
生理中にプールに入るとどうなるの?本当に水圧で経血は出にくいの?体調面や感染症のリスクは?【産婦人科医が解説】
生理が中でもプールに入りたいけれど、経血が漏れないか、体調が悪化しないかなど、不安を抱えている方は多いはず。友達や家族との楽しい予定と重なってしまったら、なおさらどうしたらいいのか悩ましいもの。逆に、生理中なのに学校のプールの授業を休ませてもらえないというケースもあるそうです。
「生理中にプールに入るとどうなるの?」「本当に水圧で経血は出にくいの?」「もし漏れたら?」「体調面や感染症のリスクは?」など、気になる疑問は人それぞれです。自分の体調や気持ちに合った過ごし方を選び、無理なくプールを楽しむための参考にしてみてくださいね。
生理中にプールに入るのはアリ?
生理中のプール、ためらう人も多いと思います。体育の時に生理を理由に授業を休んで、からかわれた記憶のある人もいるのでは…もちろん、生理を理由にプールの授業を休むことは全然問題ありません。でも、入りたい人も「生理中でも十分に対策をとればプールに入ることは可能」です。
ただし、個人の体調や感じ方によっては控えたほうがいい場合もあるため、自分の身体と相談しながら判断しましょう。本記事では、生理中のプールについて解説していきます。
ポイントは、「経血の流出対策」と「体調」
実は改めて調べてみると、文部科学省が出している学習指導要領や水泳指導の手引には、生理中の水泳について、技術的な指導の内容はありますが、月経中の水泳の是非や指導について、いいとも悪いともはっきりと書かれてはいないのです。
一方、日本産科婦人科学会は、1989年に医学的には問題ない、ただし、水泳そのものやタンポンの装着を強要することは避けるべき、という内容の「月経期間中のスポーツ活動に関する指針」を出しています。
やはり大切になるのは、経血が漏れてプールサイドやプールの床を汚したりしないようにするということと、本人の生理中の体調です。生理痛でお腹や腰に痛みがあったり、体調がすぐれないようなら、無理をしてプールに入るべきではありません。

タンポンを使用すれば問題ない
生理中にプールへ入る場合、一番メジャーなのは「タンポン」を使用するという方法です。タンポンは膣内に挿入して経血を吸収するタイプの生理用品です。
水着に血液が染みるのを防ぐ効果
一般的なナプキンとは違い、タンポンは体内で直接経血を吸収するため、プールなど水泳の際に血液が漏れるリスクを低く抑えられます。
衛生的にも比較的安心
タンポンは正しく装着すれば長時間使用できますが、適切な使用時間(4~8時間を目安)を超えないように注意が必要です。これは、長時間の使用による細菌繁殖のリスクを避けるためです。長時間使用が推奨されないのは、レアなケースですが「トキシックショック症候群(TSS)」という重症感染症を予防する観点からも大切だとされています。
水圧で経血は出ては来ない。ポイントは水からあがる時
タンポンをしなくても、プールの水圧によって、泳いでいる間は経血は外に流れ出にくいとよくいわれます。実際、水の圧力によって排出される量は減りやすいとされていますが、絶対にでないというわけではありません。
泳いでいる間はさほど気にならなくても、プールから上がる時には注意を
立ち上がったり、水面上に出たりすると水圧の変化が生じ、経血がドバッと外に出てくる可能性があります。そのため、何らかの生理用品でカバーするか、素早くタオルを巻くなどの対策が必要です。
不安がある場合は入水を控えるという選択肢も
もし水着から経血がもれてしまうことが心配であれば、プールに入るのを控える方もいらっしゃいます。「絶対に泳がなければならない」という状況でない場合は、無理をしない選択も大切です。
タンポン使用時の注意点
プールに入る際にタンポンを使用するなら、以下のポイントに気をつけましょう。
1.十分に吸収できるタンポンでプールに入る
吸水できる状態のタンポンで入りましょう。できればプールに入る直前に新しいタンポンに交換しておくと、経血の吸収力が十分にある状態からスタートできるため、漏れを防ぎやすくなります。
2.長時間つけっぱなしは避ける
タンポンは4〜8時間程度が一般的な装着時間の目安ですが、水泳などの運動をしているときは汗や水分で体調も変わりやすいです。プールから上がったら早めに取り替えるのがおすすめです。
3.挿入の深さを正しくチェック
タンポンの先端が浅いと違和感を覚えたり、漏れやすくなったりします。正しい位置に入ればタンポンは違和感なく使用できますが、違和感がある場合は挿入が浅い可能性もあるので、一度抜いて新しいものを正しく装着し直しましょう。

タンポン以外にできる漏れ対策は?
