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山田ノジルのドラマレビュー #9 『ファーストクライ』第9話

ドラマ「ファーストクライ」9話が暴く「家庭という名のブラックボックス」~密室の闇と、ネット時代の「過剰な外光」

真顔で黙り込む若い女性の横顔

最終回を目前に控え、衝撃の展開となったドラマ『ファーストクライ 』第9話。

いや~、非常に耳が痛かったです。なぜなら、一緒に観ていた子どもが「うおおおぉ~ん」と大音量で大号泣しながら抱っこをせがんできていたので……。ちょ、ドラマ聞こえないから離れてくれないかな……あと、重い(もう身長は自分と大差ない体格)。それでも自分は、我が子のファーストクライを聞くことができた幸せ者なのでしょう……。

さて、今回はいつにも増して現代社会の嫌な部分をえぐってきたように思えました。特に、真矢ミキ演じる神谷院長の過去が、週刊誌レベルのスクープとして世間にぶちまけられ、未成年の頃に子どもを産んで手放したという事実が「悪事」のようにつるし上げられる展開に、見ていて胃が痛くなった人も多いのではないでしょうか。

家庭という名の呪縛から逃れられない人々

夕暮れの光がさす「HOME」と書かれた家の模型
Photo:PIXTA 

ネットやSNSでは、過去の出来事をセンセーショナルに切り取り、あたかも「正義の鉄槌(てっつい)」のように晒す行為がしばしばもてはやされます。やらかした人のプライベートの隅々までをネットの特定班が掘り起こし、デジタルタトゥーとして永遠に暴き続ける光景など日常茶飯事です。

そう考えると、ドラマの「過去の秘密が爆弾になる」というテンポ感は、現代のリアルなエグさからすると少しスローペースで、むしろフィクションとしての「因果応報」の枠を出ないようにも映りました。

しかし、このドラマが描く騒動の根っこをたどっていくと、非常に根深い問題に行き着きます。それが「家庭=密室」という普遍の呪縛です。

神谷院長の過去にしろ、徳永えり演じる羽鳥を巡る悲劇にしろ、歪みの元凶は、他者の目が届かない「家庭」という名のブラックボックスの中にありました。「私領域の不可侵」という大義名分のもと、家庭内での搾取や抑圧がどれほど放置されてきたかについては、長年議論が重ねられている部分といえるでしょう。

筆者が長年取材してきた中でも、親兄弟がカルト宗教やマルチ商法、陰謀論にハマって、つらい思いをしているという話は、悲しいほどに山のごとく聞いてきました。簡単には逃げられない家族という呪縛にとらわれ、どれだけの人間が密室のなかに押し込められてSOSを出せないまま、追い詰められてきたことか。

そして皮肉なことに、その「密室」の扉がひとたび開けられるやいなや、今度は現代のネット社会という名の「過剰な外光」が容赦なく差し込み、当事者たちを丸焼きにしていきます。人の尊厳などお構いなしに。

見えないところでは放置され、いざ見つかれば公開処刑。この二重の暴力性こそが、私たちが生きる情報社会の歪みそのものであるように思えます(じゃあそのプライベートな部分を聞きだし、書き、公開するライターたちは何なんだと突っ込みが飛んできそうですが、前提として同意があることを強調しておきたいと思います)。

「家庭」という密室が、澱を溜め込む前に

ガラス瓶の底に溜まった汚れ
Photo:PIXTA 

翻って、自分自身の現実の子育てに目を向けてみると、核家族によって、関わる大人が少ない狭い世界に子どもを縛りつけているのではという不安も常にあります。かといって、不特定多数がうごめくネットの世界に放り込むわけにもいきません。

だからこそ親は、自身がコントロールできる「いけす」のような限定された範囲で、どうにか社会と接続させようと悪戦苦闘するのでしょう。ドラマのような虐待とまではいかずとも、子育て世代なら誰もが抱える密やかな窒息感は、多くの人が共感する部分かもしれません。

「家庭」という密室は、放っておけば毒を溜め込む澱(おり)になり得ます。子育てでは、そこから子どもが一歩外へ踏み出せるよう、水門を少~しだけ開けておくことが大切なのかもしれません。不安うずまく息苦しい時代に怯えながらも、子どもが自分で「いけす」の外で泳ぎ方を覚えるのを、装備を持たせつつ見守るしかないのでしょう――ドロドロとした人間ドラマの裏で、そんな現代の育児に思いを馳せた第9話でした。
 

次回の視聴ページはこちら
いよいよ最終回!!

山田ノジル
フリーライター。女性誌のライターとして美容健康情報を長年取材してきたなかで出会った、科学的根拠のない怪しげな言説に注目。怪しげなものにハマった体験談を中心に、取材・連載を続けている。著書『呪われ女子に、なっていませんか? 本当は恐ろしい子宮系スピリチュアル』(KKベストセラーズ)ほか、マンガ原作や編集協力など多数の作品がある。 X:@YamadaNojiru

重見大介

この記事の監修医師

産婦人科オンライン代表

重見大介先生

産婦人科

産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。産婦人科領域の臨床疫学研究に取り組みながら、遠隔健康医療相談「産婦人科オンライン」代表を務め、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りに従事している。他に、HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんに関する啓発活動や、各種メディア(SNS、ニュースレター、Yahoo!ニュースエキスパート)などで積極的な医療情報の発信をしている。

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