crumiiを応援する バナー
呆れた顔をする女性

「あるある」じゃ済まされない⁉ 本当にあった産婦人科でのトンデモ話 #09

ノンデリ!? 天然!? すれ違い!? 微妙な温度差から暴言までの迷言集Part 2

「ノリがよくて楽しい先生」と感じるか、「デリカシーがない」と感じるか。「言い方」の問題は、医療事故などの明白なトラブルと違い、問題点が曖昧で難しい。今回は、そんな悩みにまつわる体験談だ。

九州地方に住む現在50代の優香さん(仮名)は、20代での初産をはじめ、これまでに3人の子どもを産んだ。3回のお産を担当してもらった医師はすべて違う人物であるが、共通点は「高齢の男性医師」だった。その土地では、他の地方と同様に当時も現在も医師不足が問題となっている。つまり、お産のできる病院が限られるので、選択の余地がほぼないと言える。

高圧的&大声で個人情報をだだ漏らす医師

「出産でお世話になった産婦人科医はすべて、“変な先生”としか言いようのない医師たちでしたね。3人のお産で全員、違うのに(笑)。まずは妊娠中の定期健診のことです。検診では必ず、体重を測るじゃないですか。それを、体育会系の居酒屋かと思うほどの大声で読み上げるんですよね。フルネームとともに」

「はい! 田所優香さん、62キローーーー!!!!!」

やめてくれ。待合室まで響き渡る、体重読み上げコール。地元のクリニックだったので、院内には知り合いがいた可能性も高いのも辛い。妊婦の定期健診は、妊娠初期だと4週間ごと、中期は2週間ほど、後期は毎週行われる。そのたびに、必ず行われる体重コール。心を無にして乗り気ったという。今どきなら体重測定データが電子カルテと連動するというシステムが取り入れられてそうなものだが、20年以上前の当時の地方&個人クリニックでは難しい話かもしれない。

ちなみにそこのクリニックの産婦人科医が、とても高圧的だったのも記憶に刻まれていると優香さんは話す。そして出産後、しばらくするとクリニックは閉鎖。年齢のためか評判のためか、理由はわからない。

性交渉の話題のみ、超ご機嫌になる謎の情緒

男性医師が話している
photo: PIXTA

「次のエピソードは、次男の妊婦検診です。長男の時と同じくらいの年齢に見える男性医師でしたが、今度はテンション高めのノリが良すぎる先生でした。ただし、普段はすごい暗いんですよね」

それは一体どんな状況? 聞いているほうも、混乱してくる。なんでも、普段の診察は何もかもがめんどくさい……という投げやりな風情で何を聞いても生返事。度々ため息をつきながら、いやいや業務をこなしているように見えるのだとか。

「それなのに、ですよ。強烈だったのは妊婦検診で行われるHIV検査の結果が出た時のことです」

男性医師は、突然ハイテンションになり優香さんにこう告げた。

「そうそう、この前のエイズの検査ね!!! 検査結果、出ましたよおおおぉ~⁉」

その後思いっきり”ため”をつくり、さらに大声でこう続けた。

「ジャジャジャジャ~ン!!!!! 田所さんの検査結果は……陰性でしたっ!! よかったねええ~!? あ~(笑)! ちょっと、心配してたぁ~(笑)!?」

普段の投げやりな態度との、ギャップが凄すぎて唖然となったと話す。どうも、性交渉を連想させる話題の時だけ、急にバイブス爆上がりになるらしい。今なら「ヒトコワ」のジャンルに分類される話かもしれない。いや、人によっては「楽しい先生」くらいに感じるだろうか。

そんな対応をされ、優香さんは当時どうしていたのか。その答えは、ドン引きしつつも「ははは…」と、愛想笑いで受け流していたそうだ。

「男尊女卑が強い地域で、さらに相手は医師ですしね。男性に失礼なことを言われることも日常茶飯事でもう感覚が麻痺しつつありました。私はそこで育った昭和生まれですから、そうした言動をスルーするのにもすっかり慣れてしまってました。たとえ地元の友人に話しても、“そんなもんだ”という意見が多いです」

しかしHIV検査のときはまだ、「前回の高圧的で厳しい医師より、マシ」くらいに思っていた。ところが産後、その考えは撤回された。同じくらいイヤだ、と。

「産後2週間検診の時のことでした。また突然テンション高くなり……『そうそうそう産後の性交渉ね~! もう、ガンガンやっちゃってOK牧場ぅ!!』。デリカシーのない物言い以前に……いやいや、早すぎん? 悪露、出てますけど? この医者大丈夫?と不安になりました」

冒頭でも触れたように、医師不足の地域がゆえ、選択肢はほぼない。さらに数の問題だけでなく、優香さんの住む地域もまた、他の地方と同じく「医師高齢化」も問題になっている。重大な医療事故ではないが、こうした違和感も見過ごせないのではないだろうか。

選択肢の少なすぎる田舎だからなの?

地方暮らしの中で直面する、医療不足からのQOL低下。優香さんは50代の今でも、度々困っている。

「最近では皮膚科です。最近、顔中に小さなブツブツしたイボができ始めたんです。治療できるものなのか、専門家に相談しようと思ったんですよ。そうしたら、この言いぐさです。『小さすぎて見えない!』『もっとブツブツが大きくなってから来てくれ』『そんな小さなブツブツ、誰も見ないでしょ。そんなの気にする人いないよ?』。恥を忍んですっぴんで出かけ、まるで私の頭がおかしいくらいの物言い。診療代払って心をえぐられただけでした」

“ブツブツ”は脂漏性角化症だった場合、治療の必要がなく、見た目的に気になるのであれば美容皮膚科で除去するという対処法が一般的だと思われるので、それを案内してくれてもよさそうなものだが……。

「若い医師がいないわけじゃないんですよね。でも若い医師は皆美容系に行き、高級車を乗り回しているような感じ。保健診療の範疇で、街のクリニックで対処してもらうのがこんなに難しいとは。ちょっとした不調があるたびに、あー医者に行きたくない……と憂鬱になります」

緊急性のないこうした話題は、声を上げても地元ではほとんど相手にされないという。しかしこれもまた、医療格差の現実のひとつである。

 

山田ノジル
フリーライター。女性誌のライターとして美容健康情報を長年取材してきたなかで出会った、科学的根拠のない怪しげな言説に注目。怪しげなものにハマった体験談を中心に、取材・連載を続けている。著書『呪われ女子に、なっていませんか? 本当は恐ろしい子宮系スピリチュアル』(KKベストセラーズ)ほか、マンガ原作や編集協力など多数の作品がある。 X:@YamadaNojiru

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

丸の内の森レディースクリニック

院長

宋美玄先生

産婦人科専門医

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

監修チームについて知る
crumiiを応援する バナー

シェアする