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「PCOSは一生付き合う体質」つらい生理痛と無排卵を経て母になったRさん(33歳)が語る多嚢胞性卵巣症候群

虫眼鏡で子宮のイラストを拡大する手

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん:PCOS)は、月経不順、排卵障害、不妊、にきび、多毛といった症状と関係する病気です。月経のある女性の10~20人に1人(約5~10%)にみられるとされ、決して珍しくありません。

PCOSの治療では、妊娠希望などその時々のライフステージに合わせて治療を切り替えながら、生涯にわたってコントロール(管理)していくことが必要ですが、どうするのが正解なのかわからないという人も多いでしょう。

そこで今回は、20代前半でPCOSおよびチョコレート嚢胞と診断されたのち、不妊治療や子宮頸部異形成の不安を乗り越え、現在1児の母となったRさん(33歳・仮名)にお話を伺いました。同じように悩みを抱えている方のご参考になれば幸いです。

※PCOSについては、2026年5月に医学誌『The Lancet』で新しい名称「PMOS(polyendocrine metabolic ovarian syndrome)」への変更が国際的な合意のもとで示されました。複数のホルモンや代謝の異常を含む病気であり、実際の病態をより正確に表すPMOSへ、今後3年ほどの移行期間をかけて切り替えが進められる見通しです。日本での反映は今後のガイドライン改訂で議論されるとみられますが、本記事では「PCOS」の表記を使用します。

学生時代から続く「下腹部の痛み」と24歳で下された二つの診断

首に軽く指を触れた女性の横顔
Image:PIXTA

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されたのは8~9年前です。

でも、そのずっと前、高校や大学の頃から生理周期とは全く関係のないタイミングで、下腹部に「ギューッ」と絞られるかのような強い痛みがありました。あまりにも痛くて動けなくなることもあったのですが、当時は「ただのストレスによる痛みだろう」と、そのまま放置していました。

生理痛だけでなく生理不順もありました。2カ月に1回ほどのペースでしか生理が来ず、それも毎回周期がバラバラで、定期的に来ることはありませんでした。

初めて病院を受診したのは、社会人になって大阪に住んでいた23歳か24歳の頃です。あまりにもおなかが痛い時があって、耐え切れずに婦人科で診てもらったところ、「チョコレート嚢胞※1」と診断されました。そこで初めて、高校時代から続いていた痛みの原因が病気によるものだと知ったんです。

※1)子宮内膜症が卵巣に発生してできる良性の嚢胞(のうほう:袋状の病変)。本来は子宮の内側にあるはずの組織が卵巣内で増殖して生理のたびに出血を繰り返し、排出されずにたまった古い血液が、ドロドロとした溶けたチョコレートのように見えることからこの名がついている。強い生理痛や下腹部痛を引き起こすことが多く、不妊の原因になることも。

ピルをやめたらニキビが急増……PCOS診断のきっかけに

チョコレート嚢胞と診断されてから、治療のためにピル(低用量ピル)を飲み始めました。ですが、毎月のピル代が高いなと感じてしまい、自己判断でいったん服用をやめてしまったんです。そうしたら、顔中、特に顎のあたりにニキビが急激にわーっと増えて、肌の状態がひどいことに……。慌てて同じ病院を再度受診すると、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の兆候が出ている」と告げられました。

ニキビに悩まされる女性のイラスト
Photo:PIXTA

ピル代と通院の負担は「自分の体にとって必要なケア」

チョコレート嚢胞+PCOSと診断されてからは、担当の医師から「ピルを飲んで排卵を整えることには意味があるし、肌荒れも落ち着くから」と指導を受け、本格的な妊活を始めるまでの約7〜8年間、ずっとピルの服用を継続しました。

ピルを飲んでいる間は、一番の悩みだったニキビも落ち着いて肌の状態も良くなりましたし、不順だった生理周期も定期的になったうえ、経血量も少なくなりました。

生理痛自体は完全にはなくならず、下腹部が痛むことはありましたが、学生時代の「生理と無関係にやってくるギューッという激痛」に比べればかなり軽減されました。

同じようにピルを飲んでいた友人は、体重が増えることもあったようですが、私は最初に処方されたピルがたまたま体に合っていたようで、副作用は全くといっていいほどありませんでした。
毎月のピル代の負担や通院の手間はありましたが、「自分の体にとって必要なケアだ」と割り切って飲み続けていました。

