山田ノジルのドラマレビュー #3 『ファーストクライ』第3話
【レビュー】荷物は本当に分け合えるのか。「実家ガチャ」が左右する子育ての残酷さ
ドラマ『ファーストクライ』第3話。今回特に印象的だったのは、ヤングケアラーである高校生妊婦のエピソードでした。
認知症の母から暴言や暴力を受けており、「自分も子どもに同じことをしてしまうのではないか」という強い恐怖から、まるで流産を望むかのような行動をとってしまう……。なんとも心が痛む展開です。
発症前はとても仲の良い親子だったという描写もあり、ドラマにありがちな「幼少期からの過酷な虐待」という話ではなかったことに、一瞬だけ「まだマシだったのか……?」と安堵(あんど)しかけました。
ですが、もちろんそんな単純な話ではありません。
病気であれ性格であれ、親が安心できる存在でなくなった時、その関係性は明確に「機能不全」を起こします。
一般的に「毒親」の文脈で語られるケースも、介護の負荷や認知症による暴言暴力も、根底にある問題の構造は同じです。
つまり、『本来守られるべき子どもが、家庭内で逃げ場を失う』ということ。その結果、子どもは強い精神的負荷やトラウマを背負い、「自分も健全な家庭を築けないのではないか」「親になるのが怖い」と怯えるようになる……。まさに、現実のあちこちに転がっている残酷な光景です。
Photo:PIXTA
そういえば私も妊娠中、似たような「拒絶の現場」に出くわしたことを思い出しました。
とあるイベントの打ち上げでのこと。
大の酒好きであるはずの私が珍しくお茶を飲んでいたのを、周囲に目ざとく突っ込まれました。「妊娠している」と明かした瞬間、右隣に座っていた知人女性から怒涛(どとう)の拒否反応が繰り出されました。
「私は絶対に子どもなんて作らない! 産むなんて考えたくもない! 一生産まない!!」
……お、おう。突然どうした……。 後日、彼女のSNSを通して壮絶な家庭環境だったことを知り、「そういうことだったのか」と合点がいくわけですが、当時の現場はなかなかのカオスでした。
さらに、左隣に座っていた友人(すでに泥酔)は、
「えっ、妊娠!? 自然!? 自然妊娠!? 不妊治療!? どこの病院!?」
と、遠慮のない質問攻め。さらに正面に座っていた「人怖現場」に慣れきった男性は、そのやりとりをアルカイックスマイルで眺めていました。
いや、もしかしたら無関心から、何も聞いていなかっただけかもしれませんが。
さて、この訳のわからない居酒屋の光景は、笑い話のようでありながら、実はとても根深い問題を突きつけています。知人女性の抱いていた「絶対に親になりたくない」という強烈な拒絶。それこそが、機能不全家族で育った人が直面する「精神的な痛み」のリアルです。
ドラマ『ファーストクライ』第3話では、そんな重い痛みを抱える彼女に対し、「みんなでチームになって、少しずつ荷物を分散して抱え直そう」という温かい解決策が示されました。医療従事者や周囲が手を取り合い、追い詰められた妊婦の負担を分け合う姿勢には、確かに救いを感じます。
Photo:PIXTA
……だが、ちょっと待ったあ…。
画面から一歩外の現実に目を向けたとき、「荷物を分け合える相手」は本当に身近にいるでしょうか。日本の育児や産後サポートの多くは、今なお「実家(特に祖父母)の援助」が得られることを暗黙の前提に設計されています。
しかし、家庭環境に問題を抱える人にとって、実家は安全基地どころか危険地帯です。頼るどころか、距離を置くことこそが自分と子どもを守る防壁になることは、さまざまな話を取材している中でも感じる部分です。
そうなると、結局のところ「実家の太さ(資産・体力・良好な関係性)」が子育てのQOLや親のメンタルを決定づけてしまう。いわゆる「実家ガチャ」の残酷な現実が立ちはだかります。
Photo:PIXTA
「行政や公的支援に頼ればいい」という声も聞こえてきそうですが、リアルな行政サポートは利用条件が厳しかったり、日数が細切れだったりと、到底「荷物を分け合えている」と言えるほどの量ではありません。
民間サービスをフル活用しようにも高額な費用がかかり、経済的な負担が重くのしかかります。
精神論や血縁頼みの「家庭の自己責任」で放置されてきたツケを、これ以上、親だけに払わせるわけにはいきません。ドラマが提示してくれた「荷物を分担する」という温かな理想を単なる綺麗ごとで終わらせないために。
実家という安全網を持たない人でも安心して親になれるような、血縁に依存しない実効性のある公的インフラが、今まさに求められているのではないでしょうか。
ドラマの展開にも、だんだんと政治臭が漂ってきましたね。残酷な現状を解決してくれる、画期的な展開を見られるのか⁉
皆さまご一緒に、次回も放映待機しましょう。
第4話の視聴リンクはこちら。
山田ノジル
フリーライター。女性誌のライターとして美容健康情報を長年取材してきたなかで出会った、科学的根拠のない怪しげな言説に注目。怪しげなものにハマった体験談を中心に、取材・連載を続けている。著書『呪われ女子に、なっていませんか? 本当は恐ろしい子宮系スピリチュアル』(KKベストセラーズ)ほか、マンガ原作や編集協力など多数の作品がある。 X:@YamadaNojiru
















