ドラマ『ファーストクライ』解説シリーズ #5
子宮頸がんが進行・悪化するとどうなる?実際に起こる症状や合併症を解説
カテゴリー:子宮・卵巣・性器の病気
子宮頸がんに関して、定期検診や予防のためのHPVワクチンに関する情報はだいぶ目にすることが増えてきた印象ですが、「進行してしまうとどのような症状や合併症が起こるのか」はあまり知らないという方も多いかもしれません。
ドラマ「ファーストクライ 母子救命救急班」第6話でも、妊娠中に子宮頸がんが再発し、かなり進行してしまったという妊婦さんが登場しました。
今回は、妊娠中に限定した話とはせず、子宮頸がんが進行・悪化するとどうなるのか、実際に起こる症状や合併症はどのようなものか、受診すべきタイミングなどを詳しく解説します。
子宮頸がんの「進行」とはどうなること?
子宮頸がんは、子宮の入り口にあたる子宮頸部から発生します。がんになる前の状態であるCIN(子宮頸部上皮内腫瘍(しゅよう)/子宮頸部異形成)では、通常、明らかな性器出血や痛みなどの症状はありません。
異形成を経て、がん細胞が周囲の組織へ広がる「浸潤がん」まで至っても、ごく早期には症状が出ないことがあります。

左側は上皮内病変(CINなど)。病変は基底膜を越えず、上皮内にとどまっている。現時点で間質への浸潤はなく、病変自体は原則として転移しないが、一部は将来、浸潤がんへ進展する可能性がある。一方、右側は浸潤がん(子宮頸がん)。がん細胞が基底膜を越えて間質へ浸潤している。進行度などにより、周囲組織への広がりやリンパ節・遠隔転移の可能性がある。 Photo:PIXTA
その後、進行とともに、がんは子宮頸部の中だけでなく、腟や子宮の周囲組織、骨盤壁(骨盤の内側の壁) 、リンパ節へと広がります。さらに進むと尿管を圧迫したり、膀胱や直腸に及んだりすることがあります。血液やリンパ液の流れに乗り、肺、肝臓、骨、離れたリンパ節などに転移する場合もあります。
子宮頸がんのステージは、このような「がんの広がり」に基づいて決まります。ステージⅢでは骨盤壁やリンパ節、尿管・腎臓への影響がみられることがあり、ステージⅣでは膀胱や直腸、骨盤外の臓器への広がりが含まれます。ただし、症状とステージは必ずしも一致するわけではありません。
子宮頸がんの進行期分類
・I期:がんが子宮頸部のみに認められ、他に広がっていない
・II期:癌が子宮頸部を超えて広がっているが、腟壁下1/3または骨盤壁には達していないもの
・III期:癌浸潤が腟壁下1/3まで達するもの、
ならびに/あるいは骨盤壁にまで達するもの、
ならびに/あるいは水腎症や無機能腎の原因となっているもの、
ならびに/あるいは骨盤リンパ節、
ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの
・IV期:がんが膀胱粘膜または直腸粘膜に浸潤するか、小骨盤をこえて広がるもの
出典:日本産科婦人科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会編: 子宮頸癌取扱い規約 臨床編 第4版. 金原出版; 2020. p.16-17.
