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シリーズ:風疹のない日本をつくる ③

③風疹ワクチン、結局どうすればいい? ケース別Q&A完全ガイド

 

カテゴリー:妊娠

ワクチンを接種する女性のイラスト

2025年9月、日本はWHO(世界保健機関)から「風疹排除認定」を受けました。しかし、「排除」とは、国内での流行が止まっている状態のことで、海外からウイルスが持ち込まれれば、免疫のない人の間で再び流行が起きるリスクは残っています。
そんな中、自分は風疹ワクチンを打つべきなのか。打つとしたらどこで、費用はいくらなのか。妊娠中や授乳中はどうすればいいのか。気になる方もいるでしょう。この記事では、風疹ワクチンをめぐる具体的な疑問に、ケース別・Q&A形式でお答えします。

(この記事は全3回連載の3回目です)

①祝!風疹排除認定 世代を超えて繋がれた「悲劇を繰り返さない」不屈の想い
②なぜ「三日ばしか」が赤ちゃんに障害を残すのか――風疹と先天性風疹症候群の基礎知識
③風疹ワクチン、結局どうすればいい? ケース別Q&A完全ガイド(この記事)

1. 風疹ワクチンを打つべき人・打たなくてよい人

実際に自分がどう行動したら良いのかは以下の通りです。自分に当てはめて行動してください。

◆風疹ワクチンを打たなくてよい人
 (追加で打っても良いです)

(1)過去に「2回」のワクチン接種の記録がはっきり残っている人
確認する方法は、日本では母子手帳だけです。公的な記録はありません。
(2)過去に風疹にかかったことが、「絶対に確実」である人
親の記憶だけなど、感染がはっきりしない場合はワクチンを打ちましょう。風疹ワクチンは何回打っても問題ありません。私はいろんな理由で4回打っています。
(3)採血検査で風疹の抗体があることが確認されている人

◆風疹ワクチンを打つべき人

(1)過去に「2回」のワクチンを打っていない人
 特に優先されるのは以下のような人たちです。
 ・いつか妊娠するつもりの女性
 ・1962年4月2日から1979年4月1日生まれの男性
  (風疹ワクチンが定期接種でなかった年代)
 ・妊婦さんの夫や同居の家族

(2)前回妊娠時の検査で、風疹HI抗体価 が「8未満」、「8倍」、「16倍」の女性
 16倍とわかった後で風疹ワクチンを打ったにもかかわらず、再び16倍だった人は必ずしもワクチンを打たなくても良いと思います。
 それ以上は抗体価が上昇しない場合が多いです。風疹に対する免疫としてはほぼ大丈夫な状態と考えられます。

2. 2026年現在の現状と「救済措置」――クーポン券を持っている方へ

2025年9月に排除認定を受けましたが、風疹対策がすべて終了したわけではありません。むしろ、認定後の「維持」こそが重要です。

抗体検査の終了と接種期間の延長

本来、風疹の追加的対策(第5期定期接種)は2025年3月末で終了する予定でした。しかし、以下の状況を踏まえ、柔軟な対応が取られています。

1.抗体検査の締め切り
クーポン券を利用した新規の抗体検査は、予定通り2025年3月31日をもって終了しました。
2.予防接種期間の延長
抗体検査で「陰性(抗体なし)」と判定された方のうち、まだ接種が済んでいない方は、2027年3月31日までの2年間の期間延長で接種を受けられます。

もし、手元に2025年3月末期限のクーポン券があり、すでに抗体検査を済ませて「抗体なし」の結果を持っている方は、今からでも無料で接種を受けられる可能性があります。お住まいの自治体の窓口に確認することをお勧めします。

 

3. 風疹ワクチンのよくある疑問

ここからは、風疹ワクチンに関する個別の疑問にお答えしていきます。先ほどのチェックリストで迷った点や、ワクチンそのものについての不安がある方は、以下のQ&Aを参考にしてください。

Q1. 自分の風疹の免疫の有無がわからなくても、
ワクチンを接種したほうがいいの? 

