気になるキーワード 「産後の生理対策」 #3
産後の生理対策②:黄体ホルモン製剤 スリンダ|授乳中もOK、目的の見極めが大事
産後ママの相談でとても多いのが、「まだ次の妊娠は考えられないので、避妊も、生理も何とかしたいです」というご相談。そんな時に始めやすいのが黄体ホルモン製剤です。ここで言う黄体ホルモン製剤は、ざっくり2つに分かれます。
・避妊が主目的のミニピル(黄体ホルモン単剤の経口避妊薬、スリンダ)
・生理痛や子宮内膜症など治療が主目的の黄体ホルモン製剤(例:ジエノゲスト)
どちらも「黄体ホルモン系」ですが、目的も、期待できる効果も、注意点も別物。混乱しやすいポイントなので、今回はこれらを分けて解説します。
「エストロゲンが入っていない」ことの意味
一般に低用量ピルとしてイメージするのは、いわゆるLEP/OC(エストロゲン+黄体ホルモンの合剤)だと思います。
2つの女性ホルモンを含む合剤ピルに対して黄体ホルモン製剤、通称ミニピルは、エストロゲンが含まれません。この違い、産後ママにとってかなり重要です。
というのも、産後しばらくの間は、妊娠・出産の影響で血栓症(血のかたまり)のリスクが上がる時期で、静脈血栓症は妊産婦の死亡原因の上位になっているほどです。エストロゲンはそのリスクに関わるため、産後すぐの合剤ピルは禁忌または慎重投与が必要になります。
逆に、黄体ホルモン単剤(ミニピルなど)は、授乳中や産後早期でも使えます。WHOや米CDCの基準でも、授乳中で産後6週未満でも、黄体ホルモン単剤の飲み薬(POP)はおおむね使用可能とされていて、産後6週以降は制限なく使用できます。
授乳中もOKな黄体ホルモン剤、スリンダを解説
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Photo:PIXTA
スリンダってどんな薬?
スリンダは、有効成分ドロスピレノンのみを含むプロゲスチン単剤の経口避妊薬で、2025年6月に国内で発売された、日本初の「ミニピル」です。
排卵を止める+内膜を薄くする、ダブルの仕組み
スリンダは、主に3つの作用によって避妊効果を発揮します。
排卵の抑制
脳からの排卵の指令(LHサージ)を抑え、そもそも卵子が出てこないようにする
子宮内膜を薄くする
赤ちゃんのベッドとなる子宮内膜を薄い状態に保ち、万が一受精しても着床しにくくする
頸管粘液の変化
子宮の入り口の粘液を変化させ、精子が入りにくい状態をつくる
こうした複数の仕組みが重なることで、高い避妊効果が確認されています。
結果として、生理の出血量が減ったり、休薬期間中の出血が少なくなったりする方もいます。ただし、スリンダはあくまで「避妊薬」。薬や診療代は自費になりますが、妊娠前に合剤ピルで生理をコントロールする楽さに慣れている人は、産後の早い時期から飲み始められ、抵抗なくスタートできると思います。
育児中にスリンダがおすすめな理由は?
スリンダが産後のママに向いている理由はいくつかあります。

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1)血栓症のリスクが低いのが、産後の体にやさしい最大のメリット
産後は、妊娠・出産の影響でそもそも血栓症のリスクが高くなっている時期。スリンダはエストロゲンを含まないため、血栓症の心配が従来のピルに比べて格段に小さいとされています。これは産後のお母さんにとって、とても大きな安心材料です。
2)授乳中でも使える可能性がある
スリンダはプロゲスチンのみの製剤のため、母乳の量や質に影響を与えにくいとされています。
3)従来のピルが使えなかった人の選択肢としても
35歳以上で喫煙している方、肥満や高血圧のある方、前兆を伴う片頭痛がある方など、従来の低用量ピルでは禁忌とされていた条件に当てはまる方でも、スリンダは服用を検討できます。40歳以降、閉経まで長く使い続けられる可能性があるのもメリットです。
4)偽薬が含まれているので、内服リズムが保ちやすい
スリンダは実薬24錠+偽薬4錠の28日周期で設計されています。休薬期間中も偽薬を飲み続ける仕組みなので、「飲まない日」を作らずに済むことで、毎日の内服リズムを保ちやすいです。

