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男性産婦人科医・重見大介が伝えたいこと #24

SNSやインターネットの危険性:性教育でどう伝える? ~包括的性教育シリーズ~

カテゴリー:SRHR・女性医療

PCのキーボード上に乗ったスマートフォン

日本でも注目が集まる「包括的性教育」。今回は近年、性知識を得る「最初の入口」となっていることが多いインターネットやSNSといった新しいリスクにどう向き合うべきかを解説します。

これらには誤情報や暴力的コンテンツ、さらには「セクスティング」といった、デジタル時代ならではの深刻な危険性が潜んでいることもあり、無視できないものになってきています。

そこで、国際的な指針として活用されている「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(文献1)をベースに、SNSやインターネットの危険性としてどのようなものがあるのか、具体例を挙げながら紹介します。

(編集部注:国際セクシュアリティ教育ガイダンスの日本語版はこちらからご覧いただけます)

本記事では以下について解説していきます。ご家庭での性教育などで、ぜひ参考にしてみてください。

1.「最初の入口」としての存在
2.誤情報や暴力的ポルノコンテンツへの接触
3.ネットいじめ・サイバーハラスメント
4.新たなハイリスク行為である「セクスティング」

(1) 情報通信技術は
 「性に関する最初の入口」になり得る

同ガイダンスでは、情報通信技術(ICT)やソーシャルメディア(SNS)が若者の日常の一部となった近年、彼らが責任ある行動をとるために必要な知識やスキルを身につけることが、世界中で極めて重視されていると述べています。

その代表例として、性的行動に関わる情報やイメージがインターネット上で広く閲覧でき、多くの子ども・若者にとって「性やセクシュアリティに初めて接する機会」になっている点が挙げられます。

18+と書かれた矢印のイラストPhoto:PIXTA

これには悪い点だけではなく、良い点ももちろんあります。
例えば、ICTやSNSには、セクシュアリティや性的関係性について、ポジティブで正確、かつ客観的な情報へのアクセスを増やすという肯定的側面もあるとされています。

(編集部注:Crumiiの本記事なども、きっと役立つものだと思っています。)

(2) 誤情報や
 暴力的ポルノコンテンツへの接触

一方で、同じテクノロジー(ICTやSNS)が不正確・不適切な情報や暴力的なアダルトコンテンツへのアクセスも容易にしてしまうことで、「有害なジェンダー規範」を強化し得るとも指摘されています。

例として、痴漢行為や無理やりな性行為でも、アダルトビデオ等では「女性がそれを求めていた・それで気持ち良くなっている」ような描写もされることがあります。これは、性に関する極めて危険かつ大きな誤解を生みかねません。

NO is NOと書かれた手をかざす女性Photo:PIXTA

つまり、ICTやSNSは「正確で自分の助けになる情報を得るための有効な手段」でもありますが、同時に「誤情報・有害情報へ流れついてしまうきっかけ」でもあるため、子ども側に「目にした情報やコンテンツを批判的に自ら考える」ための助けが必要だ、と考えられるのです。

(3) ネットいじめ・
 サイバーハラスメントのリスク

同ガイダンスは、ICTが関与する具体的な課題として「ネットいじめ」を挙げており、欧州からの報告として、
15歳以上の女性のうち10人に1人が、インターネット上のハラスメント(攻撃的メッセージ、明らかに性的なメッセージの受信、SNSでの攻撃的・不適切な発信等)を経験していると紹介しています。

さらに、こうしたネット上でのハラスメント(嫌がらせ)は、心に深刻なダメージを与えることも指摘されており、具体的には以下のようなリスクが示されています。

気分障害・感情障害(気分の著しい落ち込みや高揚が続き生活に支障をきたすもの:うつ病や双極性障害など)を引き起こし得る
ネットいじめや被害経験が多いほど強い抑うつ症状と関連する
被害者は悲しさ・絶望感・無力感を抱えることになる

スマホによるいじめを受ける女子学生のイラストPhoto:PIXTA

これらは、ネット上のトラブルや嫌がらせを「たかがオンライン上の話」と見過ごしてはならない理由を物語っています。画面の向こうの出来事であっても、現実の心に深刻なダメージを与える「重大な健康リスク」と捉えることが大切です。

