気になるキーワード 「過多月経」
生理の量が多いのは病気?過多月経の原因とセルフチェック【①基本編】
「生理の量が多い気がする。でも病院に行くほどかな?」と迷っているあなたへ。「こんなもんでしょ」と放置すると、体も生活もじわじわ消耗していくのが過多月経です。生理の量が多くて困っている、という悩みは患者さんの相談の中でもかなり上位にくるトピックのひとつ。まずは「多い」の目安を知って、治療の選択肢を比べていきましょう。
この記事では、月経の量が多い「過多月経」について解説していきます。
私の生理の量は多いの?過多月経のセルフチェック
正常な月経と「過多月経」の境界線
過多月経(英語ではHeavy Menstrual Bleeding:HMB)の日本産科婦人科学会の定義は、1回の月経で出る経血量(初日~最終日までの合計)が140ml以上です(通常の月経量は20~140ml)。でも、実際の生活では正確に経血量を測るのは難しいですよね。英国の診療ガイドラインでは、血の量だけでなく、「月経量が多く、日常生活に支障が出ること」と生活の質(QOL)への影響を定義にいれています。日本でも実際の診療現場では、同様のチェック項目で過多月経を診断しています。
※編集部注:以下、この記事では、疾患名の表記以外、月経のことを「生理」という表現に統一します。
見逃さないで!過多月経の典型的な症状とは?
生理の量は他の人と比べるのが難しいので、「いつものこと」と思い込んでいる人は多くいます。でも、知らないうちに貧血は進行しているので注意が必要です。「そういうもの」という思い込みは案外怖くて、臨床の現場でも、だいたい1時間に1回くらいナプキンがいっぱいになるので変えてます、とケロッと言う人もいたりします。その人にとってはそれが普通なので、みんなもそうだと思い込んでしまうのですが、1時間ごとにトイレに駆け込むというのは、明らかに日常生活に支障をきたしていると言っていい状況です。

①経血の状態は?
・大きめの血のかたまり(レバーのような塊)が、たびたび出る
・かたまりが出るせいで、急にドッと出血して下着を汚してしまう
※血のかたまりがたまに出ること自体は、必ずしも病気であることを意味するわけではありません。ただ、毎回の生理で血のかたまりが出る場合は過多月経になっている可能性が高いです。子宮の病気などを一度疑って受診をおすすめしたいです。
②ナプキンの使用状況や交換頻度で見分ける
・夜用でも2時間もたない/寝具を汚してしまう
・昼間でも1時間ごとに交換が必要
・二重にしても不安で、外出や仕事の予定を組みづらい
量が多いことは、気合いや技術でどうにかできる問題ではありません。頻繁にトイレに行くにも、ナプキンの消費が多いのも困りものです。十分に医師に相談する理由になりますので、安心して産婦人科に行きましょう。
過多月経の裏に隠れている「病気」って?
過多月経の原因は、ひとつとは限りません。色々な要素が複合的に絡み合っていることも多く、総合的な診断が必要になります。
3大原因:子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープ
生理の量を増やす、代表的な疾患をここでご紹介します。
子宮筋腫:子宮の筋肉にできる良性のこぶ。子宮の中に近い場所(粘膜下など)にあると、出血が増えやすくなります。
子宮筋腫についての詳しい記事はこちら。
子宮腺筋症:本来は子宮の内側にある組織が、子宮の筋肉の中に入り込む状態。子宮が腫れぼったくなり、痛みと出血量増加の両方が起きる病気です。
子宮内膜ポリープ:子宮の内側(内膜)にできる突起。内膜が不安定になり、出血が増えたり長引いたりします。

ホルモンバランスの乱れ(機能性過多月経)
子宮筋腫やポリープなど、明らかな病気の所見が見つからないのに、排卵が不安定で内膜が厚くなり、ドッと出血するタイプがあります。思春期や産後、40代後半から50代の更年期の時期など、ホルモンのゆらぎが強い時期に起こりやすいのが特徴です。
実は怖い「子宮体がん」や「血液の病気」の可能性も
頻度はそんなに高くありませんが、見逃したくない病気が隠れていることもあります。
子宮体がん
不正出血(生理以外の出血)や、生理が長引く形で現れることがあります。更年期~高齢の女性に多い病気ですが、まれに若い方に起こることも。
血液が固まりにくい体質(出血しやすい病気)
血が止まりにくい血液の病気です。若い年代では、過多月経が最初のヒントになることもあり、産婦人科では必要に応じてスクリーニングが推奨されています。
甲状腺の病気
甲状腺ホルモンは生理の周期や出血量にも影響します。甲状腺機能が低下すると(橋本病など)、生理が重くなったり、周期が乱れたりすることがあります。
そのままにするとどうなる?貧血とQOLへの悪影響
体からのSOS「鉄欠乏性貧血」の症状
生理による出血が多い状態が続くと、体の貯金である鉄が削られていきます。鉄欠乏性貧血とは、鉄が足りなくて、酸素を運ぶ赤血球が十分につくれない状態のこと。
生理の時期にこんな症状に心当たりはないでしょうか?
・立ちくらみ、息切れ、動悸
・だるい、朝起きられない、集中できない
・爪が薄く割れやすい/反り返る
・氷を無性に食べたくなる(氷食症)
生理中はただでさえ体調が悪い人も多いので、疲れているだけかなと思ってしまう人も多く見過ごされがちですが、鉄不足は案外日常生活に影響します。生理の出血が原因で貧血を起こしている場合、鉄を補うことももちろん大事ですが、体から出ていく血の量をコントロールして、根本的な改善につなげる必要があります。

「生理だから我慢」がもたらす社会的・心理的損失
過多月経がつらいのは、体だけではありません。経血の漏れが怖くて予定を入れられなかったり、会議や接客、通勤など、外出そのものが「嫌だなぁ」と思ったりする人もいるのではないでしょうか。なんらかの大事なイベントに被ったとして、「嫌だ」と思うなら、立派な過多月経。医師に相談する価値は十分あります。
その時点で心理的に外出が億劫になっているわけですし、当然、こういった心理的な負担は本人のパフォーマンスにも影響してきます。
まとめ|「多いかも」と思ったら、それはもう相談していい
ここまで読んで、「私過多月経かも」と思った方もいるでしょうか。
過多月経は、ナプキンの交換頻度や血のかたまりの有無など、生理中の症状として気づくことが多い症状です。その裏には、子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープといった治療できる病気が隠れていることもありますし、放置すれば鉄欠乏性貧血が静かに進行して、だるさや集中力の低下といった形で生活全体に影響が及ぶかもしれません。
こういった症状の悪化を防ぐためにも、「多いかも」と感じたらぜひ産婦人科医に相談してみてください。
第2回の記事では、過多月経の治療である低用量ピルやジエノゲスト、ミレーナ(IUS)、手術について具体的な内容を解説していきます。「受診したら診察は何をするの?」「医師にどう伝えればいいの?」といった不安にもお答えします。お楽しみに。
<参考文献>
英国診療ガイドライン
















