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都市伝説 トンデモ

「あるある」じゃ済まされない⁉ 本当にあった産婦人科でのトンデモ話 #10(番外編)

都市伝説? どこまでホント? 性にまつわるあの噂

年末の足音が聞こえてくるこの季節、冬休みクリスマス忘年会新年会……と、イベントが目白押しです。街がムードあふれる演出に彩られ、様々な思い出も蘇りやすいからでしょうか、ノスタルジーマーケティングも活性化すると聞きます。

そんな時、うっかり蓋が開く記憶の底には、喜ばしくないものもあるでしょう。当媒体は「女性の身体・こころ・性の課題に寄り添う」メディアですから、今回はそこから、かつてあった“性のトンデモ情報”をふりかえってみることにしました。なぜわざわざ悪しき古の言説を掘り起こすのか? それは、消えたように見えて、一周回って、再びどこかで浮かび上がってくるものだからです。多少形が変わっても、掘るとベースが一緒なのもよくある話。今は昔ばなし扱いだとしても、こうした奇妙な言説を振り返ることで珍情報への耐性をつけるのは案外大切です。お時間に余裕のある方は、どうぞお付き合いくださいませ。

類似の手法は現代にも⁉ 治療を引き合いに、性的暴行事件が発生する、怖い話

そんなわけで、懐かしみたくはないが「そんな話もあったよね」的な情報からご紹介していきましょう。まずは、特級呪物級の迷信です。
様々な時代、地域で「処女」に超自然的パワーがあるとみなす考えがありますが、「処女と性交すると浄化される(病気が治る)」という迷信から、アフリカ一部地域では「エイズ治療を目的に、赤ん坊を含む若い女性が性被害にあったという恐ろしい出来事があります。処女の治癒信仰の歴史は古く、かつてのヨーロッパでも梅毒や淋病の治療が確立される以前は、処女との性交が効果的だと信じられていたこともあると聞きます(うつせば治る、という単純な発想もありそう)。
こうした出来事は医療へのアクセスが難しい当時の社会や、地域の文化や宗教的な背景が混ざり合っていることが背景にあるため、決して“愚か””野蛮だから”ではありません。今私たちが気を付けるべきは、こうした昔話を都合よく引き合いに出して“野蛮なやつらに気をつけろ!”みたいな文脈に持っていく、排外主義だと思います。
ちなみに令和の今も、治療を理由に性的暴行が行われる事件は存在しています。例えば「子宮に悪いエネルギーがたまっている」と脅し、修行と称した性的暴行を行った、霊感商法と悪魔合体したような事件です。どれもトンデモとコミカルに表現する域を超えている犯罪でしょうが、それぞれが持つ問題の複雑さへ目を向けるとともに、迷信・俗説を利用した悪事の存在を頭に入れておきたいものです。初っ端からハードな話題ですみません。

イグ・ノーベル賞で否定された都市伝説も

都市伝説 コーラ 避妊
photo: PIXTA

都市伝説界隈では、やはり「性交後、膣内をコーラで洗うと避妊になる」が有名どころです。なっつかしい! と思っていると、令和の今もSNSで見かける言説なのが、悲しい。結局、性のトラブルにおいてティーンは、金銭的・社会的に医療にアクセスしにくい現状の現れのような気がします。ちなみにコーラ避妊都市伝説は、1950~1960年頃にアメリカで広まり、その後日本へ流入してきました。ところが 2008年に、「コーラの避妊効果」に関する研究がイグ・ノーベル賞を受賞。受賞者が「コーラによる避妊は効果がなく、むしろ有害である」と注意喚起を発信。なかなかアツい展開でした。

これは酸性であるコーラが、精子を死滅させるという考えから生じた都市伝説のようですが、その一方で産み分け界では“膣内を酸性に傾けると女児が生まれやすい”というのが定説(※エビデンスはもちろん確立されていません)です。ぜひガチンコ勝負をして、相殺され、塵と消えて欲しい。

もっとシンプルな方法では「ジャンプして避妊」というものも有名です(物理的に精子を排出しようという発想でしょうが、間に合うはずもありません)。ナタリー・ポートマンがシングルマザーを演じた映画『あなたのために』(邦題)では、「日が昇る前に後ろ向きに90回ジャンプすれば大丈夫」という避妊アドバイスが登場していたのも懐かしいですね。これは作品内に登場した言説なので本当にある都市伝説なのかは不明ですが、“90回ジャンプするハメになるから、ちゃんと避妊しましょう”という教訓が含まれているのかもしれません。

“いい話”風に伝わっているデマの代表格「いいセックスをすると、女性ホルモンが分泌されてキレイになる」も記録しておきたいです。充足感によりキレイになるってのは実際あるとしても、そこへ女性ホルモンが作用しているかと言えば、まず関係ないと言えます。この手の情報はなんでもかんでもホルモンが引き合いに出されがちなので、ホルモン大忙し。そう都合よく分泌されるものではないことを、今一度確認しておきましょう。

最新トレンド「フェムケア」界隈でも面白物件が盛りだくさん

懐かしの物件から時代を進め、昨今のセックスまわりの情報で気になるのは「フェムケア」の領域です。フェムケア=少し前で言うところのデリケートゾーンの包括的なケアは、「フェムテック」の広まりとともに女性向けメディアがこぞってとりあげ、巷にだいぶ浸透してきた感があります。

その「フェム活」(と呼ぶそうだ)の中で「感度を高める効果もある」と謡われているのが、膣の壁にヒアルロン酸を注入したり、レーザーをあてるという新施術です。膣の壁を盛り上げ、膣内部が狭くなることで摩擦や圧迫が増え、刺激が伝わりやすい……という理屈らしい。……ですが、そこはかとなく“快感を得にくいのは膣のしまりが悪いから”的な話につながりそうで、イマイチ納得しきれないものがあります。快感が伝わるメカニズムを考えると、感度向上効果は低そうなんですが、実際どうなんでしょう(Crumiiに関わっている医師の皆さま、いかがですか?)。ごく一部の体験談で恐縮ですが、この施術を体験した友人は「全然変わらない」と話していました。もしセックスの質を上げたいのであれば、骨盤底筋を鍛える運動をしたほうが手堅いと思うのですが、こちらも最近では、座るだけで骨盤低筋を鍛えられるEMSマシンが、フェムテックイベントの常連選手となっています。どれだけ効果が出るのかは、あと数年はしないと実情がわからなそうな新物件、これからも注目していきたいです。

小規模な商いは自由度が高い印象があり、イメージだけで適当な効果を謡う「布ナプキンで膣と子宮がポカポカ&ふわふわになったら、感度が増してパートナーが喜ぶこと間違いなし!」みたいなものもあります。ふわふわなのは膣や子宮じゃなく、その理屈のほうでしょう。他にも「バランスのとれた性欲をサポートする肛門日光浴」や、セックスとサウナのルーティンでより整うことを目指す「セウナ」(考案者・しみけん氏)など、面白物件はまだまだたくさん。いろいろな嗜好、文化、取り組みがごった煮になったような混沌とした状態は性の奥深さの表れでもあるのでしょうか、やはり体の話である以上「効果」や「仕組み」の話に関しては、根拠が求められるのが当然と言えます。

都市伝説 フェムテック フェム活 布ナプキン
photo: PIXTA

 

スピリチュアル界隈もセックスがらみの話が充実していますが、長くなりそうなのでひとまず今回はこの辺で。そのうちやりたい第二弾を、お楽しみに。 

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

丸の内の森レディースクリニック

院長

宋美玄先生

産婦人科専門医

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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