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【医師監修】この冬、妊婦さんとそのご家族が受けるべきワクチン一覧!母子免疫の仕組みや推奨時期を徹底解説
2026年9月、早くもインフルエンザが大流行しています。密な場所でのマスクや手洗いなど、基本的な感染対策も忘れずに。インフルエンザの流行で、今年は早めに接種を開始する医療機関も増えてきました。
今回は、そんなワクチンについて、妊婦さんの視点から解説。コロナ禍では、「妊娠中にインフルエンザやコロナにかかると重症化しやすい」という情報も認知されるところとなり、重症化を防ぎたいと考えている方もとても多いですよね。
妊娠中に打つワクチンには、お母さん自身を守るだけでなく、お母さんがつくった抗体が赤ちゃんに移行して、生まれたばかりの赤ちゃんを守ってくれるという、二度おいしい効果があります。この記事では、推奨される4つのワクチンやご家族が打つべきワクチンまで、解説します。
妊娠中にワクチン接種が必要なのはなぜ?
理由1:お母さん自身の重症化を防ぐため
大前提として、お母さんの健康状態が安定していることが、赤ちゃんにとって何よりも重要。
妊娠中は免疫の働きが変化し、感染症にかかったときに重症化しやすい状態になります。加えて、大きくなった子宮が横隔膜を押し上げるため肺が広がりにくくなり、循環血液量も増えて心臓への負担が大きくなっています。つまり、お母さんの妊娠中の体は、呼吸器の感染症にとって不利な条件がそろっているのです。
実際、インフルエンザや新型コロナウイルスは、妊娠中にかかると非妊娠時よりも入院や重症化のリスクが高いことが知られています。高熱が長く続くこと自体も、お腹の赤ちゃんにとって負担になります。
理由2:生まれてくる赤ちゃんに「母子免疫(移行抗体)」を届けるため
もうひとつが、「母子免疫」です。
お母さんがワクチンで抗体をつくると、その抗体は胎盤を通って赤ちゃんに移行します。生まれたての赤ちゃんは自分でワクチンを打つことができません。定期接種が始まるのは生後2か月から。それより前の時期は、感染症に対してほぼ無防備な「空白期」なのです。
この空白期をお母さんの抗体で埋め、赤ちゃんを守ってあげられるのが、妊娠中にワクチンを打つ最大のメリットです。しかも抗体は胎盤を通る量が多い妊娠後期にかけてぐっと増えるので、打つタイミングもとても重要になります。
【早見表】妊娠中に打っていいワクチンとダメなワクチンの違い
| 分類 | 代表的なワクチン | 妊娠中の接種 |
| 不活化ワクチン・トキソイド | インフルエンザ、RSウイルス(アブリスボ®)、 三種混合(DPT)、新型コロナなど | OK |
| 生ワクチン | 風しん、麻しん(MR)、水痘、おたふくかぜなど | 原則として避ける |
妊娠中でも接種できるワクチン(不活化ワクチン・トキソイド)
不活化ワクチンは、病原体をきちんと加工して感染性をなくしたものです。トキソイドは細菌の毒素を無毒化したもので、破傷風ワクチンなどがこれにあたります。どちらも体の中で増えることがないため、妊娠中に接種しても胎児に感染することはありません。
この記事でご紹介するインフルエンザ、RSウイルス、三種混合(百日咳)、新型コロナウイルスの4つは、すべてこのタイプです。妊娠中の接種による流産・早産・胎児の異常の増加は報告されておらず、国内外で多くの妊婦さんに接種されています。
妊娠中は原則NGのワクチン(生ワクチン)
逆に、妊娠中に接種を避けるべきなのが生ワクチンです。風しん、麻しん(MR)、水痘、おたふくかぜなどが該当します。
生ワクチンは弱毒化した病原体そのものが入っているため、理論上、赤ちゃんに感染する可能性が否定できません。そのため、妊娠中の接種は禁忌とされており、接種後は約2か月間の避妊が必要と注意書きがされています。妊娠を希望している方は、妊活を始める前に抗体検査と接種を済ませておきましょう。
妊娠中に接種が推奨される4大ワクチン

crumii編集部作成
さて、日本小児科学会は2025年10月に「妊婦への接種が推奨または考慮されるワクチン」を公表し、母体の重症化予防と赤ちゃんへの移行抗体という2つの目的から、対象となるワクチンをまとめてくれました。ここではこの4つを順に見ていきます。
※一次資料はこちらから。
1. RSウイルスワクチン(アブリスボ®)
まず1つめ、1年を通して打っておいてほしいのがRSウイルスのワクチンです。
RSウイルスは、ひどい風邪のウイルスだと思っていただくといいのですが、小さいお子さんがかかると息が苦しくなり、肺炎のような状態になります。本当に苦しそうなのに、特効薬がありません。細菌なら抗菌薬で殺すことができますが、ウイルスを殺す薬をつくるのはとても難しく、RSウイルスもそのひとつ。治療には酸素投与などの対症療法しかないのが実情で、診ている小児科の先生も、そばで見ている親御さんも、本当に辛い病気です。
重症化すると高い確率で入院になり、ご家族も仕事を休んだり、病児保育で預かってもらえなかったりと、親御さんの生活への影響も大きいウイルスです。さらに、RSウイルスに感染して入院した子供は、そうでない子供に比べて喘息の発症率も高いので、本当に気をつけておきたい病気です。

