気になるキーワード 「子宮腺筋症」
【後編】子宮腺筋症の治療法と選び方|薬物療法・手術・妊活や産後の注意点
前編では、子宮腺筋症とはどんな病気か、子宮筋腫や子宮内膜症との違い、生理痛の悪化や過多月経といった代表的な症状、エコーやMRIによる診断の流れを解説しました。子宮腺筋症は、子宮の筋肉の中に内膜に似た組織が入り込み、生理のたびに強い痛みや出血を引き起こす病気です。
今回は、子宮腺筋症の症状や妊娠希望に合わせた薬物療法・ミレーナ・手術療法などの治療の選択肢に関する情報について解説します。
◀前回:子宮腺筋症とは?生理痛が悪化する原因と症状をチェック
ライフプランに合わせた治療の選択肢
子宮腺筋症の治療で大事なのは、どんな症状があって、何を治したいかをはっきりさせることです。痛みを抑えたい、出血を減らしたい、貧血を立て直したいなど、医師と相談し、目的によって治療を選びましょう。基本は、子宮内膜症治療と同じように、子宮内膜を薄くして経血の量を減らす治療をします。
1. 薬物療法(痛みと出血をコントロールする)
まずオーソドックスなのが薬物療法です。鎮痛薬は、痛みそのものを和らげますが、病気そのものを治す薬ではありません。そこで、ホルモン治療を使って月経を軽くし、痛みや出血を抑える方法をとります。
ファーストチョイスは低容量ピル、黄体ホルモン剤
低用量ピルやLEPと呼ばれるホルモン剤は、月経痛や月経量の改善に役立ち、長期に使う治療として広く用いられています。ただし、子宮腺筋症そのものを消す治療ではないため、効き方には個人差があります。また、喫煙、高血圧、前兆のある片頭痛などがある方は注意が必要です。
ジエノゲストは黄体ホルモン剤で、子宮腺筋症に伴う痛みの改善に日本で承認されている薬です。痛みを和らげ、病変の活動を抑えることが期待されます。しかし、不正出血が長引くことがあり、もともと出血が多い方や貧血が強い方では慎重な判断が必要で、適応となるかどうかは主治医が判断します。厚労省の審議資料でも、子宮腺筋症患者への使用にあたり重い不正出血への注意喚起が行われてきた経緯が示されています。

Photo:PIXTA
女性ホルモンの分泌そのものを抑える薬も選択肢に
GnRHアゴニスト製剤(リュープリン)やGnRHアンタゴニスト製剤(レルミナ)は、女性ホルモンの分泌を下げて、いわば閉経に近い状態をつくることで、痛みや出血を抑える薬です。
子宮筋腫や子宮内膜症に対する適応があり、実際の診療では子宮腺筋症の治療でも使われていますが、連続投与には上限があります。長く使うと骨密度の低下、ほてりなど、いわゆる更年期症状のような低エストロゲン状態に伴う副作用が問題になるためです。このため、長期で続ける治療というより、手術前の症状改善や、一定期間のコントロール目的で、他の治療と併用して使われることが多いです。
2. レボノルゲストレル子宮内システム(IUS、ミレーナ)
ミレーナは子宮の中に入れる小さなデバイスのことで、黄体ホルモンを子宮内で持続的に放出します。これによって子宮内膜を薄く保つことで、月経量を減らし、生理痛を軽くする効果が期待できます。日本では、「過多月経」と「月経困難症」に対する効能・効果が承認されていて、子宮腺筋症に伴う過多月経や月経困難症でも、保険診療で用いられています。
3. 手術療法
痛みや過多月経が強く、薬でも十分に効果が得られず、QOLが大きく下がっているときには、手術も選択肢の一つになります。子宮全摘術は子宮を摘出するため、術後の子宮腺筋症そのものによる症状の再発は基本的になく、根本治療となります。
すでに妊娠、出産を終えた世代の方や将来の妊娠を希望されない方など、妊娠希望はないが症状が長く続き、閉経を待たずに毎月の生理から解放されたい、という方にとっては、有用な選択肢になります。腺筋症の病変部分のみを切除する方法もありますが、適応となる症例が限られるため、対象となるかどうかは個別の判断となります。

