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宋美玄のニュースピックアップ #22

「性的同意」ついに教科書へ。反発する人に伝えたい大切なこと

 

授業を真面目に受ける女子中学生

2026年度から、文部科学省の「生命(いのち)の安全教育」に性的同意について盛り込まれることになりました。小学校低・中学年では「同意」の基本を学び、高学年では人との距離感や境界線を考え、中学校以降で性的同意を教わるというものです。2023年には刑法改正され、強制性交等罪が不同意性交等罪になり、同意のないセックスは犯罪になったことから、学校教育の場でも「同意とは何か」をきちんと教える仕組みになったのだと思われます。

性的同意の話になると、SNS上では冤罪やハニートラップを恐れた否定的な反応も出てきます。しかし今回盛り込まれた内容は、相手が嫌だと言えること、対等な関係であること、一度の同意を全部の同意にしないこと、そして相手が明確に望んでいることが大事だというもので、相手を自分と同じように「意思を持つ人間」として接しましょう、という話です。
それを子供のうちから学校でちゃんと教わることには意義があると思います。

笑い合う高校生の男女4人

「性的同意」4つの重要ポイント


性的同意について、大事なポイントが四つあります。

① 相手が「NO」と言える状況であること

まず、相手がきちんとNOと言える状況であることです。
黙っていた、抵抗しなかった、流れに任せていた。そういう反応を勝手に「YES」と解釈する人がいますが、NOという隙を与えられなかった、お酒を飲まされていた、といった理由で拒否できないという状況では適切とは言えません。

② 二人の関係が対等であること

次に、二人の関係が対等であることです。
相手が上司や先輩、教師、取引先、または経済力で優位にある人なら、表面上は応じていても、実際には断れなかっただけということが起こります。「相手はいいって言っていた」と言う前に、その人が本当に嫌だと言える立場だったのかを考えたほうがいいでしょう。パワーバランスから断れない状況で得た同意は、同意とは言えないことが知られてほしいです。

③ 一つの同意は、すべての同意ではない

また、一つのことへの同意は、その先のすべての行為への同意ではありません。
手をつないだ、キスした、部屋に入った、付き合っている、以前したことがある。どれも、その日のその時の性行為への同意を意味しません。途中で気が変わることもあるし、やっぱり嫌だと思うこともあります。その都度同意は明確であるべきです。

④ 同意は明確で積極的なものであること

そして、同意は明確で積極的なものであるべきだということです。
嫌ではなさそうだった、拒絶はされなかった、流されるままではあった。そういう曖昧な反応を「NOとは言っていないからYESだろう」で済ませてはいけないのです。


YES、NOのフラグをもつ女性

反発する人たちが想定する場面は、
本当に健全なのか

性的同意の話が出るたびに、「後で撤回されるかもしれない」「ハニートラップ」「いちいち契約書でも作ってハンコを押すのか」といった反発があります。もちろん、冤罪はあってはならないものですし、ハニートラップもゼロではないでしょう。何をもって法的に同意とみなすかは、今後も司法の場で丁寧に扱われていくべきです。

ですが、セックスとはそもそも、そんなにも同意しているのかどうか信用できない相手とするものなのでしょうか。  また、「NO means YES の女性もいる」という言い方も見かけます。昔の言葉で言うと「いやよ、いやよも好きのうち」ですね。もちろんそういう人もいますが、それは特定の場面でのことであって、誰に対してもいつでもOKという意味ではもちろんありません。

十分に信頼関係のある間柄で特定の場面として「いや」という言葉を発することが「OK」という意味として機能するだけのことです。初対面や関係の浅い相手の「嫌だ」を「本当は違うかも」と解釈するのは、流石に無理があると思うのですが…

こういう反論をする人々は、いったいどんな関係性でのセックスを想定しているのでしょうか。長く付き合っているステディなパートナーであれば、そこまでの心配は通常いらないでしょうから、出会って間もない相手とのワンナイトを前提に議論しているということなのでしょうか。「関係性を築いていない相手と、面倒なことをすっ飛ばして、セックスにありつきたい」と。


居酒屋で談笑する男女

「同意が曖昧なまま進めた側」がリスクを負う時代に

セックスという行為は、原則的に信頼関係のある二人がするものだと私は思っています。そうでない関係を全面的に否定するつもりはありませんが、少なくとも今の時代、曖昧なまま進めば相応のリスクがあると考えるべきでしょう。これまでは、「部屋についていったのだから」「二人きりになったのだから」と、不本意なまま性行為に至った側が責められがちでした。でもこれからは、同意が曖昧なまま性行為に持ち込んだ側が実質リスクを負う時代になっていくのだと思います。


逆に、ステディなパートナーとのセックスについては、法改正によりそこまで大きく変わるわけではないはずです。信頼関係があり、ふだんから意思疎通があり、互いの性的嗜好もある程度わかっている二人なら、さまざまなことは「阿吽の呼吸」のように同意していることでしょう。

見つめ合うカップル

信頼関係のあるセックスのほうが、やっぱりいい

かつて「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」という本を書いた者として超個人的な意見を言わせていただくと、相手の同意を掘り下げたら実は危うい、というような程度での関係でのセックスが、そこまで楽しいものとは思えません。信頼関係があって、性的嗜好も十分にすり合わせて、お互いが求め合っている相手とのセックスのほうが、どう考えてもいいと思うのですが…

性的同意を教育の場で教えることは、相手を尊重するだけでなく、自分の身を守るという側面もあると思います。これからの世代には、ワンナイトや“お持ち帰り”が「モテ」で、「かっこいい」という価値観よりも、セックスは信頼し合い、互いを求め合える関係の中でするものだという感覚が、性的同意の概念と一緒に根づいてほしいです。

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の執筆医師

丸の内の森レディースクリニック

院長

宋美玄先生

産婦人科専門医

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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