赤ちゃんだけでなく、入院は家族の日常生活にも影響が Photo:PIXTA
出産前にお母さんがワクチンを打っておくことで、生まれた赤ちゃんの重症RSウイルス感染症を大きく減らすことができます。
母体接種によって生後3か月までの乳児の重症下気道疾患を約8割、生後6か月までで約7割抑制したと報告されています。
対象・推奨時期:妊娠28週0日〜36週6日
2026年4月から、このワクチンは妊婦さんを対象とした定期接種になりました。定期接種の対象は妊娠28週0日から36週6日まで、妊娠1回につき1回の筋肉内接種です(承認上の接種可能週数は24週からですが、抗体の移行効率を考えると28週以降が理想です)。
ワクチンは接種してから2週間ほどで効果が出はじめ、1か月ほどで最大になります。出産の時期から逆算する必要があるんですね。予定日ピッタリに生まれると分かっているなら36週で打つのがいちばん効率的なのですが、実際には5%ほどの方が早産になりますし、いつ生まれるかを予知することはできません。
早産の可能性もカバーしつつ、予定日どおりでもしっかり効果が出る時期を選ぶのがおすすめです。
接種費用は公費でカバーされます!
定期接種化により、対象週数の妊婦さんは原則自己負担なしで接種できます。多くの自治体では、接種券が配布されますので、ぜひ接種しましょう。定期接種化以前は3万円台の自己負担がかかっていたことを思うと、経済的な負担もありません。
対象週数を外れる場合や、里帰り先での接種を希望する場合の取り扱いは自治体によって異なるので、お住まいの自治体のホームページや電話などで確認しておきましょう。かかりつけの健診先で接種できる施設もありますし、健診先で打てない場合でも、他院に通う妊婦さんの接種を受け入れているクリニックもあります。
2. 三種混合(DPT / Tdap)ワクチン(百日咳予防) トリビック

Photo:PIXTA
2つめは、百日咳を含むワクチンです。日本では三種混合ワクチンという名前を聞いたことがある方が多いかもしれません。お子さんが生まれてから打ちはじめるワクチンで、ジフテリア・破傷風・百日咳の3つが混合されたものです。
実は百日咳は2025年に非常に大きな流行があり、東京でも、生後1か月の赤ちゃんが亡くなられたという大変衝撃的なニュースがありました。赤ちゃんが自分でワクチンによる予防を始められるのは生後2か月から。
その子はそれが間に合わず、ご兄弟からうつって亡くなってしまったのです。この出来事があって、日本でも妊娠中の百日咳ワクチンの必要性が語られるようになりました。それまではどの学会も特別に推奨しておらず、取り扱っている医療機関もほとんどない状況でした。イギリスやオーストラリア、ブラジル、韓国などでは、妊婦さんの接種が推奨されています。
対象・推奨時期:妊娠27週〜36週頃
百日咳の抗体を効率よく赤ちゃんに渡すため、海外では妊娠27〜36週での接種が推奨されています。日本では妊娠中の接種は任意接種(日本では小児用のワクチンで、母子免疫を目的とした承認ではありません)ですが、日本小児科学会も妊婦さんへの接種を推奨・考慮されるワクチンとしてピックアップしています。妊娠のたびに接種することで、その妊娠の赤ちゃんに抗体を届けられます。
効果:生後2か月未満の乳児を守る
百日咳がいちばん危険なのは、まさにワクチンが打てない生後2か月未満の時期。この月齢では、激しい咳よりも無呼吸発作として現れることがあり、脳症や死亡につながることもあります。
忘れてはいけないのが、お母さん自身の百日咳も防げるということ。大人が自分のために打っておくだけでも十分メリットのあるワクチンです。
なお、百日咳を含むワクチンとRSウイルスワクチンを同時に接種すると抗体があまり高くならない、という趣旨の記載が添付文書にありますので、2週間くらい間隔をあけて接種しましょう。
3. インフルエンザワクチン
3つめは、インフルエンザのワクチンです。
いわゆるコロナ禍の頃は、みんなが接触を断ってマスクをしていたので、インフルエンザの発生もほとんどありませんでしたが、生活が元に戻ると、やはり秋口から流行り出しています。
2026年9月末現在、都内ではすでに流行が始まっており、東京都も注意喚起をしています。
(都庁総合HP 保健医療局報道資料参照)

