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外見の悩みに潜む「身体醜形症」とは 〜概要、リスク、原因、SNSの影響など〜
鏡に映った自分の顔を見て、「今日は肌の調子がよくないな」とテンションが下がる。
写真を撮ったあと、何度も拡大して自分の顔や体形を確認する。
SNSで他人の容姿を見て自分といつも比べてしまう――。
外見を気にすること自体は、きっと誰もが経験していることでしょう。一方で、外見について一日中考え、学校や仕事に行けなくなったり、人と会うことを避けたり、美容医療を受けても全然満足できない、などの「生活への大きな支障」を生じることもあります。
その背景には、「身体醜形症(body dysmorphic disorder:BDD)」という状態が隠れていることも。
身体醜形症(身体醜形障害とも呼ばれます)は、単なる「美容へのこだわり」や「自信のなさ」ではありません。本人は深い苦痛を抱えていても、周囲には悩みの大きさが伝わりにくく、適切な支援へたどり着きにくい「病気」なのです。
そこで、これまでの研究知見(文献1)をもとに、外見に悩むことと身体醜形症の違い、心と認知の仕組み、診断や治療についてわかりやすく解説していきます。本記事は前編として、概要、リスク、原因、SNSの影響などを説明します。のちほど公開する後編もぜひご覧ください。
身体醜形症とはどんな病気?

Photo:PIXTA
身体醜形症は、他者には分からない、あるいはごくわずかにしか見えない外見上の特徴を「重大な欠点」と認識して強くとらわれてしまう状態です。苦痛や日常生活への支障をきたす精神疾患とされています。現在は、強迫症(強迫性障害)と共通する性質を持つ「強迫症および関連症群」の一つに位置づけられています。
診断を考えるうえでは、外見へのとらわれに加えて、それに反応した反復的な行動や頭の中での行為があることが重要です。たとえば、
・鏡を何度も見る、もしくは反対に鏡を徹底して避ける
・写真を何度も撮り直す
・他人の顔や体と常に比較する
・化粧・服装・髪型で「欠点」を隠す
・家族やパートナーに「変ではないか」と何度も確認する
・美容施術について調べ続ける・施術を受け続ける
といった行動です。
気になる部位は、肌、髪、鼻、歯、輪郭など顔や頭の周辺が多いものの、体のほぼどこでも対象になり得ます。体形や左右差、乳房、傷あと、性器など、人に見せにくい部位が悩みになることもあります。
なお、体重や体形への懸念が中心となる摂食障害や、実際に確認できる身体疾患などとは、区別されます。一方で、「筋肉が足りず体が小さすぎる」という「筋肉への過剰な意識」を持つタイプもあります。
身体醜形症は珍しい?女性だけ?
文献1(2024年の系統的レビュー)によると、成人における有病割合は約2%とされています。別の研究報告(文献2)では、成人一般集団で1.9%、思春期で2.2%と推定され、美容外科にかかっている患者さんでは13.2%、皮膚科外来の患者さんでは11.3%とかなり高い傾向が示されました。ただし、調査方法や対象集団によって推定値は変動することに注意が必要です。

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また、発症は18歳未満が多く、若年層では女性に多い一方、成人になると大きな男女差はみられないとされています。つまり、「若い女性だけの問題」ではない、ということですね。男性では筋肉量や毛髪、性器などへのとらわれとして現れることもあり、性別を問わず関係しうるものなのです。
気をつけたい合併症や自傷リスク
身体醜形症では、
・抑うつ
・社交不安障害
・強迫症
・摂食障害
・薬物依存
などの併存も少なくありません。学校、仕事、友人関係、恋愛や性生活などに広く影響し、家から出られなくなる人もいます。つまり、「見た目を気にしすぎている」という表面的なものだけではない、生活全体に関わる病気と言えるのです。

