気になるキーワード 「プラネタリーヘルス」 #3
「大豆は女性によい」って本当? 産婦人科医 宋美玄先生と考える「食と腸活」
「月経周期や更年期、ホルモン治療などに関連して、お腹の調子について話す患者さんは多いんです」
crumii編集長の宋美玄医師は、日々の診療のなかでそう感じているといいます。
「女性の健康というと、まず女性ホルモンを思い浮かべる方が多いかもしれません。でも、実は『腸』とも深く関わっていることが、近年の研究から見えてきています」
“女性の健康と腸内細菌のつながり”を宋先生の視点と最新の研究からひもとき、その鍵となる日々の食を通して、心地よく生きるヒントを探ります。
「大豆は女性によい」のはなぜ?
「大豆は女性の健康によい」と、よく耳にしませんか。その理由の一つは、大豆に含まれる「大豆イソフラボン」が、女性ホルモンの一つであるエストロゲンと似た構造をしており、大人になると年齢とともに減少しがちなエストロゲンの不足を補うように働くことが期待されているためです。
さらに、大豆イソフラボンの主要な成分「ダイゼイン」は、腸内で腸内細菌によって代謝され、「エクオール」という成分に変わることがわかっています。
現在、このエクオールと更年期症状などとの関係について、さまざまな研究が進められています。例えば、日本人閉経後女性を対象にした臨床試験では、エクオールを摂取することで、ほてりの頻度などがプラセボ(偽薬)群より有意に減少したと報告されるなど*1、女性の健康に対するアプローチとして注目を集めています。
つまり、身近な食品である大豆が女性の体ではたらく仕組みには、実は「腸内細菌」が深く関わっているのです。
違いはどこに? 腸内細菌の多様性と食生活
ところが、同じように大豆製品を食べていても、体内でこのエクオールを「つくれる人」と「つくれない人」がいることがわかってきました。この違いは一体どこにあるのでしょうか。
日本人の閉経後女性を対象としたある研究では、エクオールをつくり出すはたらきを持つ腸内細菌(エクオール産生菌)は、対象者の約97%と多くの人から検出されました。しかし、この腸内細菌がお腹にいても、実際に体内でエクオールをつくり出せていた人は、そのうちの約22%、およそ5人に1人にとどまったと報告されています*2。
Photo:PIXTA
この研究において、エクオールをつくり出せていた人の腸内環境には「腸内細菌の多様性が高い」という特徴があり、さらには、偏りのない多品目の食事を摂るなど、日々の食習慣にも違いがみられました*2。また別の研究でも、多様な腸内細菌がすむ豊かな腸内環境を持つ人ほど、エクオールをつくりやすい傾向があることが報告されています*3。
これらの研究から見えてくるのは、腸内細菌が十分に働くためには、エクオールをつくり出す特定の菌が「いる」かどうかだけでなく、腸内細菌全体の構成(多様性)や、日々の食生活など、さまざまな要素が深く関わっているということです。
女性の健康を、腸と食から見てみると
では、豊かな腸内環境を育むためには、具体的にはどのような食事を心がければよいのでしょうか。
まず、有用な菌を含む味噌や納豆などの「発酵食品」、そして多様な腸内細菌のエサとなる豆類や野菜、海藻、きのこ、穀類など「さまざまな種類の植物性食品」を日々の食卓に取り入れることを意識するとよいでしょう。
「菌を取り入れる」+「菌を育てる」。これが腸活の基本メソッドで、「腸活フード」が大切にする食選びのベースとなります。
*腸活フードとは、腸と食と自然環境とのつながりを大切にする食の考え方で、桐村里紗医師と女神の森ライフスタイル研究所が提案しています。
Photo:PIXTA
食との向き合い方について、宋先生は次のような思いを語ります。
「忙しい毎日の中で、食事を手軽に済ませてしまう人も多いと感じます。過剰に辛かったり脂っこかったり、一時的にドーパミンが出るような食事に偏ることも。でも、もっと自分の体が『おいしい!』と感じる、心も体も元気になるものを食べてほしいですね」
そして、「食を通じた自分へのケア」の先に、宋先生が深く共感しているのが「プラネタリーヘルス(人と地球の健康を一体として考えること)」という考え方です。
