スペシャル対談 crumii編集長 宋 美玄 × 助産師YouTuber シオリーヌ
【後編】助産師シオリーヌさんが語る「専門職だから感じた」出産・母乳のリアル
性教育や妊娠・出産に関する情報を発信し、チャンネル登録者数17万人を超える助産師YouTuber・シオリーヌさん。ご自身も不妊治療を経て、2022年に出産を経験されました。今回は、crumii編集長の宋 美玄先生と、シオリーヌさんのママ対談を前後編でお伝えします。
「専門職だからこそ見えたギャップ」や「当事者になって初めて分かったこと」について、産婦人科医の宋美玄先生の自宅で語り合いました。
この記事は、産婦人科医・宋美玄先生のYouTubeチャンネルで公開された対談動画「【本音】妊活中に言われて嫌だったこと全部話します!【シオリーヌ】」の内容を、crumii編集部が再構成・編集したものの後編です。
>>前編はこちら:【前編】助産師シオリーヌさんが語る「専門職だから感じた」妊活・妊娠のリアル
出産の痛みは「人による」
知識があることのアドバンテージ

出産はどうでしたか?
シオリーヌ: びっくりしたのは、思ったより痛くなかったことです。
宋: えっ、そうなの? 私はめちゃめちゃ痛かったけど。
シオリーヌ: 元々痛みに強いタイプで、今まで色々な方のお産を見てきた中で「自分はどのタイプだろう」という好奇心があって。それで無痛分娩にしなかった。ものすごい覚悟をして臨んだら、「まだいける、きっとまだピークが来る」と思い続けているうちに「全開です」と言われて。分娩時間8時間の順調なお産でした。
シオリーヌ: あと、知識があるアドバンテージの大きさです。フリードマン曲線でいうとここで、破水した時点で3cm開大、陣痛も順調についてきている——「これは非常に順調な状態だ」と自分で分かる安心感がすごく大きかった。お産の辛さって「痛み」と「この先どうなるか分からない不安」の2つがあると思うし。
宋: 確かにね。後者を感じなくてすむのは大きいね。
シオリーヌ: そうそう。専門家ゆえにその不安がなかったことが大きかった。同時に、妊婦健診でお産の進み方というものをもっとちゃんと伝えておくべきだと痛感しました。知らないことは怖い。逆に言えば、知っているだけで余計な不安を減らせるんですよね。
※編集部注:フリードマン曲線とは、分娩の進行をグラフ化したもの。子宮口の開き具合と時間経過の関係を示し、お産が順調に進んでいるかを判断する目安になる
母乳育児はメカニズムを知った上で、「自分で決めて」欲しい
産後の母乳についてはどうでしたか?
シオリーヌ: 助産師なので、産後すぐに頻回授乳を頑張れば後が楽になることは知っていました。哺乳瓶を毎回洗う手間とか考えたら、自分さえいれば出る母乳が一番楽だなと思って、最初から完母に振り切ろうと決めていました。でもその判断ができたのは、情報があったからです。
宋: そこが問題なんですよね。自分で「最初の1〜2日は頑張るぞ、後が楽になるから」と思ってやるのと、病院に一方的なスパルタでやらされるのとでは全然違う。母乳が出るメカニズムを知らなかったら、一番しんどい産後に何度も起こされて授乳させられるなんて、ただの拷問にしか感じないですよ。
シオリーヌ: 母乳のことって、ちょっと不都合なことに、産後の一番しんどい時期に頻回授乳しないと軌道に乗らない仕組みになっているんですよね。1週間ゆっくりしてから「そろそろ出そうか」では出ない。そのメカニズムを知った上で「じゃあ私はここまで頑張る」と自分で決められることが大事なんです。

母乳もミルクも、選ぶ前にバイアス抜きの情報を
宋: 私自身、一人目のときは産んでみてから母乳について分かったことが多すぎて。調べてみたら、母乳推しの情報かミルク推しの情報ばかりで、バイアス抜きのニュートラルな情報がほとんどなかった。だから小児科の先生と一緒に、できるだけ中立な本を作って、うちに通っている妊婦さんたちが卒業するときには全員に渡すようにしています。
シオリーヌ: 助産師の中にも、母乳のことを頑張って勉強している人ほど「せっかくなら母乳になってほしい」という気持ちが出てしまうことがある。でも本来は、母乳のメリットもミルクの利点も主観抜きでちゃんと伝えた上で、お母さん自身が「私はこれで行こう」と決めるのが大事。助産師はその選択が実現するよう支援するのがベストだと思います。
宋: しかも産後1週間くらいの間に、その後の母乳育児の道のりがほぼ決まってしまうでしょう。後から学んでどうにかなるものじゃないから、妊娠中にしっかり情報を届ける時間が必要なんです。母乳にするかしないかは本人や家族が決めること。誰も反対しない。ただ、ちゃんと情報を得た上で主体的に決めてほしい。その環境を整えることが大事ですよね。
【H2】おわりに|自分らしい選択のためには、まず知ること

妊活から出産、産後まで、専門職であるシオリーヌさんが当事者として経験したからこそ語れるリアルな言葉には、多くの気づきがありました。「知っているかどうか」で経験の質が大きく変わるということです。
シオリーヌさんが出産の痛みを想定内として受け止められたのも、産後すぐに完母に振り切る決断ができたのも、専門職としての知識と経験があったからこそ。逆に言えば、知らないまま当事者になったほとんどの女性たちは、余計な不安を抱えたり、宋先生のように後から取り返せない後悔をする可能性もあるわけです。
妊娠・出産・育児に正解はありません。誰かの価値観やバイアスのかかった根拠のない情報に振り回されず、正しい知識を持って自分で選択することが大切。
そして周囲の人たちも、妊婦さんの妊娠中や産後の選択に対して「クソバイス」や余計な口出しをして追い詰めるのではなく、本人の選択を尊重することが何よりも大切なのです。(もちろん、明らかに危険な行動を引き止めることは必要ですが…)
crumiiではこれからも、フラットな情報提供をしていき、多くの女性と妊婦さんの力になりたいと思います。
本記事は、産婦人科医・宋美玄先生のYouTubeチャンネルで公開された対談動画「【本音】妊活中に言われて嫌だったこと全部話します!【シオリーヌ】」の内容を、crumii編集部が再構成・編集したものです。
対談のフル映像(元動画)はこちら。
記事では触れきれなかったエピソードも動画でお楽しみいただけます。

















