特集| 頼れる場所がある、ということ 〜公的支援のすきまを埋める現場から〜 (1)ユースクリニック
ビバ!ユースクリニック!まちの保健室、全国でひろがり中
ユースクリニックとは、10代~20代の若者が、からだ・こころ・性の悩みを気軽に相談できる場所です。1970年代に北欧で生まれ、世界各国に広がっている取り組みで、予約なし・無料・保護者の同意不要でカウンセラーや医療従事者が対応します。
昨今ではcrumiiのように、エビデンスに基づいた情報を発信しているメディアは増えてきていますが、ユースクリニックのように若者と直接つながり、支援する場所もまた重要です。
今回は、そんな若者の支援をしているNPO団体の活動について、2人の産婦人科専門医が現場を訪ねてきました。ひとつは、全国のユースクリニック関係者が集まるイベント「ユースクリニック会議」、もうひとつは、若者への食の支援をしているNPO法人D×Pのユースセンターです。2回にわたって、そのレポートをお届けします。

ビバ!ユースクリニック
窓いっぱいに、雄大な富士山。
富士市文化会館ロゼシアターに、2026年2月の光が差し込みます。
会場は、春の気配と、はじける笑顔で満ちていました。
「ほら、こっち来て!ちゃんと作ったのよ、えっと…なんだっけ、ホットスポット!」
「いやいや、ここでホットスポットだったら宇宙人ですよ〜」
あはは!と笑いながら、無事「フォトスポット」で撮影。
おばちゃまたちも若者も一緒に、しっかり映えています。
入口では、華やかでパワフルな運営メンバーがテキパキと動き、
訪れた人たちはみんな、少しだけ少女の顔に。
「え、なにこれ? こんなのあるの?」
協賛企業の製品や、たんぽぽユースクリニックの展示。
フェムケア用品や性教育グッズを手に取りながら、
自然と会話が生まれていきます。

全国ユースクリニック会議2026
思春期から若年期の「性」「こころ」「からだ」を応援したい。
そんな思いから、各地でユースクリニックが芽吹いています。
このたび初めて、運営している人たちが「横につながる」全国大会が開催されました。
北は新潟、南は沖縄まで(!)20団体がエントリー。
さらに、これから立ち上げたい人、応援したい人も加わり、
約270名が集まる場となりました。
後援はこども家庭庁、内閣府男女共同参画局、日本女性財団に加え、
富士市、産婦人科医会、教育委員会、薬剤師会。
まさに、地域ぐるみの応援です。

2026年度のイベントチラシ
ユースクリニックって、なに?
10〜20代の若者たちは、性やからだ、こころについて、たくさんの悩みを抱えています。
けれど、科学的な知識や専門家のサポートにアクセスできる機会は、他の世代よりもずっと少ない。
そのギャップに危機感を持った人たちが、
「だったら自分たちで作ろう」と立ち上げたのが、ユースクリニックです。
内容は実に多様です。
ミニレクチャーや体験型測定、簡単な検査。フェムテックや婦人科機器の展示。性教育グッズを使ったゲームや対話。
「自分のからだを、自分で考える」ための場が、それぞれの地域で工夫されながら生まれています。
運営形態もさまざまです。
NPOによる居場所型、クリニック主導型、移動型でイベント出店するスタイルもあります。

世界と日本、そのあいだで
海外には、予約なしで立ち寄れる常設型のユースクリニックがあり、
専門職が常駐し、無料カウンセリングを提供しているところがたくさんあります。
2019年の設立以来、性教育の普及や避妊薬へのアクセス改善に取り組む一般社団法人ソウレッジは、そうした現場を見学するツアーも実施しており、今回の大会でも諸外国の取り組みが紹介されました。
本当は、日本にもそんな場所があればいい。でも現実は、お金も人も場所も足りない。
それでも「思いだけはある」人たちが、各地で形を変えながら、ユースクリニックを運営しています。
今回、その「点」がつながり、思いや課題を共有し、未来を語り合う場が生まれました。
そして、もう一つ大切なこと。
ここにあるのは単なる「居場所づくり」ではありません。
ユースクリニックが向き合っているのは、
「自分のからだや性について、自分で決める」という、当たり前でいて、とても難しいテーマです。
意図しない妊娠に直面したとき。
避妊について知りたいと思ったとき。
誰にも言えない不安を抱えたとき。
そのときに、安心してアクセスできる場所があるかどうか
安心して話せる大人がいるかどうかで、
選択の質も、その後の人生も、大きく変わってしまうことがあります。
今の日本では、その機会はまだ十分に開かれているとは言えません。
だからこそ、ユースクリニックは、若者の「ボディリー・オートノミー」を支える、
小さくて、でも確かなインフラになりうるのだと思います。

「若者 × おばちゃま」最強説
会場で私が感じたのは、これ。
「若者とおばちゃまのコンビ、最強やん」
(もちろん、おじちゃまも少数ながら活躍しています)
若者のためなら一肌脱ぐわよ!と、おばちゃまたちは驚くほど生き生きしています。
むしろ、若返って見えるほど。
一方、若者たちは、「社会に貢献したい」というまっすぐな思いを軸に、その場で自由にクリエイティビティを発揮していきます。
多少のやらかしは問題なし。それも全部ネタになります。笑い飛ばして、次のエネルギーに変えていくのです。
全国のユースクリニックはどこもかしこも、そんな相乗効果のエネルギーに満ちていました。

これからの課題と、これからの可能性
現在、多くのユースクリニックはボランティアや寄付に支えられています。
素晴らしい活動がある一方で、まだ属人的で、仕組みとしては発展途上です。
だからこそ、今回の「横のつながり」は大きな一歩。
知見や試行錯誤を共有しながら、社会の大きなうねりへと育てていきたいと考えています。
あなたも、少しだけ関わってみませんか?
「若者のために、ちょっと力を貸してみようかな」
そう思った方は、ぜひInstagramで「ユースクリニック」と検索し、
お近くのユースクリニックにアクセスしてみてください。
近くにないという場合は、寄付を通じて関わることも可能です。全国大会を主催しているNPO法人女性医療ネットワークでも、寄付を受け付けています。
次は、あなたもこの場に
第2回全国大会は、来年2月に開催予定です。
この熱量を、次は一緒に体感してください。
全国から集まった熱量、そして地域を越えてつながる「若者のために何かしたい」という思いを、池田先生のレポートから受け取っていただけたのではないでしょうか。ユースクリニックがもっとたくさんの地域に、もっと自然な形で存在する未来になるよう、crumiiスタッフ一同願っています。
次回は、若者の居場所づくりと食事の支援を続けるNPO法人D×Pのユースセンターと食糧倉庫を訪ねます。ごはんやおしゃべりといったゆるやかな入口から、困難を抱えた若者たちとつながり続ける現場のレポートを、近日公開予定です。どうぞお楽しみに。
