長期服用でたどり着いた、飲み忘れの工夫

ピルは毎日、同じ時間帯に飲み続ける必要があります。私は飲むのを忘れやすいタイプだったので、処方されたピルのシートの裏に、油性ペンで「全部の日付」を書き込んでいました(笑)。

薬局からも飲み忘れ防止のため、曜日のシールをもらえたのですが、それを貼っても「あれ、今日何曜日だっけ?」と分からなくなってしまうので、日付を直接書くのが一番確実でした。

休薬期間の計算が面倒だったので、生理中も飲み続けるタイプのものを選択して、ピル管理のプロみたいになっていましたね(笑)。

pixta_107969409_M.jpgPhoto:PIXTA

妊活をスタートするも「排卵の兆候がわからない」

その後、仕事の転勤に伴い、大阪から東京に引っ越しました。少しして以前から付き合っていたパートナーと結婚もして妊活をスタートしたのですが、PCOSを抱えての妊活はなかなか苦労しました

地元のレディースクリニックでタイミング法から始めたものの、PCOSの影響で本当に苦労しました。理由は「排卵の兆候がつかめないから」。というより、むしろ「排卵していないから」というほうが近いかもしれません。

基礎体温を毎日測っていたのですが、ずっと36度4分から5分あたりをウロウロしているだけで二相性(高温期と低温期の差)にはならない状態でした。これでは排卵しているのかどうかがわからず、排卵日をねらうことすらできません


体温の推移グラフ
Photo:PIXTA

そこで、クリニックでエコー(超音波検査)で診てもらいました。すると卵胞自体はたくさんあり、大きく膨らんでいて、排卵しそうではあるのが見て取れます。ところが、いざ成熟すると排卵せずにそのままシュンと消滅してしまう……そんなことが何度もありました。

そもそもPCOSのせいで私の生理は「出血するけれど排卵を伴っていない」ものだったんです。妊活をして初めて、そのことがわかりました。排卵を伴わないとホルモンの分泌がうまくいかず、生理不順になりやすいそうです。それを聞いて、「ああ、だから私の生理は昔から2カ月に1回しか来なかったんだ」と、点と点がつながりました。

排卵誘発剤でも卵胞が消滅、自分を責めた

自然に任せていて排卵しないのであれば、薬を使って排卵を促す必要があります。そのため病院から排卵誘発剤を処方されました。ですが、これもなかなかうまくいきません。

通常は1週間ほど薬を飲むと排卵が起こるのですが、私の場合は「よし、これで排卵しているはず!」と期待して検査をしても排卵していない状態。そして医師から「じゃあ、もう1回薬を飲んで、また1週間後に来てください」と言われる……その繰り返しでした。

これにより、通院の負担もさることながら、精神的な負担も積み重なっていきました。排卵していなかったと聞くたびに、「結局、薬を飲んでもダメだったんだ。無駄だったんだ」と大きなショックを受けましたし、一度、卵胞が消滅してしまったと言われた時は、心から疲れ切ってしまい、「もういいや」と完全に諦めモードになったこともありました。


立ちくらみがつらい女性
Photo:PIXTA

もともと「PCOSだから妊娠しにくい」ということはわかっていたつもりでした。しかし、あまりにもこうしたことが続くと、「子どもができないのは私のせいなんだ。私が悪いんだ」と自分を責めてしまいがちでした。

そんな中、周囲の友人たちが次々に妊娠していったのも、心に暗い影を落とす一因になっていたかもしれません。彼女たちは早々に体外受精を選択していました。

一方、私はまだタイミング法へのチャレンジ中。その周期の結果が出る前に、「妊娠の確率を考えると、今すぐ体外受精をしたほうがよいのでは」という焦りも感じていました。

治療疲れと異形成の発覚後にわかった妊娠

さらに、妊活中に「子宮頸部異形成」が見つかってしまったんです。すぐさま対処が必要ではないけれど、将来的にはリスクがありそうな状態でした。

不妊治療がなかなかうまくいかず精神的にも疲弊していた時期だったので、異形成の経過観察をしつつ、体質改善を意識したり体調を整えたりしながら、妊活をいったんお休みしていました。

