crumii編集長・宋美玄のニュースピックアップ #38
「性と恋愛」意識調査2025を通して見えてきた、若者の意識と如実な男女差
国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)が、「性と恋愛」意識調査2025を実施しました。日本の若者から大人世代まで約9,000人を対象に、性・恋愛・結婚・出産への価値観や実態を調べた大規模な調査です。
「性と恋愛」意識調査2025。9000人の意識調査で見えたこと(ジョイセフまとめ)
(公益財団法人 ジョイセフ)
この調査では、結婚や子供を持つこと、セックスや避妊などの個人の行動と、教育・文化・制度といった社会的要因がどのように関連しているかを調べています。
結婚や子どもを持つことの希望は、経済状況による制約、性的同意や相談行動の課題など、社会的背景と深く関わる意識の傾向が示されていました。この調査では、SRHR(セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)=性と生殖に関する健康と権利に関連した多角的な結果が示されており、世代や性別による違いがさらに如実に表れています。
若者の「結婚」「子どもを持つこと」への意識
若者世代(15〜29歳)で「結婚して子どもを持ちたい」と答えた人は、男性で69%、女性で67.5%と、7割に満たないという結果でした。子どもを望まない理由として最も多かったのは「経済的な不安」です。妊娠・出産の適齢期とされる年代においても、経済状況によって望む選択ができていない可能性があると感じました。

セックスへのイメージの違い
性に関しても興味深い結果が得られました。セックスについて抱いているイメージが、若者男性の一番多い回答が「気持ちいい」(46.2%)であるのに対し、若者女性は「スキンシップ」(39.4%)、2番目は「愛が深まる」(33.8%)となっていて、「気持ちいい」は26.1%にとどまりました。この傾向は大人世代(30~64歳)の方が強く、大人男性の51.3%が「気持ちいい」と答えているのに対し、大人女性では「気持ちいい」はランクインしていませんでした。
セックスは本来、女性も男性も「気持ちいい」ものであるはずなのに、女性側があまりそういうイメージを抱けていないのは少し残念でした。多くの女性はパートナーとのセックスであまり快楽を得られていないのでしょうか。だとすると、男性側は、これまで以上に相手が快楽を得られているか気を配ったり、テクニック的な部分が独りよがりになっていないか確認する必要があると思います。女性側は、相手に自分がどう感じているか事実をフィードバックし、セクシャルプレジャーなどで自分の体の性的な部分を掘り下げていく必要があると思います。
性的同意の重要性と理解のギャップ

性的同意について、9割近く(若者86.4%、大人86.9%)が「絶対に大事だと思う」と回答していました。一方、「性的同意とはどういうものか、正直わからない 」と若者の42.4%、大人の31.0%が回答しているので、若い世代から性教育の場で「性的同意とは」ということを教えていかなければいけないと思います。
また、「気が乗らないのにセックスに応じた」と回答したのは、若者男性では25.6%だったのに対し、若者女性では44.3%となっています。大人男性では39.1%、大人女性では65.3%と、その男女差が開いています。既婚の若者女性は65.4%、既婚の大人女性は67.2%と、既婚女性の方が「気が乗らないのにセックスに応じた」経験が多くなっており、夫婦間の性交同意やセックスのあり方についての議論が必要だと感じさせられました。一方、世代が若くなるとジェンダーギャップが少し解消されていく可能性も感じました。
避妊法の浸透と若者の傾向
避妊法としては全体的にコンドームが主流ですが、若者の低用量ピル使用経験は13.6%で、大人世代の8.9%より高く、若者の間で徐々に浸透している様子がうかがえます。
また、低用量ピルの使用経験は若者女性で28.8%、大人女性で20.4%となっており、女性の主体的な避妊方法が少しずつ広がっていると考えられます。入手先については、若者女性ではオンライン診療が19.9%、インターネット購入なども8.9%を占めており、現状では安全な方法とは言えないものの、より手軽で便利な入手方法へのニーズの高まりは受け止めなくてはならないと感じました。
性に関する情報源とポルノの影響
性に関する情報源として「インターネット・Webサイト」が最も多く、若者では34.9%、大人では39.3%を占めています。また、若者男性の27.8%、大人男性の30.2%が「アダルトビデオ・サイト」と回答しており、商業ポルノの影響が依然として大きいことが示されています。
私が「女医が教える 本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)を出版したのは2010年で、その頃も「AVを教科書にして頓珍漢なテクニックを実践の場に持ち込む男性」を女性側が問題視していたのですが、それについては残念ながらあまり変わっていないのかもしれません。誤った知識や偏ったイメージが広がりやすい情報環境において、セックスや性に関する正しい知識を得られる教育や、大人が学び直す場の充実が求められます。
性の悩みを相談できる相手の不足
性や体に関する悩みについて、「相談できる相手がいない」と答えた人が全体の35.5%にのぼりました。婦人科や医療機関が十分に相談の受け皿になっていない現状が見え、アクセスのしやすさや相談体制の整備が求められます。

とても興味深い調査に感謝
今回の調査全体から、性的同意の重要性や、女性が主体的に選択できる避妊方法の浸透が進んでいる一方で、性やセックスに対する考え方は依然として男女非対称であると感じました。また、調査に協力した人の中で性別を「その他」と回答した人が少なかったことから、より多様な性のあり方を反映した調査設計の必要性もあると考えます。
性と恋愛、そしてSRHRは、個人の尊厳と人生の選択に深く関わるテーマです。今回の調査結果は、多様な人が安心して生きられる社会づくりの大きなヒントとなると思います。ぜひ今回紹介できなかった他の項目についてもチェックしてみてください。