赤い線が今シーズンの流行状況。すでに急速な立ち上がりが始まっている (都庁総合HP 保健医療局報道資料より)
対象・推奨時期:流行期であれば妊娠全期間
インフルエンザワクチンは、妊娠初期・中期・後期を問わず、いつでも接種できます。妊娠週数による制限はありません。例年10月頃にその年のワクチンが出回りはじめますので、流行が本格化する前に、なるべく早めに接種することをおすすめします。
効果:母体の重症化予防と、乳児への抗体移行
妊婦さんがインフルエンザにかかると高い熱が出ます。高熱が長く続くのは、お腹の赤ちゃんにとって大変な状況です。赤ちゃんは自分で汗をかいて熱を冷ますことができないので、ずっとサウナにいるような状態になってしまうんですね。妊娠中は肺炎などに進み重症化しやすいこともコロナ禍で知られるようになりました。
「打ったのにかかったよ」という方もいらっしゃいますが、感染をある程度防げますし、重症化も防げます。さらに移行抗体によって、自分ではまだ接種できない生後6か月未満の赤ちゃんの発症を減らす効果も報告されています。打っておいて損はありません。
4. 新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン

そして4つめが、新型コロナワクチンです。
「コロナワクチンって昔打ったなあ」という感覚の人もいるかもしれませんが、報道されていないだけで、コロナはその後も流行し続けています。健診に通われている妊婦さんの中にも、「コロナにかかってしまった」「夫や家族がかかった」という方は本当に多いです。
対象・推奨時期:流行状況や基礎疾患に応じて
新型コロナワクチンは妊娠のどの時期でも接種できます。流行の状況、周囲の感染状況、基礎疾患の有無などをふまえて、主治医と相談しながら判断するのが現実的です。
効果:母体の重症化・早産リスクの低減と、赤ちゃんへの抗体
妊娠中、特に妊娠後期にコロナにかかると、株にもよりますが重症化しやすく、早産のリスクも上がることが報告されています。単純に症状もしんどく長引きますし、お腹の赤ちゃんのことも含めて不安になりますよね。
妊娠中に接種して感染や重症化を少しでも防ぐことは、お母さんのためでも赤ちゃんのためでもあります。特にコロナワクチンは、生まれたお子さんに接種しようと思っても実施している医療機関が少なく、大人に比べてハードルが高いのが現実。妊娠中のうちにママが接種して赤ちゃんに抗体をプレゼントしておくというのは、非常に合理的だと思います。
まとめ|ママが打つことで、自分を感染から守り、赤ちゃんにも抗体をプレゼント
ここまで、妊娠中にワクチンが必要な理由と、推奨される4つのワクチンについてお伝えしてきました。妊娠中のワクチンは、お母さんの重症化予防と、赤ちゃんに抗体を届ける「母子免疫」の2つの役割があること、接種できるのは不活化ワクチンなどで、生ワクチンは原則避けること、RSウイルス(28〜36週・公費)、百日咳、インフルエンザ、新型コロナの4つが推奨・考慮されている、の3つがポイントです。
次の記事では、「いつ、どこで打てばいいの?」「副反応が出たらどうすれば?」という疑問にお答えします。後編では、妊娠時期別の接種スケジュール、胎児への影響や副反応への対処法、そして家族が打つべきワクチンやよくある質問について、解説していきます。
▶次回:【後編】妊婦さんのワクチン接種スケジュールと副反応の対処法(10/2公開予定)
<参考文献>
日本小児科学会 予防接種・感染症委員会「妊婦への接種が推奨または考慮されるワクチン」(2025年10月7日)
日本小児科学会「2026年4月からの妊婦を対象としたRSウイルス母子免疫ワクチン(アブリスボ®筋注用)の定期接種化にあたって」
日本小児科学会「RSウイルス母子免疫ワクチンに関する考え方」
日本周産期・新生児医学会「妊婦に接種するRSウイルス母子免疫ワクチンについて」
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「生後2か月未満の乳児における重症百日咳の発症に関する注意喚起と治療薬選択について」(2025年6月22日)
日本産婦人科医会「百日咳含有ワクチンは有益性投与と記載されているが,妊婦に推奨すべきか?」
国立健康危機管理研究機構「海外の妊婦への百日咳含有ワクチン接種に関する情報」
ファイザー「MATISSE試験(アブリスボ®)有効性・安全性データ」

















