
避妊に応じない男性のみなさま
「コンドームつけてって何回言っても、流されてしまって…」と診察室で相談する女性の悲しそうな表情が忘れられません。

避妊に応じない男性は残念ながら珍しくない
女性自身は月経困難症治療のために低用量ピルを内服していて、基本的には排卵が抑制されているはずなので、避妊効果は期待できますが、なにごとも100%ではありません。今はまだ妊娠したら困るためできる限りの避妊をしておきたい、とその女性は思っており、彼氏にコンドームをつけるようちゃんと伝えていました。
しかし、彼は「ぜったいに中ではださないから大丈夫!」と取り合ってくれず、毎回コンドームをつけず、そしてある時、間に合わずに腟内で射精してしまい、女性は心配になってかかりつけの婦人科へ相談にきたのでした。
ふたりとも妊娠を望んでいないにもかかわらず、男性が避妊に応じてくれない、という相談は、実は珍しくありません。結婚しているご夫婦間でも同様のことがあります。
みんなそうなんだ、と安心するところではありません。望まない妊娠をなるべく防ぐためにちゃんとコンドームをつけている男性ももちろんおられます。ですので、「男性は~」と主語を大きくしてはいけないのですが、妊娠を望まないにもかかわらず避妊をしない男性が残念ながら珍しくないのが日本の現状です。
腟外射精は避妊法ではない
日本における避妊法は、なんと1位がコンドーム、2位が腟外射精です。
避妊法の確実性は、その避妊法で1年間あたり100人中何人の女性が妊娠するか、という「パール指数」で比較されます。パール指数が低い方が避妊の効果が高いわけですが、
一般的な使用(飲み忘れや失敗なども含む)の場合、経口避妊薬でもパール指数は7、コンドームは13、そして腟外射精はなんと20です。5人に1人が妊娠するなんて、もはや避妊法とは言い難く、実はコンドームも、本来は「性感染症予防」が主目的です。

表は国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター によるもの(世界保健機関ホームページ「 Family planning/Contraception method 」を一部改変して作成)。画像をタップすると拡大画像が表示されます。
最も避妊効果が高いのは子宮内避妊具ですが、だれでも装着できるわけではありません。
経口避妊薬で女性が自分の身を守りつつ、経口避妊薬も確実ではないため、コンドームも使用して性感染症を防ぎつつ、より確実に避妊する、というのが理想です。
ちなみに、避妊の話をすると「少子化が進む」という批判がきますが、少子化対策は妊娠を望んでいない女性にまで妊娠出産させることではありませんよね。
あくまで、「今は」妊娠を望まない人が避妊をする、ということであり、のちに妊娠を望むようになったら避妊法を中止すればよいのです。それはSRHR、からだの自己決定権を尊重していれば極めて自然なことです。
避妊してもらえない、という相談へのアドバイス
冒頭のような相談を受けた時に、産婦人科医であるわたしはどう答えるかというと、
まず、ピルを内服している方であれば今周期飲み忘れがないかどうかを確認して、飲み忘れがなければ大丈夫とお話(ピルの種類にもよりますので、主治医に確認が必要です)し、
ピルを内服していない方であれば緊急避妊薬について説明します。
そして、避妊に応じてくれないパートナーさんというのが、腟外射精のリスクを知らないだけなのか、楽観的なだけなのか、妊娠しても自分は困らないと思っているのか、想像力がないだけなのか無責任なのかは分かりませんが、
「万が一妊娠したら女性がどういう状況になるか、についての想像力と配慮がないよね、自分の体を大切にね、あなたの体を大切にしてくれない人は、今は付き合うだけならまだしも将来のこととなると、ねぇ、、」というお話をやんわりします。
「恋は盲目」と言われる通り、避妊しない理由でよくあがるのは「相手に嫌われたくないから」と男性に遠慮して避妊してほしいと言えない、言っても避妊してもらえない、があります。いろんな恋を経験するのはよいことですが、避妊に応じない男性というのは、とっても分かりやすく言い換えると「女性の体と人生よりも自分の快感を優先している」のです。