まず、風疹ワクチンは一生に2回必要だということを再認識しましょう。子どもの時に1回だけ打っていても、不十分です。2回のワクチン接種が確認できない場合は、ワクチンを打ちましょう。ワクチン1回では流行を防げないことがわかったので、現在では、風疹のワクチンは1歳と5歳の2回接種になっています。

2回打っていない人、接種回数がわからない人は、抗体を調べずにワクチンを打ちましょう。「2回風疹のワクチンを打った」という記録が母子手帳にある人は、必ずしも打たなくてもいいです。しかし、妊婦周辺の人で、妊娠までに時間がまだあるのならば、抗体価検査をしてワクチンが必要かどうかを判断しましょう。すでに妊婦が近くにいる場合は、抗体価検査をせずに風疹ワクチンを打つ方が良いと思います。タイムラグが少なくなります。

Q2.親から「あなたは風疹にかかったから大丈夫だよ」といわれました。
それでもワクチンを接種したほうがいいですか?

「本当に」昔に風疹にかかったことがあるのだったら、免疫がある可能性が高くなるので、ワクチンを打たなくてもよいかもしれません。
なぜ「本当に」と言ったかというと、例えば「突発性発疹」のようなぶつぶつの出る他の病気と間違えて「風疹」と医者が診断をしていたり、親が病気を「麻疹」と勘違いしていたり、ということがあるからです。間違いをそのまま母子手帳に記入することもあります。「絶対かかった=抗体検査などで風疹だと確認できている」と言い切れない人は、ワクチンを打ちましょう。

母子手帳の写真
ワクチンの接種履歴は、母子手帳に記録がある

実際に経験したことですが、妊娠初期の妊婦の夫が風疹にかかりました。その人は、「おまえは小さい頃に風疹にかかったことがあるから大丈夫」と親に言われていました。風疹にかかったことが間違いだったのか、それとも、年月が経つうちに免疫が無くなってしまったのか、それはわかりません。しかし、「風疹にかかったことがある」ということが「風疹にかからない」ということではないのです。
免疫がある人が風疹ワクチンを打っても問題は何もないので、基本的にはワクチンを打つ方向で考えていただきたいです。

Q3.これから不妊治療をする予定です。その前にも、男女ともワクチンを打ったほうがよいですか?

不妊治療をしている・考えている人は風疹対策をしましょう。今から妊娠することがわかっているのですから、必ず事前に対策をすることが大切です。そこはお金をかけるべきところです。抗体検査をして十分な抗体価があるか確認するか、追加で風疹のワクチンを打ちましょう。女性は風疹ワクチンを打った後に2カ月間、避妊をする必要があるため、その期間がもったいないという人もいますが、不妊治療を中断してでも、ワクチンを先に打ったほうが有利です(避妊期間についてはQ6もご覧ください)。

顕微授精で妊娠したのに、夫が風疹にかかってしまい、妊娠初期を泣きながら過ごした人もいます。風疹ワクチン接種後の2カ月間は、風疹による障害のない赤ちゃんを産むのに必要な準備期間と思ってください。不妊治療でやっと赤ちゃんができたのに、中絶を含むような説明をするのは医師の側からしても悲しいです。

泣く女性の肩に手を載せて励ます男性パートナー
妊娠中に風疹に感染した場合、不安とともに妊娠期を過ごすことに

Q4.経産婦です。次の妊娠にそなえて、風疹の抗体があるかどうかを確認するには、検査データのどこを見ればいいですか?

過去に妊娠したことのある女性は、風疹の免疫の検査をしているはずです。血液検査の「風疹HI」という項目が、「8倍未満」「8倍」「16倍」という数字だった人は、出産後にワクチンを打つように勧められています。「32倍」「64倍」「128倍」「256倍」……の人は免疫があるので不要です。

Q5. 授乳中に風疹ワクチンを打っても大丈夫ですか?

授乳中でも大丈夫です。むしろ、授乳中の人はすぐに妊娠する可能性が平常時よりも低く、2カ月の避妊期間をとりやすいので、おすすめです。

Q6.風疹ワクチン後でも男性が避妊する必要がないのはなぜですか?

風疹のワクチンは、弱毒化した風疹ウイルスを使った生ワクチンです。接種後すぐに妊娠した場合、赤ちゃんへの影響がないとは言い切れないため、日本では女性は風疹ワクチンの接種後2カ月間、妊娠を避けることが推奨されています。男性の場合は、自分が妊娠することはないため、避妊期間は設けられていません。

Q7.風疹ワクチンは、どこで打てるの?費用は?

