
婦人科の病気 体験シリーズ:生理痛#03
「生理痛がつらい!」小中高校生の娘が苦しんでいたら、親としてどうケアしたらいい?【体験談】
若い頃から月経痛が重かったという母・ユウ子さん。娘たちも自分と同じように月経困難症になったとき、母としてとった行動とは……。(この記事は全3回の第3回です。第1回、第2回を読む)
月経痛を我慢するのが当然だった時代
現在、20代と10代の2人の娘の母であるユウ子さん(仮名)。ご自身が子どもの頃は「月経痛がつらいのは当たり前」「痛みを乗り越えてこそ」というのが普通の感覚だったそう。
「PMS(月経前症候群)も月経痛も重いほうでした。でも、母には相談しづらいし、学校で鎮痛剤やピルについて習うこともありませんし、我慢していました」(ユウ子さん)
市販の鎮痛剤さえも「あまり身体によくないから」「頻繁に飲むと慣れて効かなくなるから」と、できるだけ使わないほうがいいといわれた時代でした。昭和までの時代は、我慢することが一種の美徳だったのです。
しかも、ピルは避妊だけではなく、月経困難症や過多月経、月経周期を整えたり調整したりするためにも使われていたのに「『性的に奔放な女性だけが避妊目的で使うもの』と一部で誤解されていました。まったく意味がわかりませんよね」とユウ子さん。
そんなユウ子さんに転機が訪れたのは、医療関係の仕事に就いた20代のころ。医療職の同僚や先輩の多くが低用量ピルを使っていたので、自分も使うことにしました。
「まだ一般の人は余り使っていませんでしたが、周囲の仕事仲間にとって低用量ピルを使うのは当然のこと。月経の痛みも不快感もないし、周期が乱れることもないし、こんなに快適だなんて、あの我慢はなんだったんだろうと思いました」(ユウ子さん)
その後、結婚してからは、妊娠を望む時期のみピルの服用を休止したところ、すぐに妊娠できたそうです。「ホルモンバランスや月経周期が整っていたり、子宮内膜症を予防できていたからかなと思いました」とユウ子さん。こうして2人の娘ーー長女のマキちゃん、次女のナミちゃん(共に仮名)が誕生しましたが、「娘たちも初潮を迎えると、月経痛がつらいと言うようになりました」とのこと。
低用量ピルの服用が効果的だった長女
長女のマキちゃんが初潮を迎えたのは、中学2年生の頃。月経開始直後にはよくあることですが、周期があまりにも不規則で、いつ月経が来るのかわからず、困っていたといいます。
「月経を迎える頃って思春期だから、精神的にも不安定になりがちですよね。普段はとても穏やかな子なのに、月経前はPMSでイライラしたり、わけもなく悲しくなって泣いたり、落ち込んだりしていて心配しました。月経が始まると、今度は腹痛で寝込んでしまうことも」(ユウ子さん)
マキちゃんが高校生になった頃、ユウ子さんが「月経のたびにつらそうだから心配だよ。お母さんみたいに低用量ピルを飲むのはどうかな?」と聞いてみたところ、「おかあさんがそう言うなら飲んでみる」と即答だったそうです。
最初はなんとなく「こんなことで産婦人科に行っていいのかな」と思い、小児科でピルを出してもらったというユウ子さん。「月経のつらさは一般的に軽んじられていて、だからこそ私もそう思ってしまっていたんだと思います」。
低容量ピルを飲んだところ、マキちゃんはPMSも月経痛も軽くなり、見違えるほど元気になったそうです。何より「いつ生理になるかわからなくて、ドキドキしなくて済むから嬉しい!」と喜んでくれ、母として心底ホッとしたユウ子さん。

低容量ピルでも、特に飲み始めは、たまに不正出血や吐き気、頭痛、むくみ、乳房の張りなどの副作用が出ることもあるけれど、マキちゃんは特に副作用もなし。「こんなことなら早く飲ませてあげたらよかったと思いました」とユウ子さんは話します。
マキちゃんは、大人になった今も低用量ピルを飲んでいるそう。問題はときどき飲み忘れてしまうことだけ、とのこと。
ピルとミレーナの両方を体験した次女
一方、小5で初潮を迎えた次女のナミちゃん。年齢的に早めだったこともあり、本人が月経にとまどってしまい、月経痛がつらいと泣いてしまうことがあったといいます。
「長女のとき以上に、次女は泣いてつらいと痛がるので心配でした。それで信頼できる産婦人科を本人と一緒に受診し、低用量ピルを使うことにしたんです」(ユウ子さん)
超低用量ピルやミニピル(プロゲスチンのみのピル)を利用しなかったのは、まだ血栓のリスクが低いこと、何より姉のマキちゃんが低用量ピルが効果的だったためだといいます。
