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【専門医が教える生理をずらす方法】ピルで生理をずらすのは危険?安全な方法と失敗しない為のポイント&注意点

旅行や結婚式、受験や試合など…大切なイベントの日が生理と重なると、気分も憂うつになりますよね。「本当にズラせるの?」「いつまでに対策すればいいの?」「生理のサイクルをずらすことで、体に悪影響はない?」と、不安を抱える方も多いでしょう


そこで本記事では、生理日を移動する方法をわかりやすく解説します。月経移動用の薬と避妊用ピルの違い、安全性や副作用など、気になるポイントをまとめました。
生理のスケジュールを上手にコントロールし、より安心して毎日を過ごせるようにしましょう。

 

ピルで生理を「遅らせる」「早める」ことはできるのか?

ピル(経口避妊薬)には、さまざまな種類があります。一般的な避妊用の低用量ピルは、エストロゲンとプロゲスチンという2種類の女性ホルモンを少量含んでおり、主に避妊のために使用されます。一方、月経移動(生理日調整)の目的で使用されることが多いのは、「プラノバール(Planovar)」などの中用量ピルや「ノアルテン(Norethisterone)」合成黄体ホルモン製剤です。これらの薬を使うことで生理が起こるタイミングを一時的に調整できます。

 

生理を遅らせる

黄体ホルモン製剤を生理予定日より前から服用し続けることで、子宮内膜が剥がれ落ちるのを先延ばしにして、生理を遅らせます。

 

生理を早める

継続して内服しているピルの服用途中でやめるタイミングを調整することで、意図的に消退出血を起こし、生理(に似た出血)を早めます。

 

一般的な低用量ピルでも長期的に生理周期をコントロールすることは可能ですが、「今月だけ」「旅行やイベントのために」など、短期的な生理移動の目的の場合には、中用量ピルや合成黄体ホルモン製剤の方が向いていると考えられています。いずれにしても必ず医師の診察を受けて、正しい方法で使用しましょう。

 

ピルで生理をズラすことは危険ではないの?

正しく使えば大きな問題は少ない

健康な女性が医師の指示のもとで、月経移動用に処方されたプラノバールやノアルテンなどのピルを正しく使用する場合、大きなリスクを伴うものではないと考えられています。また、低用量ピルを使って定期的に生理周期をコントロールする方法も広く行われており、月経困難症や子宮内膜症の治療目的で保険適用となる薬剤でも、同じように飲み方を調整することで出血のタイミングをコントロールすることは可能です。


ただし、「喫煙習慣のある35歳以上の女性」や「血栓症のリスクを抱えている方」は、血栓症リスクが上昇する可能性があるため、注意が必要です。

 

副作用があると聞いたことがある方へ

実は、かつては生理を移動するために「EP製剤」と呼ばれる中用量ピルが主流でした。この製剤は、エストロゲン、プロゲスチンが多く含まれており、吐き気などの副作用や血栓症リスクが比較的高いものでしたが、現在は成分が少ない低用量、超低用量ピルが主流となりました。このため、EP製剤の多くは現在は販売されておらず、副作用のリスクも少ないものが主流になっているので、安心して受診しましょう。

 

注意すべき副作用や体調変化

不正出血

ホルモンバランスが安定しないときに起こりやすい出血。生理移動のために服用開始したばかりの時期や、飲み忘れがあったときに見られることがあります。

 

吐き気・むかつき

服用開始初期は吐き気などの軽い副作用が出ることがあります。食後や就寝前の服用で軽減される場合があります。

 

血栓症リスク

足の痛みやむくみ、胸の痛み、息切れなど異常があれば速やかに受診してください。特に喫煙者や肥満の方は要注意です。
 

生理をずらす方法

ここからは具体的に「生理を遅らせる」「生理を早める」方法について解説します。いずれも自己判断ではなく婦人科(産婦人科)を受診し、医師の指示のもとで行うことが大切です。

 

生理を遅らせたい場合

ピルの種類と服用方法

・中用量ピル(プラノバールなど)

プラノバール(Planovar)は、エストロゲンとプロゲスチンが中用量含まれたピルです。生理予定日の1週間ほど前から1日1回、同じ時間に服用を開始し、遅らせたい期間まで連続して飲み続けることで生理を先延ばしにできます。
 

服用を中止すると2~3日後に消退出血(ホルモン補充をストップした際などに起こる、生理に似た出血)が起こり、生理が来るタイミングになります。


・合成黄体ホルモン製剤(ノアルテンなど)
ノアルテン(Norethisterone)は、プロゲスチン(黄体ホルモン)製剤です。エストロゲンは含まれていませんが、生理を遅らせる仕組みはプラノバールと似ています。
 

生理予定日より数日前から服用することで、子宮内膜が剥がれ落ちる時期を延期します。

 

注意点と副作用

・服用開始のタイミングに注意
生理予定日が近くなってから受診しても、希望通りに遅らせられない場合があります。できるだけ早めに計画を立てて受診しましょう。


・血栓症リスクや他の副作用
前述のように、特に喫煙者や肥満、高血圧などの方はリスクが高くなる可能性があります。

 