そうして、妊娠のストレスから離れて、少しフラットな気持ちで過ごしていたら、そのタイミングで思いがけず自然と妊娠することができたんです。

子宮頸部異形成については、妊娠中にあらためて検査をしたところ改善が見られたという、うれしい変化もありました。異形成の状態によっては自然に治ること(自然消退)もあるそうです。ただ、現在はまた定期的な検査を受けています。細胞を採取する時の痛みが苦手なのですが、自分の体のために頑張って通っています(笑)。

子宮と内診室のイラスト
Image:PIXTA

PCOSについては、現在は特に何もしていません。生理は産後3カ月程度で再開し、32~35日周期で来ています。今も生理前になると昔のように顎にニキビができやすくなったり、下腹部にズーンとした痛みを感じたりします。それでも、学生時代のような「生理とは無関係にやってくる激痛」はなくなったので、状態としては少し落ち着いているのかなと思います。

(編集部注:PCOS(PMOS)そのものは命に直結する病気ではありませんが、長期的には子宮体がんや2型糖尿病、脂質異常症などのリスクと関わることが知られています。症状が落ち着いている時期でも、定期的な検診や体調管理を続けることが大切です。)

PCOSは「ホクロ」と同じ。うまく付き合っていこう

PCOSって、これがあるからといって直接死に至るような病気ではないじゃないですか。だから私は、「ホクロのように、一生付き合っていく自分の体質の一部」だと前向きに認識しています。ホクロって、わざわざ取り除かない限りずっと体にあるものですよね。PCOSも薬を飲めば完全に治るというわけではないので、それと同じ感覚だと思っています。

それに、PCOSだからといって悪いことばかりではないとも思っています。エコーで見ると育っている卵胞がたくさんあるので、もし将来的に体外受精をすることになった場合、「一度にたくさんの卵子が採れる可能性がある」と医師から言われました。「いっぱいチャンスがある体質なんだ!」と、できるだけポジティブに変換して考えるようにしています。

(編集部注:PCOSでは一度に多くの卵子が育ちやすい一方、体外受精などで卵巣を刺激するとOHSS(卵巣過剰刺激症候群)が起こりやすい面もあるため、治療は医師の管理のもとで慎重に進められます。)

女性医師と手を取り合う女性患者
Image:PIXTA

子どもについては、きょうだいがいたほうが楽しいと思うので、二人目は欲しいなと考えていますが……少し躊躇(ちゅうちょ)しています。

また、子宮頸部異形成についても、将来的な妊娠・出産時の流産リスクを考慮して、現時点での切除は推奨されないと医師から言われているので、それも含めて自分の体、そして心の負担と相談しながら、焦らず慎重に検討していきたいです。

同じようにPCOSで悩む方へ

PCOSと診断されると、ショックを受ける人もいるかもしれません。治療は根気がいりますし、毎月のピル代などの負担もありますが、自分に合う薬を見つけて体調をコントロールできれば、快適に過ごすこともできます

何より、思いつめすぎないことが大切です。ストレスを抱え込まず、時には主治医と相談して心に余裕を持つことも必要だと思います。PCOSという体質とうまく付き合いながら、自分のペースで進んでいってほしいなと思います。

※本記事は、個人の体験談に基づくものです。症状や治療法、薬の効果には個人差があります。体の不調を感じた場合は、自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。

山本尚恵
医療ライター。東京都出身。PR会社、マーケティングリサーチ会社、モバイルコンテンツ制作会社を経て、2009年8月より独立。各種Webメディアや雑誌、書籍にて記事を執筆するうち、医療分野に興味を持ち、医療と医療情報の発信リテラシーを学び、医療ライターに。得意分野はウイメンズヘルス全般と漢方薬。趣味は野球観戦。好きな山田は山田哲人、好きな燕はつば九郎なヤクルトスワローズファン。左投げ左打ち。阿波踊りが特技。

高橋孝幸

この記事の監修医師

高橋孝幸先生

産婦人科

医師・医学博士・日本産科婦人科学会専門医・指導医大阪市立大学卒業後、慶應義塾大学大学院にて医学博士号を取得。患者さんに寄り沿った医療の提供に努めており、子宮頸がんやHPVワクチンに関する情報提供についても一般の方に向けて正確で優しい形の啓発に努めている。

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