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気になるキーワード 「思春期早発症」

【インタビュー】早すぎる胸のふくらみ、陰毛、初経…思春期早発症のサインとは? 受診・治療のポイント

勉強机に伏せて外を眺める女の子

小2の娘の胸がふくらみはじめた、小4の息子が声変わりしているみたい……思春期早発症は決してめずらしいものでないにもかかわらず、「最近の子は発育が早いそうだから」「個人差なのかも」と見過ごされることが少なくありません。

心配して調べようとしても、正しい情報が少なく、多くの保護者が不安を抱えたまま子どもを連れて受診し、治療させるかどうかを悩んできました。

今春、『うちの子、発育が早いかな?と思ったら読む本 思春期早発症の受診・治療・対策』が発売されました。監修は、小児科医・新生児科医の今西洋介さん。思春期早発症の娘を育てた父親でもあります。

ふらいと先生こと、今西さんに、思春期早発症の基礎知識と、治療についてうかがいます。

思春期早発症とは?

ーー思春期早発症はどんな病気ですか?

今西:まず「思春期」の説明からしましょう。これは大人の身体へと変化する時期でのことで、基本的にすべての人に訪れます。女の子なら月経、男の子なら声変わりに代表されるような「二次性徴」がはじまります。

女の子で10歳、男の子で12歳という平均の思春期スタート時期よりも、2~3年前倒しにはじまるのが、思春期早発症です。二次性徴の進み方が違うということはなく、ただ、「早くはじまり、早く完了する」のです。

5,000人から1万人に1人の発症率とされていますが、実際にはそれより多いでしょう。早く二次性徴がはじまったけど特に困ったことはなく、それゆえ病院にいくこともなく、そのまま思春期を終える人が少なからずいるからです。

あとになって「自分はそうだったのかな」と思い当たる、という話はよく聞きます。

男女別・思春期早発症に気づくきっかけとは

ーーどんなことがきっかけで、思春期早発症に気づくのでしょうか?

今西:以下の症状があれば、思春期早発症を心配して受診したほうがいいとされています。

男の子の場合

・9歳までに精巣が発育する
・10歳までに陰毛が生える
・11歳までにわき毛、ひげが生え、声変わりが見られる

女の子の場合

・7歳6カ月までに乳房がふくらみはじめる
・8歳までに、陰毛、わき毛が生える
・10歳6カ月までに初経がある

目に見える変化が多いので、お子さん自身が「おっぱいが痛い」「毛が生えてきた!」と気づいたり、一緒に入浴した際に親御さんが気づいたりといったきっかけが多いようですね。わが家でも、妻が、当時小1だった長女とお風呂に入っていて、陰毛が生えていることに気づきました。

思春期早発症に気づいたら。受診から診断まで

ーーどんな病院を受診すればいいのでしょう?

今西:かかりつけの小児科で紹介状を書いてもらって、大きな病院の小児内分泌科で診てもらうのが、もっともスムーズです。

ーー受診したら、子どもはどんな検査を受けるのですか? 

今西:医師がお子さん、親御さんからお話を聞くところからはじまります。このとき、二次性徴の進行を確認するため、医師がお子さんの身体を見るプロセスがあります。医師から「なぜ見る必要があるか」の説明があって、お子さんがそれに同意する。親御さんや看護師が立ち会う、などお子さんの心理的安全性は最大限守られなければなりません

それから、手のレントゲンを撮って骨の成長具合を確認し、採血をして血中のホルモン値を見ます。頭部MRI検査は、特に男の子の場合は必須です。というのも、稀に、脳に腫瘍があるのが原因で思春期が早まっているケースがあり、それは男の子のほうが多いとわかっているからです。

検査のためMRI装置の中に入る人のイラストPhoto:PIXTA

ーー脳腫瘍がないとわかった場合は、ほかにどんな理由があって思春期早発症になるのでしょう?