・連続使用は避ける
1回の生理移動なら問題ないことが多いですが、何か月も連続で生理を来ないようにするのは推奨されません。継続的に月経のコントロールがしたい場合、月経を移動するのではなく、低用量ピルなど他の方法に切り替えましょう。医師に相談してみて下さい。

 

もともと生理が不順な人の場合

ピルの種類と服用方法

・中用量ピル(プラノバールなど)を使用
もともと生理が不順な人の場合、中用量ピルを内服して内服中止のタイミングで月経を起こす方法をとります。場合によっては、月経が来そうなタイミングかどうかをエコーでチェックした上で、内服を開始するかどうか検討します。

 

生理を早めたい場合

ピルの種類と服用方法

・中用量ピル(プラノバールなど)を使う場合
(ずらしたい月経の)前月の月経が開始してから服用を始め、早めたい日数に合わせて服用した後、中止することで予定より早いタイミングで消退出血を起こします。


・避妊用ピルを使う場合
14日以上ピルを服用して必要なタイミングでやめ、狙ったタイミングで出血を誘導します。この場合、初めてピルを服用する場合には内服開始時によくある不正出血や吐き気などのマイナートラブルがあることがあります。

 

注意点と副作用

・飲み忘れに注意
生理移動の目的であっても、飲み忘れがあると正確なタイミングで生理をコントロールできません。


・短期でも体調変化に気を配る
吐き気や頭痛、不正出血などが出る場合があります。異常を感じた場合は早めに医師へ相談してください。


・過度な期待はしないように
体質によっては、多少のずれが生じることがあります。完璧にタイミングを合わせられない場合もあるため、余裕をもったスケジュールを考えましょう。

 

普段からピルを飲んでいる人の場合

ピルを普段から飲んでいると、早めるのも遅らせるのも自在

ピルを飲んでいると、休薬期間中に出血があるので、早めたい時は14日以上ピルを内服し、生理を狙うタイミングで内服を中止すると早めることができ、21日以降も継続して内服すれば遅らせることができます。

 

生理移動に失敗しないためのポイント

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photo:PIXTA

 

1.早めに受診する

月経移動が必要とわかったら、なるべく早めに産婦人科を受診しましょう。できれば1、2ヶ月前までに、前月の月経の頃に相談するのが良いでしょう。少なくともずらしたい生理の2、3週間前には相談しておくのが理想です。内容によってはピルの種類や開始時期を調整する必要があります。
 

2.医師の指示を守ること

服用量・タイミングを独断で変えると、不正出血や生理移動の失敗につながりやすいです。自己流は避け、医師の指示をしっかり守りましょう。

 

3.体調の変化に注意する

血栓症の初期症状(足の痛みやむくみ、胸や背中の痛み、息切れなど)や、頭痛・吐き気・不正出血がひどいときはすぐ受診してください。

 

ピルはどこで処方してもらえる?

産婦人科(婦人科)クリニックや病院で

生理移動のための中用量ピルや合成黄体ホルモン製剤、あるいは低用量ピルの処方を受けられます。場合によっては、エコーで自分がそろそろ生理になるかどうか確認してもらうことも可能です。医師と直接相談できるため安心感があります。

 

ピルの費用は?

月経移動の受診は自費診療

月経の移動は自費診療

月経移動だけを目的とする場合は保険適用外となり、診察費用や薬代を合わせて3,000~5,000円程度かかることが一般的です。


ただし、ずらしたい日数や医療機関によって料金は異なるため、事前に確認すると安心です。

 

低用量ピル(保険外診療)

避妊目的で処方される低用量ピルは、原則的に保険適用外です。1シート(1か月分)あたり2,000〜3,000円程度が目安ですが、初回診察料などを含めると5,000円以上になることもあります。

 

治療に使用している場合は保険適用になる

普段から月経困難症や子宮内膜症などの治療目的で低用量ピルを使っている場合は、医師の診断により保険適用となる場合があります。その場合は自己負担が3割となるので、薬剤の値段だけでいうとシートあたり数百円から1,500円程度でおさまりますが、治療を開始する場合はエコーなどの診察や検査も必要になるため、初めて受診する場合は5,000円程度をみておいた方が安心です。

 

まとめ

月経移動を目的とする場合、中用量ピル(プラノバール)や合成黄体ホルモン製剤(ノアルテン)を使用することが多く、自費診療となります。
 

避妊目的の低用量ピルでも長期的に生理周期をコントロールできますが、短期的な「今だけ生理をずらしたい」という場合は、上記の中用量ピルの方が適している場合があります。
 

正しく使えば大きな危険は少ないものの、血栓症リスクなどは常に念頭に置き、医師と相談しながら進めることが大切です。


・医師の指示やタイミングを守り、早めに相談・受診することで失敗リスクを減らせます。


大切なのは、「自己判断で無理をしないこと」「医師とよく話し合い、体調とライフスタイルに合った方法を選択すること」です。あなたの身体と心を大切に、より快適に過ごすための一手段として、必要に応じてピルの活用を検討してみてください。あなたの身体と心を大切に、より快適な毎日を過ごせるよう応援しています。

 

 

【参考文献】
新時代のホルモン療法マニュアル 株式会社診断と治療社

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

院長

宋美玄先生

産婦人科

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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