
漢方と365日。×Crumii #01
漢方を活用してみよう!不眠におすすめの漢方薬3選
漢方の基礎知識
漢方と証(しょう)
漢方は、古くから日本や中国で発展してきた東洋医学の考えに基づく治療法です。漢方薬は複数の「生薬(しょうやく)」を組み合わせて作られます。生薬とは、植物の根や茎、果実、動物性由来のものなど自然界の素材を加工したもの。たとえば、体を温める「生姜」や気の巡りを整える「柴胡」など、一つひとつが異なる性質をもっています。これらをバランス良く配合することで、体質や症状に合わせた効果を引き出すのが漢方薬の特徴です。
また、現代医学(西洋医学)が症状に注目するのに対し、漢方では「証(しょう)」と呼ばれる体質や状態を重視します。脈の状態や舌の色、体質などを総合的に判断し、その人に合った生薬の組み合わせを選ぶことで、心身のバランスを整えるのが特徴です。

初めて漢方を飲む方に。飲み方のポイント
飲むタイミング
漢方薬は、一般的に食前(食事の30分前)または食間(食後2〜3時間ほど空ける)に飲むのが推奨されることが多いです。食事の影響を受けにくく、効果を発揮しやすいためです。ただし処方や個人の状態によっては異なる場合もあるので、医師や薬剤師の指示に従ってください。
飲むときの温度
湯(とう)剤タイプは温かいお湯で飲むのが基本です。エキス剤や顆粒の場合も、白湯やぬるま湯で溶かす・流し込むと、飲みやすくなることが多いです。
味の工夫
漢方薬は独特の苦みや香りが気になることがあります。どうしても飲みにくい場合は、少量のハチミツや甘みのある食べ物で後味を調整してみてください。ただし、薬の効果を損なう場合もあるため、過度なアレンジは避けましょう。
継続が大切
漢方は即効性があるものもありますが、多くの場合、体質を徐々に整えることを目的としています。処方された期間はしっかりと飲み続けることで効果が得られやすくなります。途中で合わないと感じた場合や、副作用が出たときは必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
相談してからスタートしましょう
自己判断で始めず、まずは漢方に詳しい医師や薬剤師に相談して、自分の体質に合った処方を受けることが大切です。飲むタイミングや量、形状などの細かなアドバイスももらいましょう。
だるい、眠れない…五月病かも?
5月は、新しい環境に慣れ、季節の変わり目で疲れが溜まりやすく、自律神経のバランスも乱れがちな時期。知らず知らずのうちにストレスをため込み、不眠につながることもあります。ぐっすり眠れない日が続いてしまうと、日中のパフォーマンスに影響が出ることも。心当たりのある人は、ぜひ漢方薬の活用を検討してみてください。
不眠の根本改善に、漢方がおすすめ
不眠の原因はストレスや不安、疲労など、人によって様々です。漢方では、これらの原因に加え、その人自身の体質(証)に合わせたアプローチを行い、心と体のバランスを整えて自然な眠りを導きます。
不眠におすすめの漢方薬3選
1. 桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
神経質で疲れやすい、些細なことで驚きやすい、不安感がある方におすすめです。
・こんな症状に:不眠、神経過敏、イライラ、動悸、不安感、疲れやすい など
・含まれる生薬:桂枝、芍薬、生姜、大棗、竜骨、牡蠣、甘草
・特徴・効果:精神を安定させ、興奮しやすい神経を鎮めることで、穏やかな眠りを誘います。甘草が含まれているため、やや甘めの風味を感じることもあります。顆粒やエキス剤など、比較的飲みやすい形状が多いです。
2. 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
イライラしやすく、怒りっぽく、ストレスから胃腸の不調も感じるタイプにおすすめです。
・こんな症状に:不眠、イライラ、怒りっぽい、食欲不振、吐き気、胃痛 など
・含まれる生薬:柴胡、当帰、川芎、茯苓、蒼朮、陳皮、半夏、甘草、釣藤鈎
・特徴・効果:気の巡りを整え、高ぶった気をおろして精神を安定させることで不眠を改善します。柴胡や川芎など苦みを感じる生薬が入っており、やや苦めの味となることもあります。顆粒タイプが一般的で、粉末などで処方される場合もあります。
3. 加味帰脾湯(かみきひとう)
精神的な疲れや不眠、動悸、食欲不振、貧血など、心身の不調を感じているタイプにおすすめです。
・こんな症状に:不眠(夢が多い、寝つきが悪い)、疲労感、倦怠感、動悸、息切れ、食欲不振、貧血 など
・含まれる生薬:黄耆、柴胡、酸棗仁、蒼朮、人参、茯苓、遠志、山梔子、大棗、当帰、甘草、生姜、木香、竜眼肉
・特徴・効果:心と脾の働きを補い、心身の疲れを癒し、精神を安定させることで不眠を改善します。酸棗仁や竜眼肉が含まれているため、ほんのり甘めの味を感じることがあります。エキス剤や顆粒タイプでの処方が多いです。
不眠と漢方:まとめ
5月は新しい環境による疲れやストレスから、不眠に悩まされる人が多い時期。漢方薬は、体質や不眠の原因に合わせて根本的な改善をサポートしてくれます。ただし、自己判断で始めず、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談して、自分にぴったりの漢方薬を見つけましょう。適切な漢方薬と上手な飲み方を選んで、快適な春を過ごしてください。
※本記事は「漢方と365日。」の協力で作成されました。

吉住奈緒子 先生
大阪大学医学部医学科卒。 大阪府立急性期・総合医療センター、厚生労働省医系技官などを経て、現在は東京女子医科大学附属東洋医学研究所 助教。 専門は公衆衛生、東洋医学。毎週火曜日、丸の内の森レディースクリニックで漢方外来を担当。