今西:たいていの場合は、これといった理由がないんです。だから、“病気”というより“体質”に近いものと受け止められることもあります。

ひとつ挙げるとすれば、遺伝学的要因です。親御さんに思春期のことをふり返ってもらうと、「初経が早かった」「まわりより早い時期に身長が伸びた」と思い出されることがよくあります。

治療するかどうかは、どう判断すればいい?

ーー治療の内容を具体的に教えてください。

今西:思春期早発症の治療は、「進行している思春期を、一時的に止める」ものです。その内容についてお話する前に、「治療は必ずしも必要なものではない」ことについて説明させてください。病院にお子さんを連れてくる親御さんのなかには「早く治療をしなければ」と焦っている方もいますが、一度落ち着いて考えたほうがいいでしょう。

治療を受けたほうがいいのは、「困ったこと、または今後困ることが出てくるであろう」お子さんです。女の子の場合、初経を遅らせることを目的に治療を選択されることが多いです。

すでに初経がきたお子さんも、月経を起こさないようにすることができます。9歳ぐらいでは、月経への対処がおぼつかないかもしれないと、心配されてのことですね。「●年生の林間学校が終わるまで」「中学受験が終わるまで」と具体的に時期を決めて治療に取り組まれるご家庭もあります。

そして、男の子、女の子両方に多いのが、将来の身長を考えて治療を選択するケースです。

学校の廊下を歩く女児の後ろ姿
Photo:PIXTA

ーー子どもの思春期早発症がわかったとき、
保護者がもっとも心配するのが「低身長になるのではないか」だそうですね。

今西:はい、思春期になると「成長スパート」といって、身長がぐっと伸びる時期があります。思春期が2年ほど前倒しではじまるということは、この成長スパートも早まるということです。そして伸びが止まる時期も、早まります

9歳男子の平均身長は134㎝だそうで、この状態で思春期がはじまったとします。成長スパートを迎えると、年間で10㎝前後伸びる可能性があります。そして成長スパートが終わった後も15㎝ほど伸びると期待できるので、最終身長は160㎝ほどと予測されます。これは、低身長といえる数字です。

つまり、将来の身長を考えての治療は、成長スパートがはじまる“前”に思春期の進行を一時的に止め、治療中にも伸びるのを期待し、一定の身長に達したら治療をやめて、成長スパートを迎えるのが狙いです。

ーーなぜそんなに低身長が心配されるのでしょうか?

今西:特に男の子の親御さんが気にされているのを見ると、やはり見た目の問題が大きいのだと思います。ただ、洋服や設備など、社会にあるいろんなものが身長はじめ平均的な体型にあわせて作られていることを考えると、そうでない人が不便を強いられる心配はあると思います。スポーツに打ち込みたいお子さんの場合、低身長では不利になることを懸念する親御さんもいますね。

女性の場合、身長が150㎝以下だと、妊娠、出産時のリスクが高まります。将来子どもをもつ可能性を狭めないために、低身長を避けたいというのは妥当な考えでしょう。

 

ーー治療をすると、身長が伸びるということでしょうか?

今西:勘違いされやすいのですが、治療をしたからといって伸びるとはかぎりません。受診前に二次性徴が進んでいて、成長スパートもすでにはじまっている場合は、治療後の成長率もそれほど期待できないでしょう。

治療する、しないはお子さんの意思を尊重してください。気分で決めていいという意味ではなく、親子で思春期早発症について知り、将来のことも考え、よく話し合ったうえで、という意味です。自分の身体のことは自分で決めていい、という姿勢を親御さんのほうから示すと、お子さんも安心すると思います。

治療の実際 注射の内容と終了後の見通し

ーー治療はどんなことをしますか?

