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セックス 性的同意 演技

「セクシュアルプレジャー」の話をしよう #11

そのセックス、本当に気持ちいい?──感じているフリとプレジャーのあいだで

 

セクシュアルプレジャーについて考えるうえで、避けて通れないのが「演技」です。感じているフリや、イッたフリ。ある女性誌が実施したアンケートでは、「セックス中に“演技”や“感じているフリ”をすることはありますか?」という問いに対して、約75%の女性が「ある」と回答しました。圧倒的多数です。

演技は、プレジャーを遠ざけます。なぜならそれは、NOを見えなくするからです。

先にお断りしておきますが、フリを全否定したいわけではありません。「その位置、その触れられ方で快感がある」と多少“盛って”表現することで、自分も相手も興が乗って、セックスそのものが楽しくなることもあるでしょう。コミュニケーションの一環です。ただし、程度問題ですし、それぞれ自分がどうすればプレジャーを得られるかを知っていて、お互いのYESもNOも尊重しあえるカップルにかぎっての話です。

演技が当たり前になると、NOは消えていく

女性が演技をする理由は人によりさまざまですが、「がんばってくれている相手に応えたい」「そのほうがパートナーが喜ぶから」といったものが多いと思われます。

あるアンケート調査では、「自分よりも、相手をより気持ちよくさせたい、先にオーガズムに達せさせたいという願望はありますか?」という問いに、〈常にある〉〈概ねある〉と答えたのは、男性が全年齢平均で73%、女性が34.1%でした。

男性の想い自体は、一見すると悪くないものと受け取れます。でもそこには、余計なものがくっつきがちです。すなわち、「女性をイカせてこそ男だ」「女性を悦ばせる俺ってスゴイよな」という、男のプライド、あるいは“男らしさ”へのとらわれ。つまりは、俺ファーストです。

もちろん、そうでなく純粋に「相手のため」を考えている男性もいるでしょう。そちらが多数派だったら、女性の「自分よりも、相手をより気持ちよくさせたい」の割合はもっと多いはず。“お互いさま”の精神になるのが自然の流れです。

アンケート調査の結果で男女間に大きな開きがあるのは、女性にとっては「自分(女性)よりも、相手(男性)がより気持ちよくなっている」状態が、すでに成立しているからだと考えられます。自分自身が「演技」によってその状態を支えているのですから、そのぐらいわかりますよね。

セックス 性的同意 演技 不幸
(photo: PIXTA)

「相手のため」は、ほんとに相手のため?

ここでの演技は、相手を観察し、そのニーズ(俺はオンナを満足させたい、など)を汲み取り、それを満たすために行われるものです。これは、もはや「ケア」でしょう。

自分の「それは痛いからもっと違う触れ方をしてほしい」「こんなアプローチなら気持ちよくなれるのに」というニーズにフタをし、相手の快感、満足のために演技する。すべては相手ファースト。

なかには、行為中に苦痛を感じている人もいるでしょう。そんなときは「早く終わってほしい」と願うものです。でも相手は、「イカせるぞー!」と張り切っている。女性のオーガズムは、さまざまな要素が重なって起きる複雑なものです。その重なりを阻害するものしかないセックスで、イケるわけがない。でも自分がイカないと、相手が納得しない。セックスがいつまでも終わらない……イッたフリで乗り切るしかない。

かくして男性の満足感は満たされ、プライドも守られます。ふたりの関係は、波風立つことなく維持されるでしょう。女性側の目的は、ある意味において達成されたことになります。

感じているフリが“守る”ものとは

演技によるケアの問題は、女性から男性への一方向的なものという点です。自分のプレジャーをあきらめ、ときに苦痛に耐えながらのケアは、たいへん自己犠牲的で、それによって維持される関係はとても歪(いびつ)です。

男性が演技に気づくことは、ほとんどないでしょう。女性ながら300本以上のピンク映画を監督した浜野佐知さんを私は敬愛しているのですが、彼女によると「どんなに芝居が下手な女優も、ベッドでの演技はウマい」とのことです。

男性は女性の演技に気づかず、自分だけが一方的にケアされているとも気づかない。これから先も「イカせるぞー!」と張り切りつづけ、触れ方を変えることはまずないでしょう。ますます気合を入れて、的外れなアプローチをくり出してくる可能性だってあるのです。

痛い・気持ち悪い・感じない触れ方をされたら、女性はNOを言っていい。そのNOは触れ方についてのもので、相手の人格や気持ちについてのものではありません。NOがあってはじめて、ふたりで触れ方を模索するチャンスが生まれますから、そのNOはYESにつながるものだとも言えます。

セックス 性的同意 NO
(photo: PIXTA)

相手の不機嫌をケアでなだめる

NOを言ったら相手が機嫌を損ねる、相手から「俺が下手だって言うのか」「誰と比べてるんだ」と責められる……そこまででなくとも、ふたりのあいだになんとなく冷えた空気が漂うのを避けたい。NOの代わりに演技をし、相手の不機嫌をケアでなだめているうちに、自分がNOを言っていいのだということも忘れてしまいます。自分の感覚も、身体も、自分のものじゃない気がしてくるでしょう。これはもうプレジャーどころではありません。

セックスにはもともと、ケアの側面が含まれると思います。ふたりでプレジャーを得るためには、言葉によるコミュニケーションだけでなく、相手を観察し・ニーズを汲み取り・それを満たすべく働きかけることが不可欠だからです。これをお互いにできるのは、理想的な関係です。そうしてふたりともが満たされるセックスなら、「関係維持のため仕方なく」でも、「相手が不機嫌になるから渋々」でもなく、自分から「今日はしたい」「しよう」と思えるでしょう。

女性はもっと、自分本位でいいんじゃないでしょうか。生きているだけで何かとケア役割を担わされるのが、女性という性です。もっともプライベートなコミュニケーションであるセックスでまで一方的なケアを求められるなんて、そりゃしんどいに決まっています。

NOを一度も表明できなかったがために、何十年も演技をつづけることになった女性の話も、私はこれまで聞いてきました。

演技をつづけた先に、プレジャーはある?

自分の「NO」を大事にして、自分の感覚を大事に扱う。自分で自分のケアができるようになって、はじめて相手のケアもできる。

そうは言っても、「NO」を言うのがむずかしいのもわかります。それより、演技をしたほうが簡単だと感じるのも無理はありません。自分に負担なく「NO」を言えるようになるための道すじは、次回考えましょう。

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

丸の内の森レディースクリニック

院長

宋美玄先生

産婦人科専門医

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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