crumiiと漢方を学ぼう #2 「証」
【基礎からわかる】漢方の「証」を決める寒熱・気血水とは?合わない薬のリスクと相談の目安 後編
前回の記事では、漢方における体質や不調の現れ方を示す「証」の解説と、「虚証(エネルギーが不足しがち)」「実証(充実して反応が強い)」「中間証(その中間)」に分けて考えるざっくりした分類について解説しました。後編のこの記事では、虚実とあわせて証を細かく捉える「寒・熱」「気・血・水」という視点や、証に合わない漢方薬を選んだときの注意点について解説します。
虚実だけじゃない!「証」を形づくるもう1つのものさし
漢方薬選びでは、虚証・実証だけを見ればよいわけではありません。同じ虚証でも、様々なタイプや傾向があり、体が冷えているのか、気が不足しているのか、血や水の巡りに問題があるのかなどによって選ぶ処方も変わってきます。虚実と合わせて判断に活用される、いくつかの視点をご紹介します。
「寒・熱」|体が冷えているか、熱を持っているか
「寒証(かんしょう)」は、冷えの影響が強い状態です。手足の冷え、寒がり、透明でさらさらした鼻水などが特徴として現れることがあります。寒証の場合、基本的に体を温める方向で考えます。
反対の「熱証(ねっしょう)」では、ほてり、のぼせ、赤み、口の渇きなど、熱がこもったような症状がみられることがあります。こういった場合には、熱を冷ます方向の漢方薬が候補になります。
同じ症状でも寒/熱が違えば、必要な働きがほぼ反対になることがあるため、重要なものさしです。これを間違えて逆の薬を使ってしまうと、かえって症状をこじらせたりすることも。たとえば同じ花粉症でも、透明な鼻水が中心の「寒」の状態と、目の充血や鼻づまりなど「熱」の症状が目立つ状態では、異なる性質の処方が必要になる、といった具合で使い分ける必要があるのです。

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「気・血・水(き・けつ・すい)」|体をめぐる3要素の過不足・滞り
漢方では、心と体を動かすエネルギーを「気(き)」、全身に栄養を届けるものを「血(けつ)」、血以外の体液を「水(すい)」と捉え、これらのバランスを、健康を支える基本的な要素として考えます。
たとえば、
・気が不足する「気虚(ききょ)」:疲れやすい、気力が出ない、食欲がない
・気が滞る「気滞(きたい)」:イライラする、胸やお腹が張る、ため息が増える
・気が上に逆流する「気逆(きぎゃく)」:のぼせ、動悸、イライラなどが起こりやすい
・血が不足する「血虚(けっきょ)」:顔色が悪い、立ちくらみ、肌や髪の乾燥など
・血が滞る「瘀血(おけつ)」:肩こり、月経痛、固定した痛みなど
・水が滞る「水滞(すいたい)」:むくみ、めまい、頭重感など
といった不調として捉えます。疲労倦怠感や食欲不振を伴う「気虚」、頭痛やむくみなどを伴う「水滞」など、症状の組み合わせによって証が分類されています。
これらについては、別記事で解説する予定です。
虚実 × 気血水で、自分にぴったりの漢方が定まる仕組み
証を考える場合に、「虚か実か」はとても大切ですが、さらに、寒か熱か、気・血・水のどこが乱れているかなどを総合的に見ることで、その人の証がより細分化され、対処の方針が具体的になるのです。
これらは、細かい問診や様々な診察で得られる情報から判断していきます。
「証」に合わない漢方薬を飲むとどうなるの?注意点とリスク
漢方薬は自然由来の薬だから、どれを飲んでもマイルドに効くものである、と思い込んでいる人も多いのですが、そういうわけではありません。漢方薬もあくまで「薬」。
その人の今の状態と処方の方向性が合っていることが大切です。これが、漢方の処方選びの難しいところでもあります。

自分の証に合わない漢方を飲んだらどうなる? Photo:PIXTA
実証向けの薬を虚証の人が飲んだら?
実証向けの処方には、体にこもった熱を冷ましたり、便通を促したり、不要なものを外へ出したりする力が比較的強いものがあります。
体力が少ない虚証の人がこうした処方を使うと、必要以上に体力を消耗し、胃もたれ、腹痛、下痢、食欲不振、だるさなどが現れることがあります。実際、体力がない人には向かず、胃腸が虚弱な場合に食欲不振や腹痛、下痢が起こる可能性が明記されている処方もあります。
虚証向けの薬を実証の人が飲んだら?
一方、虚証向けには、気や血など不足しているものを補い、体を支える方向の処方が多くあります。
実証で、すでに熱や滞りが強い人に「補う」方向ばかりの漢方薬を選ぶと、狙った不調が改善しにくかったり、状態によってはほてりやのぼせなどが気になったりすることがあります。
名前だけをみると、「虚証向けの薬が弱め」「実証向けの薬が強め」という優劣があるのではないかと思ってしまう人も多いのですが、大事なのは今の自分に必要な方向と漢方の作用が合っているかどうかです。
「証」は一生モノではない|季節・年齢・ストレスで刻々と変化する
証は、血液型のように生まれつきの体質だけを表すものではありません。
若いころは体力があり実証寄りだった人が、忙しさや睡眠不足、病後などで一時的に虚証寄りになったり、普段は虚証寄りでも、ストレスによって熱や滞りが強く現れたりといった変化がおこるのです。
季節による暑さ・寒さ・湿気、年齢、食生活、睡眠不足、ストレスなど、そのときの環境や体調によって証は変化します。漢方治療でも、治療開始後の状態に応じて処方を見直していくのはよくあることです。

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迷ったら専門家に相談すべき理由
ここまで解説してきましたが、漢方薬を正しく選ぶには、一番つらい困りごとの他にも、食欲や便通、睡眠、冷えやほてり、汗、月経の状態など、さまざまな情報を手がかりにして選択する必要があります。
患者さんが自分は冷え性だから虚証なんじゃないかと思っていても、専門家が全身の状態を見てみると、別の証が考えられることも。
このため、市販の漢方薬を選ぶときに迷ったら、医師や薬剤師に、主症状だけでなく、普段の体質や一緒に出ている症状も含めて相談すると、より自分の証に合った処方のアドバイスがもらえるかもしれません。
まとめ|「証」を知ることは、漢方選びの基本
さて、ここまで漢方の「証」について解説してきました。
証は、患者さん本人の体力、体質、症状の現れ方、寒熱、気・血・水の状態などから捉える「今の状態」を示すものです。
まずは「虚証・実証・中間証」という大枠を知っておくと、漢方の記事や薬の説明が理解しやすくなるかもしれません。ただし注意が必要なのは、証には様々な判断軸があること。白黒はっきりするものばかりではないこと、また、一つの軸だけで漢方薬が決まるわけではないことも覚えておきましょう。
そのためには専門家の視点が重要になります。自分の証に合う漢方薬を正しく選ぶためにも、ぜひ一度、医師や漢方に詳しい専門家に相談してみましょう。
※本記事は「漢方と365日。」の協力で作成されました。
【みんなとつくる漢方メディア 漢方と365日。】
難しいと思われがちな漢方をよりわかりやすく、そして自分事にしてほしいという願いからオープンした「漢方と365日。」
漢方体質診断「見つかる!わたしの不調スイッチ」で自分の体質を知ることができるほか、現時点での自分の体や心がどんな状態であるか確認でき、体質に合わせた生活習慣や運動などの養生法を手に入れられる。漢方の処方を受けられる医療機関の検索も可能。

