「昨今、気候変動もあり長雨や水害が続いていますが、私はそれを地球の悲鳴だと感じています。自然の恵みである食べ物を身体に取り入れ、未来の自分の体にも環境にもなるべく負荷をかけない。自然と調和するライフスタイルのあり方は、女性の健康にとって欠かせないと思っています」
自分の体を知ることが、未来の選択肢を広げる
日頃の診療で宋先生が大切に伝えているのは、自分の体を知り、必要なケアを自分で選択できるようになることです。「女性は、月経、妊娠・出産、更年期といったライフステージごとに体のゆらぎが起こりやすいですが、快適に過ごすための選択肢もそれぞれあります。健康情報が溢れる今こそ、体の仕組みや日々の食事、その背景を理解して、今の自分に必要なケアを選べる知恵をつけたいですね。腸活も大事なケアのひとつです」
Photo:PIXTA
これからの体のこと、宋先生と一緒に考えてみませんか?
毎日の食事やお腹の調子から、体との心地よい付き合い方を見つける場として、11月24日(火)に宋先生のセミナーを女神の森ライフスタイル研究所と共同開催します。
女性の健康と腸内細菌の関係は、エクオールだけにとどまりません。近年は、腸内フローラ、腟内フローラ、子宮内フローラと、月経・妊娠・更年期などの健康課題との関係についても研究が進められています。
学校では教えてくれなかった「性と腸のつながり」をキーワードに、一生モノのセルフケアを学ぶ時間です。
女性はもちろん、パートナーや女性と働く方々にも知ってほしい体のこと。未来に向けて、一緒に考えてみませんか?
本セミナーの詳細や、記事内でご紹介した「腸活フード」「女性の健康」をさらに詳しく学べるオンライン講座の情報は、以下のINFORMATION欄をご覧ください。
INFORMATION
crumii編集長 宋美玄医師が語る!「一生モノの性と腸活」セミナー
crumii×女神の森ライフスタイル研究所 共同開催!【会場&オンライン同時配信】
日時:2026年11月24日(火)
18:30〜20:00 (受付:18:00〜)
会場:アルソアライフスタイルアカデミー/オンライン配信あり
東京都渋谷区神宮前 5-53-67 コスモス青山ガーデンフロアB2F(青山ブックセンターと同フロア)
定員:50名(先着順)
参加費:会員:1,100円(税込)/メルマガ会員:2,200円(税込)/一般:3,300円(税込)
※参加者全員に後日アーカイブ動画を配信予定
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<出典・参考文献>
1. Aso, T., et al. (2012) Equol improves menopausal symptoms in Japanese women. Journal of Women's Health, 21(1), 92-100. (PMID: 21992596)
2. Yoshikata, R., et al. (2019) Efficacy of equol supplement for bone and cardiovascular health. Menopause, 26(9), 1043-1051. (PMID: 30188331)
3. Kodera, Y., et al. (2023) Association between equol-producing status and gut microbiota. Beneficial Microbes, 14(3), 255-265. (PMID: 38656099)
日本産婦人科医会『研修ノート No.114』
葛和恵奈子
(株)ジャパンライフデザインシステムズ プロデューサー/エディター。女性誌編集、ヘルスケア企業マーケティング部を経て、2006年より健康・美容系メディアでコンセプト設計、編集・執筆に携わる。自身も不妊治療に向き合い、43歳と45歳で男児を出産。女性が自分の身体を正しく知り、納得のいく選択ができることの大切さを痛感している。復職後、ウィメンズヘルスリテラシー協会「女性のヘルスケア講座」を修了。英国IFA認定国際アロマセラピスト資格を持ち、東京モード学園非常勤講師としても活動。




















