
異所性妊娠(子宮外妊娠)とは?原因・症状・診断・治療まで徹底解説【後編】
前編では、異所性妊娠の原因や症状、診断方法や治療の選択肢について詳しくお伝えしてきました。しかし、実際に異所性妊娠を経験した方や、これから妊娠を希望している方にとっては、「再発することはないの?」「予防する方法はある?」といった疑問がまだまだあるかもしれません。
後編では、異所性妊娠の再発リスクや予防のためにできることを解説するとともに、実際に異所性妊娠を経験された方の体験談をご紹介します。
再発リスクと妊娠への影響は?
異所性妊娠を経験した方の多くが気になるのが「次の妊娠は大丈夫?」という点。再発率のデータや治療後の妊娠の可能性、妊活の再開タイミングなどについて解説します。
再発率と予後の考え方
異所性妊娠による手術歴があると次回以降の妊娠での反復は10〜15%との報告があります。正常な自然妊娠・出産を経験している人も多く、異所性妊娠を経験しているからといって、過度に悲観する必要はありません。
異所性妊娠の予防と早期発見のためにできることはある?
完全な予防は難しい異所性妊娠ですが、このような可能性について知っておくことで、リスクのある行動を避けたり、早めに気づく工夫をしたりすることは可能です。
日頃から婦人科で定期検診を受けておくと、子宮内膜症や卵巣嚢腫などの病気の早期発見や治療につながります。クラミジアなどの性感染症も卵管の癒着につながる恐れがあるため、早めに治療を完了しておきましょう。
特に問題がなくても、性交渉の経験がある場合には、年に一度程度、子宮頸がん検診と経腟超音波を受けておくのがおすすめです。
避妊していたからと、妊娠など思いもよらず、無月経を放置している方もいたりしますが、月経が来なかった場合には、可能性が少しでもあれば妊娠反応をチェックし、無月経が疑われるときにも早めに産婦人科を受診します。
妊活中の人は、月経周期を把握しておくと、妊娠にも気づきやすく、産婦人科を受診して正常妊娠かどうかを早期に確認することができるので安心材料になると思います。
妊娠検査薬の反応時期については、こちらの記事にも詳しく解説していますので、よければご覧ください。
経験者に聞いてみた!異所性妊娠ってどんな感じだった?
場合によっては、異所性妊娠は、特にこれといった前兆がないまま、短時間で緊急事態に陥ることも。異所性妊娠が怖いのはしらない間に成長が進んで破裂、出血性ショックに陥ってしまうことです。今回は、そんな異所性妊娠を経験したアカネさん(仮名)にお話をお聞きしてきました。
普通に二人目かとのんびりしていたら…
アカネさんが妊娠に気づいたのは、まだ上のお子さんが小さい時期。最初は思いがけず驚いたそうですが、育児は大変ながらも、シンプルに二人目のお子さんの妊娠をうれしく思ったそうです。
「出産の経験があったので、あまり早くお医者さんに行きすぎても、どうせ赤ちゃんは見えないかな〜、と少し様子をみていました。初めての妊婦さんだと、不安になったりしたかもしれませんが、少量の出血があっても、よくある初期の出血かなと思って無視していました。
もう一人目を産んでいるから、経産婦ならではの余裕というか。多少のつわりがあったもののそんなにひどくもなく、特に困りごともなかったので、一人目の時より少しのんびりしたタイミングで受診しました。」
たまたま仕事が繁忙期のピークに重なっていたこともあって、6週目後半頃になってようやく病院を受診したアカネさん。ところが、通院した瞬間に状況が一変したと言います。
「内診でエコーをした瞬間から、明らかに医師や周囲の看護師さんたちがバタバタし始めました。そのまま入院することになって、先生からあれこれ説明を受けたんですが、自分自身はピンピンしているので、全然そんなおおごとだという実感がなくって(笑)。『じゃあ入院用の荷物とりに、いったん家に帰ってもいいですか?』って看護師さんに聞いたら、『ダメです!!!』っていわれて初めて、思ったより状況は深刻なんだと実感した感じでした。」
出血性ショックに陥る前に手術する必要がある

そのまま臨んだ腹腔鏡手術は無事成功し、1週間程度の入院生活を経て、無事退院。その後の経過は順調で、当時小さかったお子様も小学校になられるとか。お子さんが小さかったために、急な入院に対応してくれた家族や同僚にも助けられたそうです。
「急に私が帰れなくなって、入れていた仕事の予定は全部キャンセルすることに。幸い職場や得意先の方々も理解があって救われたし、リモートワークしていた夫や母にも色々対応してもらいました。」
早めの受診は大切。
早めの受診にも意味はあると語るアカネさん。これから妊娠を考える人には、特に体調に問題がないからといって放置しないでほしいと言います。
確かに、赤ちゃんの袋(胎のう)が見えてくるのは5~6週くらいから。心拍が確認できるのは7週目以降くらいからですが、胎のうが子宮内にあるかどうかを確認しておくことで、子宮の中に正常妊娠していることは確認できるため、安心材料になります。
「私の場合、子宮外妊娠という言葉は聞いたことがあったけど、そこまで緊急性のあることだとは全然知らなかったし、やっぱり経産婦ならではの余裕が、裏目に出てしまった感じでしたね。もし受診が遅れて家や街中で大出血していたらと想像するとゾッとします。本当に良かった。」
「お産が命がけ」というのはよく聞くと思いますが、妊娠初期にもこのようなリスクが隠れていることに驚いた方も多いのではないでしょうか。

知っておきたいQ&A|よくある質問と回答
異所性妊娠に関してよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。
Q:異所性妊娠になる原因には何があるの?
A:主に卵管の機能障害や性感染症、手術歴、子宮内膜症が関係します。
Q:一度異所性妊娠になったら、もう出産できない?
A:いいえ。卵管の切除といった治療の内容によっては後の妊孕性(妊娠しやすさ)に影響するものもありますが、治療後にも多くの女性が正常に妊娠・出産しています。
Q:次の妊娠も異所性妊娠になる?
A:再発リスクは10〜15%といわれています。
Q:ピルや避妊リングで予防できる?
A:ピルは排卵の抑制によってリスクを下げますが、避妊リング(IUD)は子宮内の着手を防ぐはたらきがあるため、妊娠自体を防ぐ効果は高いものの、まれに妊娠した場合は異所性妊娠の割合が相対的に高くなります。
まとめ
異所性妊娠は、全妊娠の1%と、珍しいけれど命にかかわる産科救急です。誰にでも起こりうることで、完全に防ぐことは難しいのが現状です。
妊娠初期の不正出血や腹痛を軽視せず、小さなサインに気づくこと、これらの症状は妊娠初期にもよくある症状ですから、正常妊娠だと思い込まずに早めに受診することがとても大切になります。
実際に経験された方の体験談からも、早めに産婦人科を受診することの重要性が伝わったのではないでしょうか。異所性妊娠の可能性を知っておけば、万が一の場合でも迅速に対応できるようになります。妊娠に気づいたら必ず早めに受診をして、安心して妊活や妊娠期を過ごせるように準備しておきましょう。
【参考文献】
病気がみえる 産科 第3版 メディックメディア,2022
産婦人科 診療ガイドライン 2023,日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会
今日の臨床サポート|異所性妊娠,エルゼビア