これで安心……と思いきや、ナミちゃんの場合、当初はあまりピルの効き目がなかったそう。思春期の気持ちの問題が大きく、またマキちゃんと違って幼なかったこともあり、より痛みを強く感じたのかもしれません。
「痛みの感じ方には個人差があるけれど、やっぱり気持ちの問題が大きいのかなと思って、様子をみることにしました。いずれにしても、ピル自体に病気の予防効果などのメリットもあるので続けながら、です」(ユウ子さん)
その後、ナミちゃんが成長して気持ちが落ち着くにつれて、PMSも月経痛も少しは軽くなってきたといいます。「親として心底ホッとしました」とユウ子さんは言います。
一方、同じ頃、ユウ子さんは低用量ピルの服用をやめ、月経困難症に対して保険適用になったミレーナを入れることにしました。ミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム:IUS)というのは、子宮内に設置することで、5年間にわたって子宮内膜が厚くなるのを防ぎ、月経時の出血と痛みを軽減してくれるデバイスです。
「同じ医療職の女性たちからすすめられて入れました。そうしたら、ほぼ出血もなく、月経痛もなくて、本当に快適すぎてびっくり! ピルのように飲み忘れるということもないので、すごくラクなんです」(ユウ子さん)
ミレーナもピルと同様、月経困難症や過多月経に効果があり、さらに子宮内膜症や子宮筋腫などの病気を防いでくれます。ピルと違うのは、PMSへの効果はあまりないところ。
それからユウ子さんは、高校生になったナミちゃんに「毎日ピルを飲むより、ずっとラクだよ」とミレーナをすすめたところ、「やってみる」とのこと。ナミちゃんも、産婦人科を受診してミレーナを入れてもらいました。
「結論からいえば、今は月経時の出血もなくてすごくラクみたいですが、ミレーナ挿入時とその直後はかなり痛かったみたいです。5年後にミレーナの交換時期がきたら、低用量ピルに戻すと言っています」(ユウ子さん)
現代の若い女性たちは、昔に比べて初潮が早く、しかも妊娠回数が少ないため、月経回数がとても多く、身体に負担がかかります。だからこそ、その負担をピルやミレーナで軽減することができるのは、本当に素晴らしいことです。
「そもそも、女の子だけが毎月つらい月経のせいで、勉強や運動、試験やイベントの時にパフォーマンスが落ちるというのはよくありません。そんなふうにならないためにも、ピルやミレーナは有用だと思います」(ユウ子さん)
生理痛の素朴な疑問にcrumii編集長・産婦人科医の宋美玄が答えます
Question 1
子どもの月経痛に悩む親は多いでしょうか(受診する人は多いかどうか)
Answer 1
子どもを診察していない医療機関もありますが、対応しているところにはかなりの相談・受診があります。
Question 2
ピルを処方してもらうには内診が必要でしょうか?
Answer 2
基本的には不要ですが、念の為、受診前に医療機関に確認してください。
Question 3
子どもがピルを飲むのは何歳からOKでしょうか?
Answer 3
初経が来たら可能ですが、ドクターの方針により、もう少し待ってからということもあるのでこちらも確認が必要です。
Question 4
子どもにおすすめのピルはなんでしょうか?
Answer 4
低用量ピルか黄体ホルモン剤が多いです。最近では黄体ホルモン剤が多いように思いますが合うものが見つかればどちらでも大丈夫です。
Question 5
飲み忘れないためのコツはあるでしょうか?
Answer 5
スマホのアラートや服薬管理アプリなどを活用してみては。
Question 6
子どもがミレーナを入れることはよくありますか?
Answer 6
多くはありませんが、性交経験のない人やこどもでも希望されることはあります。できるだけ小さな器具を使う、局所麻酔薬や鎮痛剤を使うなどすると少しでも痛みを軽減できます。
大西まお
編集者、ライター。出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な編集担当書は、宋美玄著『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』、森戸やすみ著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。