
crumii編集長・宋美玄のニュースピックアップ #05
赤沢大臣、「女性は産む機械かと感じる。地方は非常に生きづらい」という声に「申し訳ない」。次のアクションに期待!
多くの女性がSNSで「ようやく自民党にもこういう人が」と肯定的にシェア
今回取り上げるのはこちらのニュースについてです。
このニュースは、赤沢亮正経済再生担当大臣が、地方創生の実現に向けた「若者・女性にも選ばれる地方」についての意見交換会に参加し、「人口減少が女性の流出率と結び付けられ女性の責任であるかのような雰囲気を感じる」とか、「地元に戻ってという働きかけで、子どもを産み育てやすくなったという説明ばかりで、自分たちは産む機械かと感じる。地方は非常に生きづらい場所」などという女性参加者の意見を聞いて申し訳ない気持ちになったというものです。
赤沢大臣は、女性の役割を決めつけてしまうような状況を払しょくする意識改革が重要だ等と述べるとともに、改革実現に取り組む自治体を後押していく考えを示したとの内容で、多くの女性がSNSで「ようやく自民党にもこういう人が」と肯定的にシェアされていました。
「女性は産む機械、産む装置」等々、少子化に関して数多くの政治家が失言と言える発言を繰り返してきた
思えば、これまで少子化に関しては数多くの政治家が失言と言える発言をしてきました。
2003年6月、当時の森喜朗元首相は、鹿児島市で開かれた全国私立幼稚園連合会の討論会において、「子どもを一人もつくらない女性が、好き勝手とは言っちゃなんだけど、自由を謳歌して楽しんで、年を取って、税金で面倒を見なさいというのは、本当はおかしいですよ」と述べました。
続いて2007年1月には、当時の柳沢伯夫厚生労働大臣が、自民党の会合において、「女性は産む機械、産む装置」と発言しました。これは、少子化対策の文脈での発言でしたが、女性を単なる出産要員としてみなすものとして、激しく批判されました。
最近では、2024年1月15日には、麻生太郎自民党副総裁が福岡県内での講演において、「少子化の一番大きな理由は出産する時の女性の年齢が高齢化しているからです」と発言しました。晩婚化晩産化は少子化の原因というよりはむしろ、社会構造の結果であるのに、少子化の責任を女性の出産年齢に帰す内容であったため、SNSなどを中心に「女性に責任を押しつけている」とする批判が相次ぎました。
また、議席はないものの、日本保守党代表である百田尚樹氏は、2024年11月8日に自身のYouTube番組で少子化をテーマにした議論を展開する中で、「女性は18歳から大学に行かさない」「25歳を超えて独身の場合は生涯結婚できない法律にする」「30歳を超えたら子宮を摘出する」といった過激な提案を行いました。百田氏はのちにこれらを「ディストピア的なSFの例え」と釈明しましたが、発言の表現が過度に猟奇的であるとの批判が殺到し、翌日には「不快に思われた方に謝罪します」と謝罪を表明しました。
少子化対策は我が国において喫緊の課題であるという認識は必要ですが、これまでは「女性が出産という本来の責務を忘れ、自分のやりたいことを追求した結果、産み時を逃している」「そのような女性を税金で面倒を見るのはおかしい」「国の未来のためには女性の自由を制限することもやむを得ない」という政治家の考えが透けて見えて来たため、その都度大きな反発が起こって来ました。今回の赤沢大臣の発言は、地方創生に関してのものですが、顕在化している女性の行動だけでなく、その背景にあるジェンダーの問題にも目を向けたものとなっていて、ようやく本質的な議論になるのでは、との期待を持たせてくれたものと言えます。
生まれ育った地元には愛着があるけど、多様な生き方がしやすいのは首都圏の方だと感じる

地方から大都市圏に女性が「流出」し、そのまま地元に戻らない人が多いことが地方の人口減少の原因として言われています。いろんな地方の産婦人科ドクターの話を聞いていると、大都市圏に比べて地方では分娩数の減り方が激しいです。(実際に人口動態統計でもそうなっています)
地方では進学先や若い女性が選べる仕事が少なく、大都市圏に出る人が多いと聞きます。私自身は15年前に大阪から首都圏に転職してきましたが、関西では聞いたことがなかったいろんな職種の人がいて、当時、結婚していなくてもごちゃごちゃ言われることもあまりないし、「誰にでも居場所のある街だなあ」と感じました。生まれ育った地元(兵庫県神戸市です)には愛着があるし、時々帰省しますが、多様な生き方がしやすいのは首都圏の方だと感じます。家賃や物価は高いし、教育熱も過度に思えて子育てしにくい面もありますが、女性という性別に勝手に期待される役割は地方より少ないのは事実に感じます。これは私という女性医師から見た世界なので大いに偏っている可能性はあります。みなさんの意見も聞いてみたいです。
いずれにしても、若い女性が地方から去っていき、地方で生まれる子どもの数が減っているのは事実です。最近の女性は黙って子どもを産まずけしからん、と言っていても人口減は止まらないので、赤沢大臣の次のアクションに期待したいです。
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