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男性産婦人科医・重見大介が伝えたいこと #25

子宮を摘出すると身体やホルモンにどんな影響が出るの?

コーヒーを飲みながら疑問に思う女性のイラスト

「子宮を取る」と聞くと、大きな不安を感じるのも無理はありません。
「女性ホルモンが出なくなるのでは?」「お腹の中にある他の臓器が下がってくるのでは?」「性行為はできなくなるのでは?」と心配される方も少なくないでしょう。

ですが、実際には子宮を摘出すること自体で起こる変化と、卵巣も一緒に摘出することで起こる変化を混同し、誤解を持っていらっしゃる方もいるようです。これらは分けて考える必要があります。

今回は、子宮摘出による身体への影響について、わかりやすく解説するとともに、「他の臓器の位置が下がる?」「女性ホルモンの分泌に影響する?」「性行為はできなくなる?」といった、よく聞かれる三つの疑問にもお答えしていきます。

子宮とはどういう臓器で、どこにあるのか

子宮は、骨盤の中にある「筋肉でできた袋状の臓器」です。
前(お腹側)には膀胱(ぼうこう)、後ろ(背中側)には直腸があり、その間に位置しています。妊娠していないときはそれほど大きくありません(6~7cm程度)が、妊娠すると大きく広がり、赤ちゃんを育てる場所になります。

骨盤底筋、直腸、子宮、膀胱の位置関係のイラストPixta:PIXTA

子宮の本体部分である「子宮体部」の内側には「子宮内膜」があり、妊娠しなかった月経周期ではこの内膜がはがれ落ちて血液とともに排出されます。これがいわゆる「月経」と呼ばれる現象ですね。
また、子宮の下の部分は「子宮頸(けい)部」と呼ばれ、腟とつながっています。

子宮と卵巣の各部位「子宮」と「卵巣」は役割が違う(Photo:PIXTA)

ここで大切なのは、子宮は月経や妊娠に深く関わる臓器である一方、女性ホルモンを主に分泌しているのは卵巣であるという点です。この違いを理解しておくと、子宮摘出後の変化をイメージしやすくなるかと思います。

子宮摘出が必要になり得る婦人科疾患

子宮摘出術は、婦人科で比較的よく行われる手術の一つです。ただし、良性疾患に対しては、薬物療法や他の治療法を検討したうえで、それでも症状が強い場合に選ばれることが一般的です。

代表的な病気としては、

・子宮筋腫
・子宮腺筋症
・子宮内膜症
・薬の治療では治らない過多月経や不正出血
・骨盤臓器脱

などがあります。

特に、月経量がとても多い、強い月経痛がある、貧血が続く、膀胱などを圧迫していて尿失禁など生活に支障がある、といったケースでは手術が検討されます。

また、子宮体がんや子宮頸がんなどの悪性疾患では、子宮摘出が治療の中心になることがあります。この場合は病気の進行度合いに応じて、卵管・卵巣や周囲の組織も含めて広めに切除することがあります。

子宮摘出術はどういう手術か

子宮摘出術にはいくつかの方法があります。

もっとも一般的なのは、子宮体部と子宮頸部を摘出する「単純子宮全摘術」です。
一方で、子宮体部のみを切除し、子宮頸部を残す方法が選ばれることもあります。状況によって摘出する範囲が異なります。

さらに、がんの治療ではリンパ節や卵巣・卵管なども含め、より広い範囲を切除する手術が必要になることもあります。

手術の方法にも違いがあります。
お腹にメスを入れて10〜15cmくらいの傷ができる開腹手術
カメラや細い器具を挿入するための小さな傷だけで行う腹腔鏡(ふくくうきょう)手術、
腟から行う腟式手術などがあります。
最近では、病状や医療機関の体制によってロボット支援手術が選ばれることもあります。

*ロボット手術については私のニュースレターでも解説しています。ご関心があればぜひご覧ください。
ロボット手術ってどんなもの? 〜近年の最新技術と未来像とは〜

どの手術方法がよいかは、

・病気の種類
・子宮の大きさ(病気の部分も含む)
・骨盤内の癒着の有無
・既往歴

などによって異なります。

手術後の回復期間にも差があり、開腹手術より腹腔鏡手術や腟式手術のほうが身体への負担は少ない傾向にあります。

PLAN AからPLAN Cまでのカードとクエスチョンマーク
Photo:PIXTA

よくある疑問(1) 
他の臓器は下がってくる?

