1回の性行為で妊娠する確率がどのくらいなのか、知っていますか?
「避妊をしなかったのは1回だけだったけど、妊娠するのかな……?」
「赤ちゃんがほしいけど、1回で妊娠する確率はどのくらい?」
同じような疑問でも、その背景によって気持ちはさまざまでしょう。
実際のところ、1回の性行為でも妊娠は起こり得ます。私もそういう妊婦さんをこれまでに何人もみてきました。ただし、「何%の確率で妊娠する」と言い切れるような、明確な法則や数値があるわけではありません。
本記事では、避妊をせず腟内に射精があった場合を想定し、データ上の数字の意味と、知っておきたい知識・対応をお伝えします。性別にかかわらず、ぜひ知っておいてほしい内容です。
1回で妊娠する確率:研究データの紹介
では早速、これまでの研究データを紹介していきましょう。
過去に、妊娠を希望する健康な女性221人を追跡した米国の研究があります。この研究では、毎日の性行為の記録と尿検査から、排卵と性行為のタイミング、妊娠の成立との関係を調べました。

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その結果、性行為が推定排卵日の5日前だった場合の妊娠確率は約10%、推定排卵日の2日前から急に確率が上がり、「排卵日2日前〜当日」では約33%と推定されました。(文献1)
ただし、これは「いつ性行為をしても、1回につき10〜33%で妊娠する」という意味ではありません。排卵のタイミングによって確率は変動しますし、「健康な女性」の定義も厳密に決めるのは難しいところです。もちろん、避妊をしていれば確率は下がります。
また、この研究では、尿中のhCG※というホルモンを測って、ごく早期の妊娠も捉えています。妊娠反応が出た後に自然流産してしまう場合も含まれるため、出産に至る確率とは異なります。
「1回の性行為でもそこそこ妊娠する可能性はある。ただし、実際に自分の性行為における妊娠確率を正確に計算することは誰にもできない」というのが正直なところです。
※ 受精卵が着床すると分泌され始めるホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)。市販の妊娠検査薬もこれを検出しており、尿中の濃度を調べることで、ごく早期の妊娠も捉えることができます。
なぜタイミングで変わるの?「妊娠しやすい期間」の仕組みとは

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妊娠に至るには、排卵された卵子と精子が出会って受精し、その後、受精卵が子宮内膜に着床する必要があります。性行為をしたその場で、妊娠が成立するわけではありません。
精子は女性の体内で数日間、受精する力を保つことがあります。そのため、排卵の数日前の性行為でも、後から排卵された卵子と出会えるのです。先ほどの研究では、妊娠につながった性行為は、推定排卵日の5日前から当日までの6日間に集中していました。(文献1)
ここで、「排卵日がわかれば、それ以外の日は妊娠することはない」と考えるのは危険です。別の研究では、普段の月経が規則的な女性でも、妊娠しやすい期間のタイミング(月経から何日目か)は変動していたことが示されています。(文献2)
月経の記録やアプリでの予測は、自分の体の変化を知るために役立ちますが、カレンダー上の予測だけで排卵日を確実に予測することはできません。今すぐ妊娠を望んでいない場合は、「生理中だから」「予定の排卵日を過ぎたから」という理由だけで、妊娠しないだろう(=避妊しなくてもいいだろう)とは考えないでくださいね。
「1回」「1周期」「1年間」での確率を正しく理解しよう

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検索などで出てきた「妊娠率」は、何を数えた数字なのかをきちんと確認する必要があります。例えば「1回の性行為で妊娠する確率」と、複数回の性行為も想定される「1回の月経周期で妊娠する確率」は、同じではありません。
さらに、コンドームやピルなどの避妊法の効果は、「その避妊方法を1年間使った女性100人のうち、何人が妊娠したか」(これを「パール指数」と呼びます)で示されることが多いです。
<各避妊法のパール指数:正しい使用法を守った場合と一般的な使用法の場合>
・経口避妊薬:0.3(一般的な使用では7)
・男性用コンドーム:2(一般的な使用では13)
・腟外射精:4(一般的な使用では20)
上記の通り、毎回正しく使い続けた場合と、飲み忘れや使い方の間違いなどを含む一般的な使用とでは、妊娠率がだいぶ違っていることがわかりますね。(文献3)
例えば「1年間の妊娠率が○%」という数字を、「性行為1回につき○%」と解釈することはできません。また、「1回で10%なら、10回で必ず妊娠する」という足し算もできません。
数字を見るときには、対象者、避妊の有無、観察した期間をセットで確認しましょう。研究の平均値は、自分の体にそのまま当てはめられる数値ではない、ということですね。
*以前の記事もぜひ参考にしてください。
コンドームを使っていても妊娠してしまうことがあるのはなぜ? 理由と対策を深掘り解説
「外に出した」「今までは妊娠しなかった」は安心材料になる?

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「腟の外に射精すれば妊娠しない」と思っている方もいるかもしれません。しかし、腟外射精では、射精のタイミングに合わせて確実に抜くことが難しいことも多いです。また、射精前に出る分泌液に、精子が含まれている可能性もあります。さきほどのパール指数でも、腟外射精は一般的な使用で20。100人が1年間続ければ20人が妊娠する計算です。(文献3, 4)
そのため、「外に出したから妊娠の可能性はない」とは言えません。若い世代の女性にも必ず知っておいてほしいですし、妊娠の責任を取れないのであれば「外に出せば大丈夫でしょ」と男性には安易に言ってほしくありません。
つまり、初めての性行為でも、1回だけでも、妊娠に必要な条件がそろえば妊娠は起こり得るということです。過去に避妊しないで妊娠しなかったという経験も、今回も大丈夫だと考える根拠にはなりません。
逆に、妊娠を望んでいる場合には、1回や2回で妊娠しなかったことで「自分は妊娠しにくい」と考える必要はありません。妊娠しやすい時期の性行為でも、確実に妊娠できるほどの確率ではないからです。
まとめ:確率を計算するより、できる対応を知っておく
本記事では、性行為における妊娠確率について解説しました。皆さんのイメージと比べて、いかがだったでしょうか。
妊娠を望んでおらず、避妊をしなかった、コンドームが破れた・外れたといった場合には、緊急避妊という手段もあります。妊娠の可能性が高そうか低そうかを自分で判断して待つより、できるだけ早く対応することが大切です。
国内で使える主な緊急避妊薬(レボノルゲストレル)は、性行為後72時間以内に、なるべく早く服用します。産婦人科などの医療機関に加え、対応する薬局等でも購入できます。厚生労働省の案内から取扱薬局を確認し、在庫や対応できる薬剤師の勤務状況をまずは電話で確かめることをお勧めします。(文献5)
なお、緊急避妊をしても妊娠を完全には防げないため、その後の妊娠確認は必要です。医師や薬剤師の指示にしっかり従ってくださいね。
<参考文献>
Wilcox AJ, et al. N Engl J Med. 1995 Dec 7;333(23):1517-21.
Wilcox AJ, et al. BMJ. 2000 Nov 18;321(7271):1259-62.
国立成育医療研究センター. 計画的妊娠について(避妊方法など).
Killick SR, et al. Hum Fertil (Camb). 2011 Mar;14(1):48-52.
厚生労働省. オンライン診療に係る緊急避妊薬の調剤が対応可能な薬局及び薬剤師の一覧.
