国産のMRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)は、子ども向けに生産されていて、大人向けの分は確保されていません。子どもの分を確保する必要があるので、大人は断られる場合もあります。
国産ワクチンが打てない場合、大人は輸入ワクチンを置いてあるトラベルクリニックや渡航外来に行って、海外から輸入されたMMRワクチン(麻疹・おたふく風邪・風疹混合ワクチン)を打ちましょう。大きな都市にはそういうクリニックがあります。

病院の廊下の写真

風疹を問題にしているのに、どうして麻疹(はしか)やおたふく風邪まで必要なのか。それは、麻疹もおたふく風邪もこわい病気だからです。一緒に予防したほうが得だからです。
麻疹は、それ自体がとってもこわい病気です。麻疹にかかると赤ちゃんは、現代の医療でも1,000人に1人くらい亡くなります。妊娠中に麻疹にかかると3割くらい流産してしまいます。おたふく風邪も数百人に一人の割合で耳が聞こえなくなったり、男女とも不妊症になったりします。これらを防ぐためにもMMRワクチンを打ったほうが得です。なお、海外では風疹単独のワクチンは生産されていません。
風疹含有ワクチン(MR/MMRワクチン)の費用は、医療機関によりますがおよそ1万円です。

Q8.ワクチンの副反応が心配です。

風疹含有ワクチン(MR/MMRワクチン)は、非常に安全性が高いことがわかっています。
また、ワクチンを打った場所が赤く腫れてしまったりとか、数日熱が出るとか、そういうリスクより、実際に感染して赤ちゃんに障害が出たり、命の危険があったりすることのほうがずっと危険です。
「ワクチンを打つリスク」と「ワクチンを打たずに、その病気にかかってしまうリスク」を比べて判断しましょう。2012~2013年の流行を考えれば、ワクチンを打つほうが有利だとはっきりしています。

4. ビジネスマンとしての「リスクマネジメント」としても風疹ワクチンを! 

大人でも風疹にかかったら、約1週間は出社停止になります。社内で感染が広がった場合には、会社全体の仕事が進まなくなります。同じフロアに妊娠中の女性がいて、もし先天性風疹症候群の子どもが生まれたら、子どもを守ることによりエネルギーが必要になってしまい、その人の仕事のパフォーマンスは落ちてしまいます。また万一、取引先の人に感染させたらどうするのでしょう。
感染症に対するリスクマネジメントという面でも、社員全員にワクチンを打って予防をするように勧めてもらいたいです。ヤフー株式会社(現・LINEヤフー株式会社)のように社員のワクチン接種に助成金を出したところもあります。

メリットとデメリットを比較する人形

最後に

2025年9月の風疹排除認定は、多くの人の努力の積み重ねによって勝ち取られたものでした。そして、この「排除」の状態を未来につなぐのは、これからの私たち一人ひとりです。母子手帳を開いてみる、クリニックを探してみる、家族と話し合ってみる――ささやかな一歩でかまいません。その積み重ねが、これから生まれてくる赤ちゃんを風疹の脅威から守る、確かな力になります。

なお、風疹がどのような病気で、なぜ赤ちゃんに障害を残すのかについては2回目の記事を、日本が風疹排除認定に至るまでの当事者と政策担当者の物語については1回目の記事に詳しく書かれています。そちらもぜひあわせてご覧ください。

【参考】
カニサンハウス たえこのへや  http://www5d.biglobe.ne.jp/~kani1120/
先天性風疹症候群の合併症により娘を18歳で亡くされた可児さんのホームページ。不妊治療中でありながら医師から風疹ワクチンを勧められず、妊娠中に風疹に感染し生まれた妙子さんは先天性風疹症候群を発症した。

風疹をなくそうの会『hand in hand』  https://stopfuushin.jimdofree.com/
先天性風疹症候群の家族会。国や医療者、社会に対して、風疹予防の大切さを継続的に発信し続けていた。今回の撲滅宣言に向けて、各地での啓発活動や大臣への陳情など、大きな貢献をしていただいた。

太田 寛

この記事の執筆医師

産婦人科医師

太田寛先生

産婦人科

千葉県成田市リリーベルクリニック勤務。

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