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ドラマ『ファーストクライ』解説シリーズ #2

産婦人科専門医と周産期専門医の違いとは?資格の仕組みと医療機関の選び方を解説!

出産 分娩 帝王切開

医師のプロフィールに、「産婦人科専門医」「母体・胎児専門医」「新生児専門医」といった資格名が並んでいるのを目にすることがあるかと思います。

いずれも妊娠・出産や女性・赤ちゃんの健康に関わる医師であることは何となくわかっても、「どんな資格なのか」「専門医のある・なしで違いはあるのか」「普通の妊婦健診でも関係があるのか」は、わかりにくいかもしれません。

今回は、医療監修として携わっている医師の目線で、2026年7月期のドラマ『ファーストクライ 母子救命救急班』の「母子救命」にも関係する「産婦人科専門医と妊娠・出産の上位資格」について解説します。

「専門医」とは何を意味するのか

専門医とは、ある診療領域について、科学的根拠に基づいた標準的な診断・治療を行う能力を身につけた医師のことを指します。医師免許があれば医療行為はできますが、専門医はその後さらに、決められた研修施設で経験を積み、指導医のもとで診療・手技・判断力を磨き、認定試験を受けたうえで取得が可能となります。

ガッツポーズをする男女の医師
Photo:PIXTA

専門医とは決して「超人的なスキル」を持つ特別な医師ではありません。日本専門医機構(専門医の認定や質の保証を行う第三者機関)の説明でも、専門医は各診療科で標準的かつ適切な医療を提供できる医師とされています。

また、専門医資格は一度取得して終わりではなく、原則として一定期間ごとに更新審査が設けられています診療実績や講習の受講などを通じて、継続的に知識と技能をアップデートし続けることが求められているのです。

この仕組みは、患者さんにとっても「どの医師がどの領域を専門としているのか」を知る上で役立ちますよね。

ただし、専門医資格だけで医師の全てが決まるわけではありません。診療の丁寧さ、説明のわかりやすさ、チーム医療の体制、病院全体の設備、必要時に高次医療機関へつなげる判断力なども、安心して医療を受ける上でとても重要にはなりますが、これらは通常、「専門医資格」の要件には含まれていないのです。

産婦人科専門医とは?

「産婦人科専門医」は、産婦人科領域を幅広く診療する医師です。

産婦人科が扱う4つの専門分野

産婦人科というと「妊娠・出産を扱う科」というイメージが強いかもしれませんが、実際にはそれだけではありません。産婦人科の専門分野は、大きく以下の4つに分けられます。

・妊娠・分娩・産後を扱う「周産期」
・子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がんなどを扱う「婦人科腫瘍」
・不妊症を扱う「生殖・内分泌」
・思春期から更年期・老年期までの健康管理を担う「女性ヘルスケア」

このように、産婦人科は非常に幅広い領域をカバーしています。

つまり「産婦人科専門医」とは、妊婦健診や出産だけでなく、生理のトラブル(痛みや不順)、不正出血、性感染症、避妊、妊活・不妊治療、更年期症状、そしてがん検診まで、女性のライフステージごとに変化する体のお悩みや病気に総合的に対応する専門医なのです。

医師、助産師、看護師などさまざまな医療従事者のイラスト
Photo:PIXTA

それぞれの分野には、さらに高い専門性を持つスペシャリスト(より上位の専門資格を持つ医師)も存在します。そのため、基本となる産婦人科専門医は「女性の体のあらゆるトラブルに対して、標準的で確かな診療を提供できる最初の相談窓口」の役割を担っていると言えますね。

例えば「生理痛が重い」「妊娠したかもしれない」「子宮頸がん検診で異常を指摘された」「妊活を始めたが妊娠できない」「更年期かもしれない」といった場合には、まず産婦人科専門医へ相談いただくことが大切です。

その後、必要に応じて、婦人科腫瘍専門医、生殖医療専門医、女性ヘルスケア専門医、周産期専門医など、より専門性の高い資格を有する医師やその施設へ紹介されることもあります。

マジックで「スペシャリスト」と書いたメモ
Photo:PIXTA

なお、「産婦人科専門医」という資格は、もともとは日本産科婦人科学会(公益社団法人)が管轄していましたが、2021年度以降は学会が認定する専門医の更新制度はなくなり、日本専門医機構が認定する専門医(「日本専門医機構認定 産婦人科専門医」と呼ばれます)のみに一本化されました。

*ちなみに、私自身は「公衆衛生学」を大学院で学び、「女性の健康 × 社会課題」を活動の軸にしています。公衆衛生という分野は産婦人科における既存の専門性には含まれておらず、私のような産婦人科医はまだ少ないですが、
「子宮頸がん予防のためのHPVワクチン接種率が海外に比べて低い」
「思春期世代において包括的な性教育が十分に浸透していない」
「産後1カ月以降における産後うつ状態の女性をどう早期に発見し支援するか」
など、産婦人科に関する社会課題はたくさんあり、これらを改善するべくさまざまな活動をしています。

周産期専門医とは?

