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婦人科の病気 体験シリーズ:生理痛#01

鎮痛剤、漢方薬、低用量ピル、ミレーナ…あまりの痛さに過呼吸になるほどの月経困難症を克服するまで【体験談】

出先で過呼吸になって救急にかかるほど、月経痛がひどかったナオさん。PMS(月経前症候群)もあり、1か月のうちの半分は不調だったとか。そこで、鎮痛剤、漢方薬、低用量ピル、ミレーナを使って、元気になるまでの話を聞きました。(この記事は全3回の第1回です)

 

ひどい月経痛で過呼吸になった経験

「月経困難症で、過呼吸になっただけです。これから同じような症状が起こったときは、ビニール袋を口に当てて、落ち着くまでゆっくり呼吸するようにしてください」

 

救急外来で、医師にこう告げられたナオさん。月経中に外出していたところ、急に手足がしびれ、同時に呼吸が苦しくなり、一緒にいた友人にタクシーに乗せられて救急外来を受診したといいます。医師からは、特に婦人科の受診はすすめられませんでした。

 

月経痛は初潮を迎えたときからひどかったものの、過呼吸になったのは大学生のときのこと。その日も普段と同じように鎮痛剤を飲み、子宮が絞られるような激しい腹痛、釘を打ち付けられているかのような腰の痛み、頭痛、肩こりをしのいでいたそうです。

 

「生理って、つらいのが当たり前だと思っていました。母も祖母もそう言っていたから、私だけ『痛くて耐えられない』って言いづらくて。しかも、単なる生理痛で婦人科にかかっていいとか改善方法があるとか、学校でも家でも誰にも教わりませんでした」(ナオさん)

 

昔はもちろん今も、月経痛は「我慢すればいい」と思われてしまいがち。たまに「将来、赤ちゃんを産むための試練なんだから」「女性ならみんな我慢してきたのだから」などと、驚くようなことを言う人もいます。

 

しかも月経痛や月経量が多いと「月経困難症」という病気で治療法もあるのに広く知られていなかったり、婦人科受診への心理的抵抗から「この程度で病院に行くなんて」と受診を躊躇する人も多いのです。

 

1か月の半分以上が調子の悪い時期

ナオさんの場合は、PMS(月経前症候群)も、かなりひどかったといいます。だいたい月経が開始する1週間前くらいから、体がむくむ、足がだるくなる、ニキビが増えるといった、さまざまな症状に悩まされました。

 

「月経の1週間前くらいから体がだるくて重くなって、月経が来ると腹痛と腰痛がひどいし、どんなに寝ても眠くなるし、出血量も多くてナプキンから漏れてしまうこともあるし、本当に大変でした。月経の期間も長くて、月の半分は不調でしたね」(ナオさん)

 

一度、親の友人のすすめで漢方薬を飲んだこともあるといいます。「確か、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)でした。ただ、私は漢方薬が苦手で、飲むと気持ち悪くなってしまうので、どうしても続けられませんでした」とナオさん。

 

その後、就職すると、定期的に健康診断を受けるようになって体に意識が向いたこと、先輩から「生理が重いなら一度、婦人科を受診してみたほうがいいよ」とすすめられたのをきっかけに、初めて婦人科へ行ったナオさん。

 

「それまで婦人科って怖いというか敷居が高いイメージがあって、しかも内診が怖いと思っていたんですが、先輩から生理が重いのは子宮内膜症や子宮筋腫かもしれないと聞いて、これは放置できないと思って行きました」(ナオさん)

 

幸いにも、ナオさんは子宮内膜症や子宮筋腫などの病気はなく、ただの月経困難症および過多月経だということがわかりました。そして婦人科の医師に低用量ピルの服用を提案され、飲むようになったといいます。
 

低用量ピルとミレーナで人生が変わった!

低用量ピル
photo:PIXTA

 

 

「低用量ピルを飲むと、月経痛もPMSもすごく軽くなって、びっくりしました。私の母が、若い頃にピルを飲んだら太ったと言っていたので心配だったんですが、副作用も特にありませんでした」(ナオさん)

 

ただ、激務が続くと、わざわざ産婦人科に行って低用量ピルを処方してもらったり、毎日飲んだりするのはとても面倒だと感じることもあったそう。

 

「正直いって毎日ピルを飲むのって面倒くさいし、仕事が忙しいと飲み忘れてしまうので、もっとラクにならないかなと思っていました。そんなとき、友人に教えられたのがミレーナでした」(ナオさん)

 

ミレーナというのは、黄体ホルモンを放出する小さなT字型のデバイス。子宮内に装着することで内膜を薄く保ち、月経を軽くしてくれる効果があります。月経困難症や過多月経の場合、保険適用で1万円程度で入れられ、最長で5年間も効果が続くのです。

 

「これだ!」と思ってミレーナを入れることにしたナオさん。挿入時と、その後の一時期だけ痛いと聞いていたので、どれだけ痛いのかと震えたものの、痛みはそれほどでもなかったといいます。「PMSや月経困難症の痛みを思えば、我慢できる程度でした」とのこと。

 

「ミレーナは、ピルと違って飲み続ける必要もないし、避妊効果もあるし、本当にラクです。医師からはピルと違って、PMSはよくならないだろうと言われましたが、気のせいなのか軽くなったと感じています」(ナオさん)

 

生理痛の素朴な疑問にcrumii編集長・産婦人科医の宋美玄が答えます

Question 1

 過呼吸になるほどの月経痛はよくあることでしょうか? 対処法はビニール袋で呼吸をする、でいいのでしょうか?

Answer 1

しばしばあります。過呼吸の対処法としてはビニール袋で呼吸ですが、そもそもの痛みを鎮痛薬などで取る必要があります。もちろんピルなどのホルモン治療が本来的です。

 

Question 2

月経困難症にいい漢方薬はあるのでしょうか?

Answer 2

当帰芍薬散などが使われ、効果を感じる人もいます。

 

Question 3

月経困難症の対策として、ピルやミレーナ以外にできることはあるでしょうか?

Answer 3

ジエノゲストなどの黄体ホルモン剤があります。

 

Question 4

昔のピルは太ったとか、副作用が強かったなどと言いますが、本当でしょうか?

Answer 4

低用量ピルが認可される前に使われていた中用量ピルは太るという副作用があります。

 

Question 5

ミレーナを入れる際、痛みが怖い場合はどんな対処法があるでしょうか?

Answer 5

鎮痛剤、局所麻酔、笑気麻酔などがあり、個人差がありますが軽減が期待できます。

 

Question 6

ミレーナでは、PMSに対処できないと言うことですが、なぜでしょうか? (ミレーナを入れてからPMSがつらい場合はどうしたらいいのでしょうか?)

Answer 6

ミレーナを入れても排卵が止まらないことが多く、エストロゲンや黄体ホルモンの変動は起こるためと考えられています。ピルや黄体ホルモン剤を併用することもあります。
 

Question 7

ミレーナを入れていたら、避妊は必要ないでしょうか?

Answer 7

はい、ミレーナ自体が避妊法として承認されています。

 

大西まお

編集者、ライター。出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な編集担当書は、宋美玄著『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』、森戸やすみ著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

院長

宋美玄先生

産婦人科

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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