進行すると不正出血、おりもの、痛みが目立つようになる
進行した場合に比較的気づきやすい症状が、月経以外の時期に性器から出血が起こる「不正出血」です。性交後の出血、閉経後の出血、月経期間が以前より長くなる、経血量が増えるといった変化もみられます。(文献1)
がんの表面は正常な組織よりも傷つきやすく、少しの刺激で出血することがあります。進行すると出血量が増え、貧血による息切れ、動悸、めまい、強いだるさにつながることもあります。大量の出血が続く場合には、輸血や緊急の止血処置が必要になることもあります。
Photo:PIXTA
おりものにも変化が現れる場合があります。水っぽいおりものが増える、血液が混じって褐色になる、膿(うみ)のように見える、強いにおいを伴う、といったものが代表的です。腫瘍表面の出血や組織の壊死(えし)、感染などが影響してこのような症状につながります。
さらに、がん病変が子宮の周囲や骨盤壁、神経に及ぶと、下腹部や骨盤、腰、背中の持続的な痛み、性交時痛が生じることがあります。
尿管が圧迫されると、腎臓にも影響する

尿を運ぶ尿管や腎臓に影響することも Photo:PIXTA
子宮頸部のすぐ近くには、腎臓で作られた尿を膀胱へ運ぶ「尿管」が左右に1本ずつ通っています。進行したがんや腫れたリンパ節によって尿管が圧迫されると、尿の流れが滞り、腎臓に尿が溜まってしまう「水腎症(すいじんしょう)」が起こることがあります。
水腎症では、腰や脇腹の痛み、吐き気、血尿、尿路感染による発熱などが現れます。一方、片側だけの閉塞では症状があまり出ないこともあり、画像検査や血液検査で初めて判明するケースも少なくありません。両側の尿管がふさがるなどして状態が悪化すると、尿量が減り、腎機能が低下するおそれがあります。
必要に応じて、尿管ステントという細い管を尿管に入れたり、背中から腎臓に管を通す「腎ろう」を造設したりして、尿が排出される通り道を確保します。
さらに周囲まで進行するとどうなる?
がんが膀胱へ及ぶと、尿が出にくい、排尿時に痛む、尿に血が混じるといった症状が現れることがあります。直腸に及んだ場合には、排便時の痛み、便秘、便が出にくい、便に血が混じるなどの症状がみられます。
Photo:PIXTA
周囲の組織が大きく損なわれると、まれに膀胱と腟、あるいは直腸と腟の間に、本来は存在しない通り道である「瘻孔(ろうこう)」ができることもあります。
腟から尿や便が漏れるようになり、皮膚炎や感染を繰り返すなど、日常生活に大きな影響を与えてしまいます。なお、瘻孔はがんそのものだけでなく、放射線治療などの影響(組織がもろくなってしまう)が重なって生じる場合もあります。
また、がんやリンパ節転移が骨盤内のリンパ管や静脈を圧迫すると、リンパ液や血液が戻りにくくなり、片方または両方の足がむくむことがあります。
倍くらいの太さになってしまうこともあり、皮膚の張りや痛みを伴うこともあります。急に片足が腫れた場合には血栓症などとの区別も必要なため、早急な受診が必要です。
<リンパ浮腫>
遠隔転移による症状は?
子宮頸がんが離れた臓器へ転移した場合、転移した場所によって出てくる症状は異なります。
肺:長引く咳、胸痛、息苦しさなど
骨:持続する骨の痛みや骨折など
肝臓:食欲低下、腹部の張りや不快感など
ただし、転移があっても、初めのうちはほとんど症状がない場合もあります。
2020年に報告された大規模な観察研究(文献2)では、子宮頸がんの遠隔転移先として肺が最も多く(4割弱)、骨(約17%)や肝臓(約13%)なども多めだと言及されています。脳転移は少数でした(1.6%)。
受診すべきタイミングを知っておこう
がんが進行し身体への負担が大きくなると、貧血や慢性的な炎症、食欲低下などが重なり、強い倦怠感(だるさ)、急な体重減少などの全身症状が現れることもあります。
・月経以外の出血
・性交後出血
・閉経後出血
・血液の混じったおりもの
などがある場合は、次回のがん検診を待たず早めに婦人科を受診してください。
心当たる症状があれば検診をまたず早めに受診を Photo:PIXTA
なお、がん検診は基本的に症状のない人を対象とするものです。症状がある場合には、診察や必要な検査を受ける必要がありますので、ここは誤解のないようにしておいてくださいね。
もし、
・出血が多く止まらない
・ふらつきや息苦しさが強い
・尿がほとんど出ない
・発熱を伴う強い腰痛がある
といった場合には、全身状態が急激に悪化しつつあるサインと考えられますので、夜間や休日でも救急受診を検討していただきたいです。
進行した子宮頸がんであっても、同時化学放射線療法や薬物療法、症状を軽くする支持療法など、病状に応じた治療があります。「進行していたら何もできない」というわけではありません。気になる症状を放置せず、早めに相談することが、その後の治療と生活を守るうえでとても重要です。
<参考文献>
NIH. Cervical Cancer Symptoms.
Zhou S, Peng F. Int J Clin Exp Pathol. 2020 Jul 1;13(7):1615-1623.
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