crumii編集長・宋美玄のニュースピックアップ #51
働く女性の流産 求められるケアは
カテゴリー:妊娠
働く女性の流産、独自の休みなどケア手厚く 12週以降は産休対象
働きながら流産・死産を経験する女性は多いですが、十分に休めていない現状があり、復職にも強い不安を抱える人が少なくない実態を伝える記事でした。働く女性を対象とした全国労働組合総連合の2025年の調査の、妊娠した人の約5人に1人が流産を経験したという結果や、名古屋市大などの研究チームによる、流産・死産で年間1万人が離職するという試算が紹介されました。企業の独自の流産後休暇の制度もあるそうです。
この記事は日経新聞のXアカウントにより「妊娠した働く女性の5人に1人が流産、ケア手厚く」と紹介されていました。この数字だけを見ると、自然発生の流産率の約15%と比べて「働くと流産しやすくなる」と受けとってしまうのではないでしょうか。
この調査は、2020年以降に妊娠・出産した女性労働者を対象に、45都道府県で行われ、回答者は1,660人(そのうち労働組合の組合員が93.3%)でした。このうち、流産の経験が「ある」と答えたのは全体の23.9%であったとのことです。
これは、複数回妊娠した人も含めた累積の経験率であり、「1回の妊娠の約20%が流産した」という意味ではありません。自然流産は、一般的に妊娠全体の15%前後で起こるとされていて、多くは胎児側の染色体異常など、予防や予測が難しい原因によるものです。この調査をもって働く女性の流産率は一般より高いとは言えません。
ただし、この調査では気になる結果もあり、職種別流産経験率では、看護師27.9%、保育士25.2%、介護・福祉25.7%と、負担の大きい医療・介護・福祉等は、身体への負担や夜勤のある職種で、流産経験が全職種より高い結果だったとのことです。
勤労と流産に関連があるのかについては、これまで複数の研究があります。現在のところ、通常の就労そのものが流産を大きく増やすという明確な根拠はありませんが、固定夜勤、極端な長時間労働、重量物運搬など、一部の労働負荷では流産リスクがやや上昇する可能性が報告されています。

記事に紹介されていた調査から、「働いているから流産しやすくなる」とは言えませんが、実際に過酷な労働環境が流産に関連する可能性はあるため、妊娠した人に過重労働を避けさせることは管理者に求められていくと思われます。
流産は身体的にも精神的にも負担の大きいものです。SNSには、「診察室で心拍が止まっていると伝えられ、お腹の大きな妊婦のいる待合室に出るのも辛かった」「手術後すぐに仕事に戻ったが涙が止まらなかった」「職場で普通に振る舞うのが苦痛だった」といった声が多数シェアされています。
流産では突然出血や腹痛が起こることもありますし、手術が必要になることもあります。特に12週以降になると、赤ちゃんも大きくなり、陣痛に近い痛みを伴う場合もあり、身体的負担はさらに大きくなります。

制度上、労基法の産休対象となるのは妊娠12週以降の流産・死産で、12週未満の流産では産休はなく、有休や病休を使わなければ休めません。記事中の、自助グループ「働く天使ママコミュニティiKizuku(イキヅク)」の調査でも、妊娠12週未満の流産では55%が当日または数日で復職していました。
流産が起こった後は、身体の回復だけでなく、悲しみや喪失感で人と顔を合わせること自体が負担になることもあります。流産自体は珍しいものではないため、多くの方が経験されています。12週未満の初期流産も含め、国や企業の休暇制度やケアがもっと充実することを願います。
また、妊婦さんにぜひ知っておいていただきたいのが母性健康管理指導事項連絡カード(母健カード)です。医師からの妊娠中の労働者への指示事項を適切に事業主に伝達するためのツールです。
働く妊産婦の方が医師等から「時差通勤にした方がいい」や「休憩を多めにとった方がいい」などの指導を受けた場合、その指導内容が事業主の方に的確に伝えられるようにするために発行する書類で、診断書と同じ効力があります。
問題は、事業所がコンプライアンスに疎く、カードに書かれている指示を受け入れなかったり、医師によってはなかなか発行してくれないこともあるということです。
個別の認識や裁量の差があることは、なかなかすぐに是正するのは難しいですが、妊婦さんが積極的に「母健カードというツールがあると聞きました」「体調がつらいので発行してほしい」「母健カードという診断書と同じ効力のものをもらってきました」と各所に訴えることで認知が広がっていくかもしれません。(そうでない現状はとても残念です。また、一部モラルハザードも存在します)
妊娠すると、初期のうちから体調の変化や経過には大きな個人差があります。少しでも多くの妊婦さんが無理せず過ごせるように、今ある制度を活用し、必要な制度を作っていけるように、こちらでも発信していきたいです。
<参考文献>
全労連女性部 妊娠・出産・育児に関する実態調査
Bonde JPら, Scandinavian Journal of Work, Environment & Health, 2013

