(4) 近年注目されている
 「セクスティング」の予防が重要

また、「セクスティング(Sexting)」、つまり「性的な画像や動画をスマホやインターネット等を通じて個人的に交換する行為」が若者の新たなハイリスク行為として大きな問題になってきていることも、ガイダンスに書かれています。

セクスティングの主なリスクと問題点として、以下が挙げられます。

1.拡散とリベンジポルノ
相手へ送信したデータは容易に第三者へ共有・拡散されるおそれがあり、パートナー等の関係解消後に悪用される「リベンジポルノ」の被害に遭うリスクがある
2.法的違反
未成年者の性的な画像を送受信・所持することは、法律違反に該当する場合がある
3.セクストーション(性的脅迫)
撮影した画像や動画をネタに金銭や追加のコンテンツを脅迫される

そして、セクスティングがもたらすこうした深刻なリスクについては、教育の機会を拡充・改善することで対処・予防されるべきだとも書かれています。

共有されたスマホの性的な画像を見て青ざめる少女Photo:PIXTA

また、子どもの学習目標の中では、

・性的に露骨なメディア(アダルトコンテンツ含む)やセクスティングについて説明できる
・露骨なメディアがしばしば男性・女性・性的関係を非現実的に描き誤解を招く可能性があることを理解する
・信頼できる大人に伝える方法を明らかにし、実際に伝えられるようにしておく

などが示されています。

さらに、高校生になるような年齢では、

・未成年者が露骨な画像を送受信・購入・所持することが違法となる場合があることを理解する
・関連する法律について知る
・性的に露骨なメディアの有害性を理解する
・困ったときの大人への報告・相談方法を知る

なども学習項目に掲げられています。


このように、デジタル環境における性のリスクは多岐にわたります。 
SNSやインターネットは、性に関する情報へ最初に触れる入口になり得る一方、誤情報や暴力的なアダルトコンテンツ、ネットいじめ、セクスティングなどが「望まない性的な扱われ方」や深刻なメンタルヘルスの悪化につながることがあります。

①「困ったら必ず大人に相談しよう」を約束
②メッセージなどの送信前に必ず「問題ないか?」を確認する習慣を持つ
③「サイバーハラスメント」や「セクスティング」、「セクストーション」という言葉や意味、リスクをきちんと知っておく

 

この3点は、ぜひ各ご家庭でもお子さまに伝えてあげていただきたいと思います。

 

ガイダンスに書かれている8つのキーコンセプトや家庭でできる工夫は、シリーズ記事としてまとめていますので、ぜひそちらもご覧いただき、各ご家庭で活用していただけると嬉しいです。

この記事は、包括的な教育解説シリーズの続編です。

バックナンバーはこちら
「人間関係を学ぶこと」は性教育の土台 〜包括的な教育解説シリーズ(1)〜
価値観や権利とセクシュアリティを考える 〜包括的な教育解説シリーズ(2)〜
「ジェンダー」についてどう伝えていく? 〜包括的な教育解説シリーズ(3)〜
子どもを暴力から守るために家庭ができること 〜包括的な教育解説シリーズ(4)〜
性教育で子どもに伝えたい「スキル」とは 〜包括的な教育解説シリーズ(5)〜
からだと発達についてどう伝える? 〜包括的な教育解説シリーズ(6)〜
性を「一生かかわるもの」として捉える視点 〜包括的な教育解説シリーズ(7)〜
性と生殖に関して自身と相手を守るために 〜包括的な教育解説シリーズ(8)〜
世界で「包括的性教育」はどう受け止められているの?
SNSやインターネットの危険性:性教育でどう伝える? ~包括的性教育シリーズ~(この記事)

<参考文献>
WOMEN, U. N., et al. International technical guidance on sexuality education: an evidence-informed approach. UNESCO Publishing, 2018.

重見大介

この記事の執筆医師

産婦人科オンライン代表

重見大介先生

産婦人科

産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。産婦人科領域の臨床疫学研究に取り組みながら、遠隔健康医療相談「産婦人科オンライン」代表を務め、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りに従事している。他に、HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんに関する啓発活動や、各種メディア(SNS、ニュースレター、Yahoo!ニュースエキスパート)などで積極的な医療情報の発信をしている。

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