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【医師監修】配信ドラマで話題の「小陰唇」ってどんな器官?役割や縮小手術のこと

デリケートゾーンをハートで隠す女性

美容整形の世界を描いたNetflixのドラマ『ダウンタイム』が話題になっています。ドラマの中では、小陰唇縮小手術を受ける患者さんも登場しますが、そもそも「小陰唇」がどこにあって、どんな働きをしている器官なのか、きちんと説明を受けたことのある人は、どれくらいいるでしょうか。学校の性教育ではもちろん、医療の専門書でさえ、小陰唇について詳しく触れられることは多くありません。

そこでこの記事では、小陰唇の基本的な役割から、関連する悩み、そして縮小手術という選択肢まで、わかっていることを整理してお伝えします。

小陰唇とは? どこにあって、何をしている器官なのか

小陰唇は、女性の外性器(外陰部)を構成する、左右一対のやわらかいひだです。腟の入り口(腟前庭)を囲むように位置し、その外側を大陰唇が包んでいます。

女性の外性器の各部名称イラスト
Photo:PIXTA 

主な役割として、次のようなことが考えられています。

腟の入り口や尿道口を保護する:外部からの刺激や細菌の侵入を防ぎます
湿潤環境を保つ:粘膜を乾燥から守っています
性的反応に関わる:神経終末が密に存在しており、性的な刺激を受けると充血することが知られています

小陰唇の皮膚は、女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けやすく、表面の角質層が薄いうえ、常に湿った環境に置かれています。つまり、顔や手など目につく場所の皮膚とは、性質がまったく違うのです。この違いは、後で触れるケアの話にも関わってきます。

外性器の色や形に「普通」は存在しない

人体には、標準的な大きさがある程度決まっているものも少なくありません。たとえば子宮は成人女性で長さ7〜8cmが目安とされ、これを大きく超える場合には子宮筋腫などの病気を疑います。腎臓も同様に、標準的なサイズから外れていれば、何らかの異常を考えるきっかけになります。

しかし小陰唇には、大きさや形に「正常値」は存在しません。「ここから外れたら異常」という基準が存在しないのです。個人差が極めて大きいことは、いくつもの研究が示しています。

思春期の女性44人を調べた研究では、小陰唇の大きさや形と、年齢・身長・体重・人種との間に相関は見られませんでした。さらに43%、つまり4割を超える人で左右の長さが違っており、その差には1mm〜22mmまでの幅がありました。このことから研究者らは「小陰唇の大きさに正常範囲といえるものは確立されていない」と結論づけています。(文献1)

成人を対象にした研究でも同様です。女性200人を測定した研究では、小陰唇の幅は平均で約19mmでした。ただし、この値はあくまで「平均」にすぎません。実際には10mm前後の人もいれば、30mm近い人もいて、すべて正常でそのなかに大きな幅があることが示されています。この研究では「特定の数値を基準として線引きすることは避けるべき」と結論づけられています。(文献2)

「STOP」の看板を抱える女性Photo:PIXTA 

さらに米国産科婦人科学会(ACOG)も、「30〜40mmを超える小陰唇は肥大」といった基準が美容医療の文脈で流布していることに触れたうえで、思春期から成人までの女性657人について調べた研究では、半数以上がその基準を超えていたと紹介しています。

そして、解剖学的に多様性がある部位に基準を設け、「医学的介入が必要なもの」として特徴づけることは、健康な女性を不必要な手術のリスクにさらすことになる、と警告しています。(文献3)

すなわち、小陰唇についてはたとえ「人より大きい気がする」と感じても、それは多くの場合、正常な個人差の範囲に当てはまるのです。

どんな悩みが生じるのか——3つの軸で考える

とはいえ、「だからといって悩む必要はない」とは言えません。実際に困りごとを抱えている場合があるからです。

外陰部に関する訴えについては、次の3つの軸で捉える考え方が示されています。(文献4)

外観:色素沈着、形、左右差
感覚:乾燥、かゆみ、摩擦による痛み
心理社会的な苦痛:自己肯定感、「普通」であるかへの不安

この3つは互いに絡み合っていて、外観の悩みを主訴としていても、実は心理的な苦痛が本質であるケースが相当数含まれるとされています。だからこそ、「その人は治療によって何を解決したいのか」を明確にすることが、対応の出発点になります。