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ミレーナとの違いは?|「毎日飲む手間」と「避妊専用」がポイント
ミレーナは一度装着すれば「自動運転」ですが、スリンダは毎日ほぼ同じ時間に内服する必要があります。飲み忘れが24時間以上あると避妊効果が低下し、その後7日間は他の避妊法の併用が必要になります。
赤ちゃんの夜泣きや授乳で生活リズムが乱れやすい育児中に、毎日同じ時間の服薬を守り続けるのは、正直なかなかのハードルかもしれません。
また、スリンダは避妊のみの適応であり、ミレーナのように、過多月経や月経困難症の治療としては使えません。つまり、保険がきかないため、後述するように費用面でも違いが出てきます。
ですが、子宮に器具を入れるのに抵抗がある方や、挿入の処置に通院する時間が取りにくいという方にとっては、内服薬であるスリンダのほうが始めやすいという面もあるでしょう。
いつから飲み始められる?|産後すぐからスタートできるのが強み
スリンダはエストロゲンを含まないため、血栓リスクの観点から産後すぐ(理論上は分娩直後)から開始することも可能とされています。この点は、産後6週間の子宮回復を待ってから装着する必要があるミレーナとは大きく異なるメリットです。
ただし、実際の開始時期については、産後の体の回復状態や授乳の状況を踏まえて医師と相談してください。多くの医療機関では、産後6週頃の1カ月検診のタイミングで処方を開始するケースが一般的です。
費用は?保険は使える?|避妊目的のため自費のみ
スリンダは避妊のみの適応であるため、保険は適用されません。全額自費となります。
費用の目安は、1シート(28日分)あたり3,000円〜4,000円程度。これに初診料や再診料が別途かかります。
ミレーナは治療目的(過多月経・月経困難症)であれば保険適用で約13,000円で済み、その後の定期健診が数千円程度なのに対し、スリンダは毎月自費で薬代がかかり続ける点は、コスト面での大きな違いです。年間にすると4万円〜5万円程度になるため、費用は事前にチェックしておきたいところです。

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注意点とリスク|最初の数カ月は「不正出血」が起きやすい
スリンダも万能ではありません。服用開始後の数カ月間は、不正出血を経験する方が3〜5割程度いるとされています。多くの場合は使い続けるうちに落ち着いていきますが、育児中のストレスに加えて下着が汚れる不快感が重なるのはつらいものです。
また、育児中のママには「一定の時刻に毎日飲む」が意外と難しいこと。スリンダには1日1回、毎日なるべく同じ時間に飲む必要があります。避妊効果に影響する可能性があるため、最低でも12時間以上のずれがないように内服します。
赤ちゃんのスケジュールに合わせて生活をしていると、同じ時間に飲むのを忘れてしまいがちなので、アラーム機能やリマインダーアプリを活用するなどして、飲み忘れのないようにしておきましょう。
スリンダまとめ|向いている人、いない人
スリンダが特に向いているのは、以下のような方です。
・避妊が最優先で、内服薬で対応したい
・従来の低用量ピルが使えない体質(喫煙、肥満、高血圧、片頭痛など)
・授乳中だけど、飲み薬で避妊を始めたい
・子宮に器具を入れるのは避けたい
逆に、以下のような方は他の選択肢を先に検討するほうが良いかもしれません。
・毎日ほぼ同じ時間に飲み続ける自信がない
・生理痛や内膜症の「治療」が主な目的(スリンダは避妊薬であり、治療の適応はない)
・費用を抑えたい(スリンダは自費のみ、月3,000〜4,000円程度)
イメージできてきたでしょうか。避妊よりも、産後に再燃した生理痛や内膜症・腺筋症の症状をなんとかしたい、という方には、治療を目的とした別の選択肢もあります。
次の記事では、ジエノゲストについて解説します。
→【ジエノゲストについての解説を読む】(明日公開予定)
この記事は4回連載の3回目です。
→ 総論 産後の生理が戻ってくるタイミングや注意点とは?(一昨日の記事)
→【ミレーナ】飲み忘れしにくい・避妊と治療を同時に(昨日の記事)
→【スリンダ】産後早めに飲める国内初のミニピル(この記事)
→【ジエノゲスト】生理痛・内膜症の治療に特化した保険適用の治療薬(明日公開予定)
<参考文献>
バイエル薬品 ミレーナ使用の手引き
あすか製薬 スリンダ 添付文書
持田製薬 ジエノゲスト 患者向医薬品ガイド
UKMEC 2025(College of Sexual and Reproductive Healthcare)英国の避妊適応基準
















