しい相手の前で・・

でももう、後の祭りです。
 

しかし、なんとまあ、ほとほと苦労して、難航していた娘の反抗期ですが、この一件で、えらく素直になったのです。もちろん好ましくない行動もあるし、フキハラ(不機嫌ハラスメント)もゼロではない。でも、なんだか一皮剥けたかんじ。もしかしたら、気を使いすぎていて、それが余計に責任転嫁や他責思考につながっていたのかもしれませんね。

もちろんこれは何度も効くものではないし、感情のままにキレるのが良いわけありません。なので、次の周期からは早急に対策を考えないといけないのですけど、ミレーナを抜かなかったらずっと暗いトンネルにいたかもしれないと思うと、月経周期による「波」も人生には必要なのかもなと思いました。

そしてまた、久しぶりのもう一つのアレ

そうこうするうちに排卵から2週間が経ち、今度はあの鬱陶しい月経がやってきました。ミレーナを入れている間中、出血があってもいわゆるおりものシートで足りるほどだったので、10年以上ぶりに生理用ナプキンを引っ張り出してきました。いつまで、どのくらい出血するかわからないのもストレスだし、痛み止めを飲んだら気にならなくなる程度とはいえ、お腹や腰回りが重だるく消化管の調子もなんだかおかしいのも不快。改めてシンクロフィット(外陰部に挟んで使う生理用品)の便利さを噛み締めつつ、数日間を過ごしました。次回以降は吸水ショーツや月経カップも試してみようと思います。(シンクロフィットは超絶おすすめの生理用品です。知らない人はすぐにチェックしてください。利益相反はありません)
 

生理用品 月経カップ 布ナプキン
photo: PIXTA

ありがとうミレーナ、産婦人科医になって良かった

10年近くも私を生理の不愉快さから遠ざけ、ここ数年はPMSからも守ってくれていたことを実感し、改めてミレーナのありがたみをしみじみと感じました。その間生理用ナプキンを使わずにすみ、SDGsにも貢献してくれました。もしかしたら数ヶ月後には耐えきれず、ミレーナ生活に戻るかもしれません。
 

妊娠を積極的に望んでいない時期でも、放っておくと女性の体は生殖のために排卵と生理をくりかえすようにできています。それが多くの女性を知らず知らずのうちに不調に陥れたり、生産性を下げたり、果ては人間関係に影響するような感情の起伏を招いたりします。その波を乗りこなすのも選択肢の一つではありますが、軽減するためのさまざまな選択肢(各種ホルモン治療などについての記事が当メディアには色々ありますのでお読みください)をお知らせし、そのアクションのためのお手伝いができる産婦人科医という仕事は、とてもいいものだなあと思います。
 

今回は私の個人的なニュースをお読みいただきありがとうございます。また時々、つれづれなることも書かせていただこうと思います。

 

宋美玄

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

 

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宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の執筆医師

院長

宋美玄先生

産婦人科

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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