具体的な困りごととしては、こうしたものが挙げられます。

・下着やジーンズに擦れて痛い、炎症を繰り返す
・自転車やスポーツのときに不快感がある
・排尿時に尿が横に飛ぶ(排尿偏位)
・性交時に巻き込まれて痛い
・水着やレギンスを着たときの見た目が気になる
・パートナーの目が気になる、人に見られたくない

困り顔でデリケートゾーンに触る女性外性器の形のせいで、痛みなどの悩みを抱えていることも Photo:PIXTA 

小陰唇縮小手術とは

持続的な疼痛、繰り返す炎症、排尿の問題など、機能的な障害がある場合には、外科的な介入が選択肢になります。これが小陰唇縮小手術(labiaplasty/ラビアプラスティ)です。

どんな手術か

余分な部分を切除して縫合する手術で、主に次のような術式があります。(文献5)

辺縁切除法(trim法):小陰唇の縁に沿って切除する、もっとも一般的な方法
楔状切除法(wedge法):V字型に切除し、小陰唇の自然な縁を残す方法
脱上皮法(deepithelialization):表面の上皮だけを除去し、内部組織を温存する方法

局所麻酔または静脈麻酔で行われ、多くは日帰りです。単に「小さくする」ことだけを優先すると、乾燥や違和感につながるため、左右差や周囲の組織とのバランスを考慮したデザインが重要とされています。

内診台に上がった女性と診察する女性医師、子宮のイラストPhoto:PIXTA 

満足度と合併症

86件の研究を対象とした2024年のシステマティックレビュー・メタアナリシスによると、全体の満足度は94%(95%信頼区間93〜95%)と高い結果でした。術式別では脱上皮法が97%と最も高くなっています。(文献5)

合併症が生じることは決して多くないものの、術式によって差があります。楔状切除法では縫合部が開く(創離開) が8%、複合的な術式では腫脹が13%と報告されています。また、メスを使う方法はレーザーに比べ、出血・腫脹・血腫の発生率が有意に高いという結果も出ています。

手術を考える前の注意点

満足度の数字だけを見ると、手術は魅力的な選択肢に映るかもしれません。
ただ、以下の点もふまえて考えることが必要です。

大きさで手術するかどうかは決まらない:そもそも「正常なサイズ」が存在しないので、大きさを基準にするのではなく、本人が実際にどんなことで困っているかを見て判断することが大切です。

思春期は慎重に検討する:ばらつきが大きくデータも乏しいため、思春期の手術は慎重に検討すべきと、ACOGも提案しています。そのため、まずは「人それぞれ形も大きさも違っていて当たり前」という正しい知識を伝え、安心してもらうことが最初のステップとされています。

悩みの中心が「心のつらさ」である場合:見た目を気にする気持ちのつらさが悩みの中心にある場合は、手術よりも、まず正しい情報を伝えたりカウンセリングを受けたりすることがすすめられています。背景に身体醜形症(BDD)という状態が隠れていることもあり、その場合は手術を受けても満足できないことが多いと知られています。

身体醜形症(BDD)についてはこちらの記事もどうぞ。

女性医師に相談する女性のイラスト
Photo:PIXTA 

手術以外にできること——保存的治療という選択肢

「手術か、我慢か」の二択ではありません。症状に応じて、保存的治療という選択肢もあります。これは形を整えることを目的とした手術とは違い、つらい症状をやわらげ、日常生活を快適に過ごせるようにすることを目指すものです。(文献4)