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さらに見逃せないのが、自傷や自殺のリスクです。
スウェーデンの全国登録データベースを用い、身体醜形症のある2,833人と、年齢・性別などを対応させた対照群を比較した研究(文献3)では、身体醜形症のあるグループでは自傷と自殺のリスクがいずれも約3倍という高さでした。深刻な苦痛がそこには存在し、深く悩んでいる人が多いことがうかがえるデータです。
原因はなに?
身体醜形症の原因は、何か一つと決まっているわけではありません。遺伝的ななりやすさと環境要因が複雑に絡み合っていると考えられています(文献1)。
双子を対象にした研究では、身体醜形症に一定の遺伝的影響があると示唆されていますが、特定の遺伝子が明らかになっているわけではありません。
いじめや虐待・ネグレクトなどの逆境体験との関連も報告されていますが、研究の多くは観察研究であり、「その経験が身体醜形症を引き起こした」という因果関係までは断定できていません。
本人や家族の育て方のせいだと単純化しないようにしたいですね。

Photo:PIXTA
症状の仕組みとしては、次のような悪循環が考えられています。
1. まず、「鼻の形がおかしい」「肌が汚い」などの考えが頭に浮かび、恥ずかしさや不安が強くなる
2. そこで鏡を確認したり、他人と比較したり、欠点を隠したりする
3. 一時的には安心しても、「確認しないと不安」「隠さないと嫌われる」という考えがどんどん強まってしまい、再びその部位を確認したくなる
4. そして、人と会うことや明るい場所を避けていると、「恐れていること」が本当に起こるのか確証を得られないままずっと不安が続いてしまう
なぜ「欠点」ばかりが目に入る?心と視覚認知の仕組み
認知課題や視線追跡、脳画像を用いた研究からは、
・全体よりも細部へ注意が向きやすいこと
・自分が「魅力的でない」と考える部分に視線が偏ること
・他者の中立的な表情を怒りや嫌悪として受け取りやすい可能性
などが報告されています(文献1)。
脳画像研究でも、視覚処理や感情処理に関わる領域の活動・統合の違いが示唆されています。ただ、多くは少人数の成人を対象とした研究で、結果も研究間で必ずしも一致していません。
脳の働きの違いが原因なのか、症状が続いた結果そうなったのかも分かっておらず、「脳画像検査で診断できる病気」ではないことに注意が必要です。

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近年におけるSNSの影響とは
SNSとの関連についても懸念が強まっています。
加工された「綺麗」な画像や、現実離れしたような「理想像」ばかりをSNSで目にしていると、自分と「理想」の外見を比較することが増え続け、不安が強くなることは想像に難くありません。
実際、InstagramやSnapchatの利用時間と身体醜形症状との関連を示す研究も出てきています(文献1)。しかし、こちらも因果関係を断定するほどの確からしさではまだなく、もともと外見への不安が強い人ほど画像中心のSNSをたくさん使っているという可能性もあります。
とはいえ、SNSを見たあとに、もしくはSNSを毎日のように見ている中で、気分の落ち込みや「欠点」を確認する行動が増えてしまうようであれば、
・通知を切る
・外見の比較につながるようなアカウントや投稿から距離を置く
・撮った写真の加工や確認をする時間を無制限にしない
など、自分への影響を考慮して使い方を工夫することをぜひ検討してみてくださいね。

Photo:PIXTA
まとめ:できるだけ早く相談を
本記事では、身体醜形症について、概要、リスク、原因、SNSの影響などについて解説しました。あまりしっかり聞いたことのない情報だったかもしれませんが、いかがだったでしょうか。
この病気は、できるかぎり早く治療を始めることが重要です。ただ、必要な治療期間は人によって異なり、数年かけて治療していくケースも少なくありません。自分が悩んでいたり、周りにそのような人がいた場合には、ぜひ早めに精神科やメンタルクリニックへ相談してくださいね。
追って公開する後編も併せてお読みください。
参考文献
Rück C, et al. Nat Rev Dis Primers. 2024;10:92.
Veale D, et al. Body Image. 2016;18:168-186.
Rautio D, et al. Biol Psychiatry. 2024;96:868-875.
