最近ではタンポン以外にも、さまざまな生理用品が開発され、普及してきています。タンポンに抵抗がある方でも対策を取りやすい選択肢が増えているのは嬉しいことですね。自分で膣内に挿入する必要があるので、タンポンが苦手、痛みがある、あるいは挿入に抵抗があるといった方も少なくないと思います。
月経カップ
月経カップとは、医療用シリコーンなどで作られたカップ状の生理用品で、膣内に挿入して経血をためる仕組みになっています。正しく装着できれば漏れにくく、装着時の違和感も少ないうえ、膣の外に出るヒモもありません。繰り返し洗浄・消毒して使えるため、環境にも優しく経済的であると人気となり、色々なメーカーのものが日本でも販売されるようになってきました。
タンポンと同じく、装着している間は経血が外に出にくいためプールでも使用できます。
ただ、細い形状で、ものによってはアプリケーターで挿入できるタンポンと違い、医療用シリコーンでできたカップを折りたたみ、自力で挿入する必要があるので、挿入・取り出しのハードルはタンポンよりも高めで、慣れるまでは少し練習が必要です。
また、長時間使う場合は定期的に取り外して洗浄が必要なので、たまった経血を捨てて水洗いする必要があります。
吸水ショーツ
吸水ショーツとは、生理用ナプキンを使わなくてもショーツ自体が経血を吸収してくれる製品です。普段のショーツと同じように履くだけなので、着脱が簡単。こちらも近年のフェムテックブームでユニクロやGUから発売されるなど、生理用品としての市民権を得てきました。多層構造で漏れを防ぎ、洗って繰り返し使えるのが特徴です。
一般的な吸水ショーツは、水泳向けに作られていないことがほとんどですが、最近では、水着用のインナーショーツに、吸水機能がついたものも出てきました。経血がそれほど多くなければ、インナーショーツをサニタリー製品にすることで安心できるかと思います。
感染症のリスクは?医師が解説
プールに入るとき、特に生理中は感染症のリスクが気になる方もいるでしょう。プールは多くの人が利用する公共の場所ですので、一定の衛生管理がされています。
1.プールの水を介した感染
プールの水は塩素などで消毒されていますが、完全に無菌ではありません。プール利用者が多いほど、不特定多数の人が水に入り、微量ながら排泄物や皮膚の細菌などが混入する可能性は否定できません。ただし、塩素濃度など厚生労働省の示す遊泳プールの衛生基準を遵守していれば、通常は細菌やウイルスの増殖を抑えられるとされています。このため、水質管理の行き届いたプールであれば大きなリスクは低いと考えられます。それよりも、タンポンを長時間替えずにいる場合など、利用者自身の不適切な使い方が原因で細菌が増殖しやすくなるケースのほうが問題になりやすいと思われます。
2.他の利用者が感染するリスク
経血がでている状態で入水することを考えると、血液や体液を介して感染する病気を心配する人もいるかもしれません。生理の経血が原因で他人に感染症をうつすリスクは、塩素消毒による抑制効果も含めて極めて低いと考えられており、各種性感染症についても同様と考えられています。しかし、生理中に限らず、体調不良時(発熱や下痢症状がある場合)にはプールを避ける配慮が必要です。
実際のところ、プールでの感染症リスクは生理の有無にかかわらず「極端に高いわけではない」とされています。厚生労働省が示すプールの衛生管理基準を満たしていないなどのケースは別として、多くの公営・民営プールはルールを守って管理されているため、過度に心配する必要はありません。
生理中にプールに入る場合気をつけること
施設側のルールに従う
プールによっては、生理中の入水に対して特別なルールを定めている施設があります。また、生理用品の処理に関するルールなどが掲示されている場合もありますので、施設の利用規約や注意事項をしっかり確認し、周囲に迷惑がかからないよう配慮しましょう。
否定派の意見もある事を知る
生理中にプールに入ることをめぐっては、否定的な意見を持つ方もいらっしゃいます。例えば「万が一経血が漏れると周りに迷惑をかけるかもしれない」「そもそも生理中は体調が悪くなることが多く、プールは負担が大きい」などの理由です。
生理の話題は人によって受け止め方が違いますし、プールに関する衛生概念は個人差があります。否定的な意見があることも踏まえつつ、最終的には自分の体調や状況に合わせた判断をしましょう。
体調に合わせルールやマナーを守って楽しい思い出を
生理中のプール利用は、正しい生理用品の使い方や施設のルールを守ることで可能となります。大切なのは、自分の体調と気持ちに合った選択をすることです。
生理痛や体調がつらいときは無理をしない
生理中はホルモンバランスの変動によって、体調や気分が普段よりも不安定になりやすい時期です。無理に泳ぐことで疲れがたまり、かえって体調を崩すケースも考えられます。休むことも立派な選択肢のひとつです。
個人の判断を尊重する
周囲に「生理でも全然平気だから行こうよ」と言われても、自身が不安に感じるなら遠慮なく断って構いません。逆に、「水着から漏れるかも」という不安があっても、しっかり対策をとれば大きな問題は起きにくいという事実もあります。
マナーとルールの範囲で安心して楽しむ
プール管理者の示す利用規定を守り、万が一の漏れがあった時には素早く対処するなど、基本的なマナーを心がけましょう。
生理中であっても、上手に対処すればプールを楽しむことは十分に可能です。体調を優先し、周囲への配慮もしながら、水泳を通じてリフレッシュできるといいですね。
【参考文献・情報源】
一般社団法人 日本衛生材料工業連合会HP トキシックショック症候群について
月経期間中のスポーツ活動に関する指針
厚生労働省 遊泳用プールの衛生基準について
学校医と養護教諭のための思春期婦人科相談マニュアル p.29