基本は「やりすぎない」こと

外陰部のケアでいちばん大切なのは、皮膚が本来持っているバリア機能を守り、刺激になるものを取り除くことです。具体的には、以下の通りです。

・洗浄には、肌と同じくらいのpHで低刺激性のものを選ぶ
・洗いすぎない、こすりすぎない
・保湿剤も、パラベンや香料を含まない低刺激性のものを使う

ただし、これらは専門家の意見にもとづく推奨で、外陰部を対象にした厳密な比較試験(ランダム化比較試験)は行われていません。

「美白」には注意が必要

ここは、ぜひ知っておいてほしいところです。顔用の美白化粧品を外陰部に使うことには、医学的な根拠がありません。

理由は2つあります。ひとつは、一般的な美白剤が紫外線によってできるメラニンを抑える仕組みで作られているのに対し、外陰部には紫外線が当たらないこと。もうひとつは、外陰部で色素をつくる細胞(メラノサイト)を活性化させている主役が、紫外線ではなく女性ホルモンなどの性ホルモンだということ。つまり、そもそも仕組みが違うのです。

さらに気をつけたいのが、ケアのしすぎでかえって状態が悪くなることです。美白のために強い刺激を与えすぎたり、かゆくてかきむしることを繰り返したりすると、かえって色が抜けてしまう(色素脱失)ことがあると報告されています。しかも、いったん白く抜けてしまうと元に戻らないケースもあります。外陰部の皮膚は薄く、成分が浸透しやすいため、同じ刺激でも他の部位より変化が起きやすいのです。
「気にして手をかけるほど、状態が悪くなる」ということが起きてしまう可能性もあります。

まとめ:「普通かどうか」より、「困っているかどうか」

小陰唇の大きさや形に、医学的な「正解」はありません。左右の大きさが違うことも、大陰唇からはみ出していることも、その多くは正常な個人差の範囲です。

そのうえで、痛みや炎症、排尿のしにくさなど、実際に困っていることがあるなら、それは遠慮せず相談していいことです。手術という方法もありますし、日々のケアを見直すことで楽になる場合もあります。
大切なのは、「人と比べてどうか」ではなく、「自分が何に困っているか」から考えること。そして、その判断のもとになる情報を、広告ではなく医学的な根拠から得ることです。

気になることがあれば、まずは婦人科に相談してみてください。診てもらったうえで「問題ありませんよ」と言われること自体が、大きな安心につながることもあります。
この記事が、自分の体のことを、誰かの基準ではなく、自分の感覚で考えていくための手助けになればうれしく思います。

山本尚恵
医療ライター。東京都出身。PR会社、マーケティングリサーチ会社、モバイルコンテンツ制作会社を経て、2009年8月より独立。各種Webメディアや雑誌、書籍にて記事を執筆するうち、医療分野に興味を持ち、医療と医療情報の発信リテラシーを学び、医療ライターに。得意分野はウイメンズヘルス全般と漢方薬。趣味は野球観戦。好きな山田は山田哲人、好きな燕はつば九郎なヤクルトスワローズファン。左投げ左打ち。阿波踊りが特技。

 

<参考文献>
1.Brodie K, Alaniz V, Buyers E, Caldwell B, Grantham E, Sheeder J, Wilcox D, Huguelet P. A Study of Adolescent Female Genitalia: What is Normal? J Pediatr Adolesc Gynecol. 2019 Feb;32(1):27-31.
2.Kurtoğlu, N., Kovalak, E.E., Hayırlıoğlu, N. et al. The Relation Between Female Genital Perception and Genital Measurements: Does Size Matter?. Int Urogynecol. 2026; 37: 885-891. 
3.American College of Obstetricians and Gynecologists. Elective Female Genital Cosmetic Surgery. Committee Opinion.    https://www.acog.org/clinical/clinical-guidance/committee-opinion/articles/2020/01/elective-female-genital-cosmetic-surgery(参照 2026-09-30)
4.二宮典子. 小陰唇・大陰唇の悩み ―保存的治療編―. 産婦人科の実際. 2026;75(6):541-545.
5.Géczi AM, et al. Comprehensive Assessment of Labiaplasty Techniques and Tools, Satisfaction Rates, and Risk Factors: A Systematic Review and Meta-analysis. Aesthet Surg J. 2024;44(11):NP798-NP808.

稲葉可奈子

この記事の監修医師

院長

稲葉可奈子先生

産婦人科

京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。産婦人科診療の傍ら、子宮頸がん予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報を、メディア、企業研修、書籍、SNSなどを通して発信している。婦人科受診のハードルを下げるため2024年7月渋谷にInaba Clinic開院。

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