今西:リュープリンというホルモン剤を、月に一度、注射で投与します。副作用はほとんどないと報告されている薬です。通院の際は身長と体重を測るほか、毎月ではないかもしれませんが手のレントゲンを撮ったり採血したりして、成長の具合を確認します。

治療終了のタイミングも、お子さん本人、そしてご家族の意向で決めるものです。リュープリン投与を終了したあとは、ほぼ100%の確率で思春期が無事再開し、その後身体が成熟していくと報告されています。

 

思春期早発症と聞くと驚く保護者は少なくありません。しかし、多くは命に関わるものではなく、原因をきちんと調べたうえで、必要に応じて治療を選択できます

大切なのは、「早く治療しなければ」と焦ることではなく、お子さん本人も含めて、どんな選択がその子にとって最善なのかを考えることです。

 

次回は、思春期早発症の子どもが学校や家庭でどんな困りごとに直面しやすいのか、そして大人はどう支えればいいのかについて、今西さんに聞きます。

➡インタビュー後篇が掲載された③に続きます
思春期早発症の特徴や治療、子どもとの向き合い方を解説した①も併せてご覧ください。

本記事は3回の連載の2回目です。
1.うちの娘が思春期早発症!? 小児科医の父と、助産師の母が真っ先に心配したこととは
2.【インタビュー】早すぎる胸のふくらみ、陰毛、初経…思春期早発症のサインとは? 受診・治療のポイント(この記事)
3.【インタビュー】思春期早発症の子どもに親が伝えたいこと。学校生活、性教育、性暴力予防まで

「もっと知りたい」と思った方はこちらから!

書籍表紙「うちの子、発育が早いかな?と思ったら読む本」
『うちの子、発育が早いかな?と思ったら読む本 思春期早発症の受診・治療・対策』
監修:今西洋介(ふらいと先生/小児科医・新生児科医)/日東書院本社/‏2026年5月発売

思春期早発症は、それ自体が命に関わる病気ではありません。
しかし、思春期早発症のことを「知らない」ばかりに治療の選択肢を失ってしまうと、後々の後悔につながることもあります。
また、まれに脳腫瘍などの重大な原因が潜んでいることもあり、放置はおすすめできません。
ただ、残念なことに、せっかく受診しても「発育は個人差です」「様子を見ましょう」と言われて、治療の機会を失ってしまうこともあるようです。
本書では、お子さんと家族のための「思春期早発症」の基礎的な知識と役立つ情報をお届けします。
お子さんの“早すぎる発育”に「あれ?」と思ったら、ぜひ本書をお読みください。

 

<取材・監修協力>

今西 洋介

石川県金沢市生まれ。富山大学医学部医学科を卒業後、周産期母子医療センターのNICUで日本小児科学会専門医、日本周産期新生児専門医として活躍。2024年には公衆衛生博士号を取得、現在は米国で子どもの医療政策学の研究を行う傍ら、書籍やニュースレター、講演などの情報発信を通じて、正しい育児、医療知識の啓発を行っている。

 

三浦 ゆえ

編集者&ライター。出版社勤務を経て、独立。女性の性と生をテーマに取材、執筆を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(宋美玄著、ブックマン社)シリーズをはじめ、『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る小児性被害』(今西洋介著、集英社インターナショナル)、『性暴力の加害者となった君よ、すぐに許されると思うことなかれ』(斉藤章佳・にのみやさをり著、ブックマン社)、『50歳からの性教育』(村瀬幸浩ら著、河出書房新社)などの編集協力を担当する。著書に『となりのセックス』(主婦の友社)、『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。

この記事の監修医師

今西洋介先生

日本小児科学会専門医 日本周産期新生児専門医 日本小児科学会 成育基本法推進委員会委員

石川県金沢市生まれ。富山大学医学部医学科を卒業後、周産期母子医療センターのNICUで日本小児科学会専門医、日本周産期新生児専門医として活躍。2024年には公衆衛生博士号を取得、現在は米国で子どもの医療政策学の研究を行う傍ら、書籍やニュースレター、講演などの情報発信を通じて、正しい育児、医療知識の啓発を行っている。

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