ガーゼにくるまれた赤ちゃんのぬいぐるみ
Photo:PIXTA

「周産期」とは、妊娠22週から出生後7日未満までの期間を指します。この時期は、母体・胎児・新生児の状態が急に変化することがあり、母体の救命、新生児の集中治療、胎児の評価、早産への対応など、産科医療と新生児医療が密接に連携する必要があります。

「周産期専門医」は、この周産期医療に関する高度な知識と経験を持つ医師です。
日本周産期・新生児医学会では、周産期専門医制度として「母体・胎児専門医」と「新生児専門医」の2つを設けています。

周産期の専門分野「母体と胎児/新生児」

母体・胎児専門医

主に産婦人科医に関係するもので、妊娠高血圧症候群、切迫早産、前置胎盤、胎児発育不全、多胎妊娠、合併症妊娠、胎児疾患など、妊娠中の母体と胎児のリスク評価・管理を専門的に行います。

新生児専門医

主に小児科医に関係するもので、早産児、低出生体重児、呼吸障害、感染症、先天性疾患など、出生直後の赤ちゃんの集中治療や発達支援に関わります。

ここで注意したいのは、「周産期専門医が全ての妊娠出産に関わる必要がある」わけではない、ということです。

経過が順調な多くの妊娠・出産は、各地域の産科医療機関で問題なく管理できます。一方で、母体や赤ちゃんに一定以上のリスクがある場合、あるいは分娩中や出生後に高度な治療・管理が必要になる可能性がある場合には、周産期専門医や周産期母子医療センターが重要な役割を果たすことになるのです。

どの専門医がいる医療機関を選ぶと良いか

「TIPS」と書かれたメモと電卓、ペンが置かれたデスク
Photo:PIXTA

妊娠・出産に関する医療機関を選ぶときは、どのようなことを考えると良いのでしょうか。

産婦人科医の視点では、

・自分の妊娠におけるリスク状態(持病や年齢、過去の治療・出産歴など)
・通院のしやすさ
・緊急時の対応
・無痛分娩の有無
・新生児集中治療室の有無
・母体搬送の体制
・説明の丁寧さ

などを総合的に考慮していただきたいと思っています。

持病をお持ちの方、過去の妊娠でトラブルを経験された方、双子や三つ子を妊娠中の方、あるいは赤ちゃんの体について気になる点を指摘されている方などは、妊娠の早い段階から「この施設でどこまで対応できるのか」「万が一のときはどこへ紹介されるのか」を確認しておくと安心です。

状況によっては、お母さんと赤ちゃんの双方に高度な医療を提供できる「母体・胎児専門医」「新生児専門医」が在籍する、大きな医療機関(総合病院や大学病院など)へご紹介となることもあります。

最初はリスクが低いと考えられていた方であっても、妊娠の経過とともに状況が急変することは珍しくありません。

思い描いていた理想のマタニティライフや出産プランとは違う形になりそうなとき、悲しい気持ちや、やりきれない不安を感じることもあるかと思います。しかし、それは何よりも「お母さんと赤ちゃんの命、そしてこれからの健康」を最優先に守るためのベストな選択のはずです。ぜひ担当医や医療チームを信頼し、一緒に乗り越えていただければと思います。

まとめ

「産婦人科専門医」は、女性の生涯にわたる健康をトータルに支える医師であり、中でも「母体・胎児専門医」は、妊娠・出産、そしてお腹の中の赤ちゃんのケアを専門とするスペシャリストのことなんですね。

新ドラマ「ファーストクライ」では、どのような医師が登場するのでしょうか。ドラマを最大限楽しむために、本記事がお役に立てれば嬉しいです。

重見大介

この記事の執筆医師

産婦人科オンライン代表

重見大介先生

産婦人科

産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。産婦人科領域の臨床疫学研究に取り組みながら、遠隔健康医療相談「産婦人科オンライン」代表を務め、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りに従事している。他に、HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんに関する啓発活動や、各種メディア(SNS、ニュースレター、Yahoo!ニュースエキスパート)などで積極的な医療情報の発信をしている。

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