気になるキーワード 「産後の生理」#2
産後の生理対策①:ミレーナ(IUS)|育児ママにおすすめな理由
産後のママは常に赤ちゃんに振り回されています。睡眠も授乳も抱っこも、昼夜を問わず、こちらの都合では動いてくれないからです。そんな中で、育児の邪魔をしない生理コントロールとしてご紹介するのがミレーナです。
ミレーナは正式には、「レボノルゲストレル放出子宮内システム(IUS)」と呼ばれます。子宮の中に小さな器具を入れて、そこからごく少量のホルモン(黄体ホルモンの一種)を子宮内に放出し続ける仕組みで、避妊だけでなく、過多月経や月経困難症の治療としても位置づけられています。ミレーナの効能として「避妊・過多月経・月経困難症」が明記されています。
ミレーナで何が起きるの?──「子宮の内側」を薄く保つ治療
生理の出血は、赤ちゃんのベッドとなる子宮の内側のふかふかした組織(子宮内膜)が、毎月はがれて出てくることで起こります。(月経のしくみについてはこちらの記事をどうぞ)ミレーナは、子宮内膜を育てすぎず、子宮内膜を薄く保つ方向に働くため、結果として
・生理の量が減る
・生理痛が軽くなる
・人によっては生理がほとんど来なくなることもある
といった効果が期待できます。そもそも厚くならなかった内膜なので、はがれて出る量も少なくなる、というメカニズムです。
Photo:PIXTA
育児中にミレーナがおすすめな理由は?
ミレーナが産後の方に向いている理由はいくつかあります。
1)飲み忘れの心配をしなくて良いこと(かなり大きいです)
ピルは、効果を安定させるために基本的に24時間に1回の内服が必要な一方、ミレーナは、いったん装着してしまえば基本的に子宮内で自動運転です。
正しい位置にあるかどうか、定期的な通院チェックは必要ですが、薬を受け取るより通院の頻度が少なく済むのもメリットのひとつ。育児で忙しく、毎日同じタイミングで薬を飲む自信がない人にもおすすめです。
2)避妊と、生理の治療を同時に狙える
産後、次の妊娠まではまだ考えていない人が多数派だと思います。ミレーナは避妊法であると同時に、過多月経・月経困難症の治療にもなるため、この両方を同時にしたい人におすすめの治療です。
3)全身への影響が比較的小さい
ミレーナのホルモンは主に子宮内で働く仕組みになっていて、内服薬のように全身へ同じ濃度で回るわけではありません。この点でも、体調の変動が大きい産後には向いているといえるでしょう。
4)経腟分娩の経験があると、挿入時の痛みを感じにくい
ミレーナの挿入は痛みを伴う処置というイメージがありますが、経腟分娩を経験した妊婦さんは一度子宮頸管が開いた経験があるため、痛みを感じにくくなっています。このため、あまり痛みを感じずに挿入できる可能性があり、おすすめできます。
授乳への影響は?|基本的には大きな悪影響は示されていない
産後の生理相談にくるお母さんからの質問の中で、特に気になっている人が多いのは、授乳への影響です。
結論から言うと、産後6週以降に開始するIUD(ホルモンあり・なし両方)について臨床試験が行われており、母乳量や乳成分、赤ちゃんの成長、授乳の継続などに不利な影響がなかった、という記載があります。
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いつから入れられる?|目安は「産後6週間以降」
ミレーナは、産後すぐの装着だと脱出(位置がずれて抜け出てしまうこと)や穿孔(せんこう)※1の可能性が上がることが知られており、製造販売元であるバイエル薬品の医療者向け資料でも、分娩後は子宮の回復(6週間以上)を待って挿入する旨が記載されています。
この「6週間」という数字は、いわゆる産褥期(さんじょくき:産後の回復期)の節目にもなります。
※1 ミレーナが子宮の壁を突き破り、子宮外に出てしまうこと。1,000人に1人程度に起こり得る、極めてまれな合併症です。
実際の診療では、1カ月検診のタイミングで、産後しばらく出る出血「悪露(おろ)」が落ち着いているか、子宮の戻り具合はどうか、感染の兆候はないか、といったいくつかのチェック項目を医師が確認しながらお母さんの体の回復を確認します。
海外では「出産直後にそのまま入れてしまう」という運用をしているケースもあるようですが、その場合は産後すぐの利便性と引き換えに、ミレーナが悪露とともに流れ出てしまうリスクもあるため、脱出の確率が上がりやすいことが知られています。
産後のお母さんが優先したいのは、育児で忙しいなかでも長く安定して生理を楽にすることのはずなので、現実的には、子宮が落ち着いてから安全に入れるという考え方が良いのではと思います。
費用は?保険は使える?|「治療目的」なら保険適用
ミレーナは、特に症状や困りごとがなく、避妊だけが目的だと自費になります。その場合は医療機関や地域にもよりますが、だいたい4万円〜5万円が相場です。
逆に、出血量が多い過多月経や、生理痛が強い月経困難症などの症状があり、治療が必要と認められた場合には、保険診療として扱われます。この場合、初再診療などの診察料金を含め、1万3,000円ほどです。
医療機関によっては、麻酔などの処置をしてくれるところもありますが、自費の麻酔を使用する場合、保険適用の治療との混合診療ができないため、ミレーナの費用も自費となり、全額自己負担となります。

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注意点とリスク|最初の数カ月は「不正出血」が起こりやすい
ミレーナは万能ではありません。装着後しばらくは、体が慣れていく過程で不正出血が続くことがあります。これは多くの場合、時間の経過とともに落ち着いていきますが、「育児でただでさえ大変なのに、下着が汚れるストレスが増えるのはつらい」という方もいます。
このことを事前に知っておくと、心の準備ができますし、いつ受診すべきか、貧血チェックはどうするかなどの対策も立てやすくなるかと思います。
ミレーナまとめ|向いている人、いない人
ミレーナが特に向いているのは、以下のような方です。
・毎日の服薬が負担に感じる(飲み忘れの心配をなくしたい)
・避妊と生理の治療を同時にしたい
・授乳中で、母乳への影響が少ない方法を選びたい
・経腟分娩の経験がある(挿入時の痛みを感じにくい)
逆に、以下のような方は他の選択肢を先に検討するほうが良いかもしれません。
・子宮に器具を入れることに抵抗がある
・産後6週間がまだ経っていない(子宮の回復を待つ必要がある)
・挿入の処置のために通院する時間が取りにくい
そんな方には、内服薬という形で産後早期から始められる日本初のミニピル・スリンダという選択肢もあります。次の記事では、このスリンダについて解説します。
→【スリンダの記事を読む(明日公開予定)】
この記事は4回連載の2回目です。
→ 総論 産後の生理が戻ってくるタイミングや注意点とは?(昨日の記事)
→【ミレーナ】飲み忘れしにくい・避妊と治療を同時に(この記事)
→【スリンダ】産後早めに飲める国内初のミニピル(明日公開予定)
→【ジエノゲスト】生理痛・内膜症の治療に特化した保険適用の治療薬(明後日公開予定)
<参考文献>
バイエル薬品 ミレーナ使用の手引き
あすか製薬 スリンダ 添付文書
持田製薬 ジエノゲスト 患者向医薬品ガイド
UKMEC 2025(College of Sexual and Reproductive Healthcare)英国の避妊適応基準
















