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宋 美玄の炎上ウォッチ! #20

「切迫早産」と言われたら…診断基準や治療について解説

ソファーに座って頭を抱える妊婦さん

妊娠中、お腹が張ったり、出血したり、妊婦健診で「子宮頸管が短い」「子宮口が開いている」と言われ、「切迫早産」という病名を言われる方は珍しくありません。今日は、切迫早産や早産の診断基準や管理について、解説してみたいと思います。

切迫早産・早産とは?

切迫早産とは、妊娠22週から36週の間に、規則的な子宮収縮や子宮口の開大、子宮頸管の短縮など、早産が差し迫っている兆候が見られる状態です。

早産とは、妊娠37週未満で出産することをいいます。日本では、約6%の赤ちゃんが早産で生まれています。

週数が早く、小さいうちにうまれるほど、赤ちゃんが自分で呼吸ができなかったり、感染症などのリスクが高くなるため、切迫早産と診断された場合には、できるだけ正期産(妊娠37週〜)までの妊娠の継続を目指すことになります。

実際のところ、切迫早産と診断されても、必ず早産になるわけではなく、日本の大規模な調査では、切迫早産と診断された人のうち、実際に早産となったのは約1割でした。多くの人は妊娠37週以降まで妊娠を継続しています。

早産のリスクが高いのはどんな人?

早産の主なリスク因子には、次のようなものがあります。

・以前の出産で早産だった人(切迫早産ではなく早産です)
・妊娠12週以降の流産妊娠24週ごろの子宮頸管短縮多胎妊娠、頸管無力症、子宮頸部円錐切除術などの手術歴、破水、出血、感染の経験がある人など

このほかに、喫煙、高血圧、糖尿病、前回出産から6ヶ月未満の妊娠、妊娠前の低体重や肥満も早産と関連するとされています。

ただし、このようなリスク因子があれば早産になるとは限りませんし、逆に当てはまらない人が早産になることもあります。前回妊娠が正期産だったからといって、今回のリスクがゼロになるわけではありません。(早産する確率が約3%になり、妊婦全体よりは低くなります)

基準とされる子宮頸管長について

「子宮頸管長が短いと言われた」「◯ミリになると入院と言われた」という方も多いと思います。
子宮頸管は、出産の時に産道の一部になる部分で、出産まで赤ちゃんが出てこないようにぎゅっと出口を閉めている部分です。出産が近づくと徐々に子宮頸管が短くなり、子宮口が開いていきます。

赤ちゃんの入った子宮の構成図
子宮頸部は赤ちゃんが出てこないようにフタのような役割をしている Photo:PIXTA

頸管長は、原則として経腟超音波で測定し、妊娠24週未満の単胎妊娠では、25mm未満の場合に早産リスクが高いと考え、管理することが多いです。ですが25mm未満の場合、それだけで入院や点滴が必要なのではなく、慎重に経過を見るということです。
(無症状で20mm未満の場合、海外では「腟用プロゲステロン製剤」が推奨されていますが、日本では今のところ承認されていません。)

流早産の既往がなく、子宮口も開いていない場合は、短頸管だけを理由に頸管縫縮術を行うことは通常推奨されません。

張りなどの症状がある場合には、頸管長だけでなく子宮口の変化、破水、出血、感染の兆候などと総合的に見て、早産がどの程度迫っているかを判断します。

切迫早産と言われたら

産科医が診察して、早産がどの程度差し迫っているか判断します。(産科医とて「水晶玉」を持っているわけではないので、すごく正確に予測するのは難しいです)

症状が軽く、子宮口や頸管に進行性の変化がなければ、外来に通いながら経過をみることもありますが、痛みを伴う規則的な子宮収縮、出血、感染、子宮口が開いていく様子などがあれば、入院や高次医療施設への搬送が必要になります。

切迫早産の「治療」は実は難しい

切迫早産と診断された場合、程度はそれぞれですが安静にするように言われることが多いです。厳格な安静を行えば早産が減るという十分な根拠があるわけではありませんが、長い間立っていたり歩いたりすると子宮の張りを感じるという人も少なくなく、そのように指導されています。

入院着に着替える女性

早い週数で子宮口が開いていたり胎胞(子宮口から出てくるドーム状の羊膜)が突出している場合など、切迫性の高い場合には、入院してベッドに臥床して、ほとんど動いてはいけないというレベルの安静度になることもしばしばです。

長期間ほとんど動かない生活を行うと、筋力低下や血栓症、メンタルヘルスに支障をきたすなどのリスクがあります。そのため、なるべく必要最小限の安静度にするよう管理していきます。

子宮収縮抑制薬(張り止めの薬)は、出産に至ってしまうのを短期間(通常48時間)遅らせるために使われます。胎児肺成熟のためのステロイドを投与し、効果が出るのを待ったり、NICUのある施設へ搬送したりする時間を確保する目的です。

日本ではリトドリンという製剤が広く使われてきましたが、長期間投与しても早産や新生児合併症が減るというエビデンスがあるわけではありません。施設の方針や地域の事情などを考慮して使われているのが現状です。

リトドリンの投与には、動悸、頻脈、高血糖、低カリウム血症、肺水腫などの副作用があることにも注意して管理する必要があります。リトドリンを使用していて不調を感じている方は主治医に伝えるようにしてください。

ハートマークの臍の緒でつながった赤ちゃん

切迫早産は「休めてうらやましい」状態ではありません

切迫早産と診断された人のうち、皆が早産にいたってしまうというわけではありません。ですが、早産が切迫している状態として管理を受け、不安な日々を過ごされている状態です。

仕事を調整して休業するしかなくなったり、入院して家族と離れて過ごさないといけなかったり、残された家族が上のお子さんの世話をして綱渡りの日々を送ったり、日常生活への影響も大きいです。

もしかすると、毎日仕事をしている方からすると「休めてうらやましい」と感じてしまう人もいるかもしれませんが(ちょうどそのような投稿が炎上しているのを見ました)、当事者からすると、自由に動くこともできず不安な日々で、うらやましがられるなんてとんでもないことだと思います。

切迫早産と診断された方は、大変だと思いますが、お腹の赤ちゃんのために一日一日を大切に過ごしていただけたらと思います。

<参考文献>
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編.産婦人科診療ガイドライン―産科編2023.日本産科婦人科学会;2023.
https://www.nature.com/articles/s41598-023-38524-9
https://publications.smfm.org/publications/560-society-for-maternal-fetal-medicine-consult-series-70/
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7188013/

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の執筆医師

丸の内の森レディースクリニック

院長

宋美玄先生

産婦人科専門医

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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