「子宮を取ると、空いた場所に他の臓器が落ちてくるの?」と心配される人もいるでしょう。これは半分正しく、半分誤っています。

子宮摘出後、骨盤の中では周囲の臓器の位置が少し変わることがあります。隣接しているのは腸管や膀胱、卵巣などですが、これらの位置が多少変わっても自分では何も感じませんし、症状として現れることも通常ありません。
(もし子宮筋腫などで肥大した子宮によって膀胱が圧迫されて尿失禁があった場合に、術後に圧迫が取れて症状が改善する、などの変化はもちろんあります)

一方で、骨盤の中の臓器は、筋肉や靱帯(じんたい)などからなる「骨盤底筋」に支えられています。この支えが弱くなると、膀胱や直腸、腟の一部などが腟の出口の方へ下がってくる「骨盤臓器脱」が起こることがあります。
出産歴、加齢、肥満、便秘、慢性的なせきなどに加えて、子宮摘出術も骨盤臓器脱の発症リスクの一つになり得ます。

筋肉が弱くなった骨盤底筋群と十分に厚みがある骨盤底筋群の比較Photo:PIXTA

よくある疑問(2) 
女性ホルモンの分泌に影響する?

これはかなり誤解の多い点です。
結論から言えば、子宮だけを摘出して卵巣を残した場合、通常は女性ホルモンが大きく減ったりなくなったりするわけではありません

女性ホルモンを主に分泌しているのは二つの卵巣です。そのため、子宮を取っても卵巣が残っていれば、すぐにホルモン分泌が減って閉経するわけではありません。ただし、子宮内膜がなくなるため月経は起こらなくなります

一方、もし卵巣を残しても、子宮摘出後に血流の変化などの影響で卵巣機能がやや低下し、ホルモン分泌が減ったり閉経が少し早まったりする可能性は指摘されています(文献1)。術後に必ずそうなるというわけではありませんが、子宮だけ摘出した場合もホルモン分泌へ全く影響がないとは言い切れない、そんな捉え方が妥当なところかと思っています。

なお、両方の卵巣を子宮と一緒に摘出した場合は話が大きく変わります。
閉経前の方では、手術後すぐにホルモン分泌が大きく減り、更年期症状が出てくることがあります

したがって、手術前には「子宮だけを取るのか」「卵巣も取るのか」をしっかり確認することがとても重要です。

女性医師に相談する女性のイラストPhoto:PIXTA

よくある疑問(3) 
性行為はできなくなる?

これも実は多くの人が気になっている疑問かもしれませんが、子宮摘出後も腟は残っていますので、基本的に性行為は可能です。

術後しばらくは傷や腟の奥の部分が治るまで性行為を避ける必要がありますが、子宮摘出後も医師の診察&許可後に性生活を再開している方はたくさんいらっしゃいます。一般に4〜6週間ほどは腟内への挿入を控えるよう案内されることが多いかと思います。

また、性機能への影響は「子宮があるかないか」だけで単純に決まるものではありません。手術前に強い骨盤内の痛みや不正出血があり、それが改善したことで性生活が楽になる方もいます。一方で、卵巣摘出によるホルモン低下、腟の乾燥、痛みへの不安、身体のイメージの変化などが影響して、性行為に不安を感じる方もいらっしゃいます。

つまり、子宮摘出をしたから性行為ができなくなる、ということではないですが、術後に全く問題なく性行為ができるかどうかはケース・バイ・ケース、ということですね。
もし性交痛や違和感が続くときは、腟断端、骨盤底筋、腟の萎縮性変化などを診てもらうと改善策が見つかることがありますので、ぜひ早めに婦人科を受診して下さい(文献2)。

おなかにハートマークを抱えた女性Photo:PIXTA

まとめ

ここまででポイントとなる部分をまとめてみました。

・子宮摘出によって確実に起こるのは、
 月経がなくなることと妊娠できなくなること
・お腹の中の臓器の位置が大きくズレることはないが、
 骨盤臓器脱のリスクにはなる
・子宮だけ摘出しても
 女性ホルモンは通常大きく減らない
・性行為はお腹や腟奥の傷が治った後であれば可能

大切なのは、子宮を取ることそのものの影響と、卵巣を取ることの影響を分けて考えることです。また、どんな病気に対して、どこまでの範囲で摘出するのかによっても、その後の身体の変化は違ってきます。

子宮摘出は、つらい症状や命に関わる病気に対して、より健康に、より快適に生きるために選ばれる治療法の一つです。
不安があるときは、遠慮せず主治医に「子宮だけ取るんですか?」「卵巣は残せますか?」「術後にどんな変化がありますか?」と具体的に聞いてみてくださいね。

 

参考文献
NHS. Hysterectomy.
RCOG. Abdominal hysterectomy – recovering well.

重見大介

この記事の執筆医師

産婦人科オンライン代表

重見大介先生

産婦人科

産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。産婦人科領域の臨床疫学研究に取り組みながら、遠隔健康医療相談「産婦人科オンライン」代表を務め、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りに従事している。他に、HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんに関する啓発活動や、各種メディア(SNS、ニュースレター、Yahoo!ニュースエキスパート)などで積極的な医療情報の発信をしている。

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