Photo:PIXTA
不妊への影響と、妊活・妊娠中の注意点
子宮腺筋症は、妊娠率の低下や、流産リスクの上昇が報告されています。ただ、病変のタイプや年齢にもよりますし、ほかの原因があるかによっても影響されるので、一概に子宮腺筋症があると妊娠できないというわけではありません。
不妊につながる理由としては、着床や精子の輸送、受精卵が着床しづらくなる、赤ちゃんを育てるための内膜がうまく作られないなど、子宮の内側の赤ちゃんを育てる環境が整いにくくなる影響があるためと言われています。
産後に生理が再開すると、再び症状が出てきたり、生理中の症状が悪化したりすることもあるので要注意です。妊娠前に治療が必要か、どこまで治療してから妊活に進むかは、そのときの年齢も含めケースバイケースで考える必要があります。
医師に相談する前に情報を整理しよう
生理に不快感を感じる場合、ともかく早めに受診して欲しいのですが、受診前に月経の記録をしておくと相談の際に役立ちます。現在は生理アプリのカレンダー機能などもあるので、うまく活用して記録してみましょう。
ここでは、生理の相談をする際にクリニックの問診で聞かれる内容をピックアップしました。
・月経周期
だいたい同じような周期でくる?バラバラで予想できない?
・1回の生理あたりの出血の日数
生理は何日で終わる?いちばん多いのは何日目?
・ナプキンやタンポンの交換頻度
2時間に1回、多い日用でどのくらいもつか、など
日中でも夜用ナプキンが必要かどうか?
・血の塊の有無
レバーのような塊が出ることはあるか?
・痛み止めを飲んだ回数や痛みの強さ
(10段階で示すとどのくらいの痛み?)
・立ちくらみ、動悸、だるいなどの症状はある?
(貧血の症状があるかも確認しています)
もうひとつ大切なのが、今後の妊娠希望についてです。しばらく妊娠しなくても良いのか、妊娠を希望しているかは、今後の治療方針に直結してくるためです。「今すぐではないけれど、将来は可能性を残したい」「妊娠は希望していない」「迷っている」などざっくりした希望で十分。
相談した際に必ず聞かれると思いますが、今後の治療の選択肢に直結しますので、受診前に考えておくのがおすすめです。

まとめ|生理の悩みは一人で抱えず専門医に相談を
子宮腺筋症は、強い生理痛や過多月経の影に隠れている代表的な病気のひとつ。現場の診療でも頻繁に出くわす、割とありふれた病気です。
子宮筋腫のようなわかりやすいこぶとして現れるのではなく、子宮の筋肉の中に内膜に似た組織が入り込む病気のため、生理の痛みや出血がひどくなりやすい特徴があります。超音波やMRIで診断を進め、薬物療法、子宮全摘などの選択肢の中から、年齢や妊娠希望に合わせて治療を選びます。
crumiiでは何度もお伝えしていますが、生理痛を我慢し続ける必要はありません。
子宮腺筋症は生理を繰り返すたびに進行すると考えられており、早めに相談することで、選べる治療の幅が広がる可能性があります。鎮痛薬が効かなくなってきた、経血量が明らかに増えた、妊活がうまくいかない、そんな兆候があるようなら、一度婦人科で相談してみてください。
生理はただの体質と思わずに、これからの暮らしと将来の選択肢を守るためにも、受診を考えていただければと思います。
<参考文献>
厚生労働省HP 女性ホルモンとうまく付き合っていくには?
厚生労働省 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ
日本産婦人科医会HP (3)子宮腺筋症合併不妊への対応
日本産婦人科医会HP (4)子宮腺筋症合併不妊への対応
東大病院公式HP 子宮腺筋症外来
今日の臨床サポート
















