気になるキーワード【ハイリスク妊娠】#1
ハイリスク妊娠とは? 定義と主な要因について解説(前編)
妊婦健診で「ハイリスク妊娠の可能性があります」と言われたらびっくりしますよね。
ハイリスク妊娠は、医学的に、少し注意が必要な状態ではあるものの、妊婦さんの経過を管理していく上での分類の話であり、決して危険だとか、問題があるといったネガティブなことを意味するわけではありません。
本記事では、医学的ハイリスク妊娠の定義とその注意点をおさらいしてみます。
そもそも「ハイリスク妊娠」とは?
ハイリスク妊娠の定義とは
「ハイリスク妊娠」とは、妊娠や出産の過程で、母体や赤ちゃんに健康上のリスク(危険の可能性)がやや高いと判断される状態を指します。
ハイリスク=問題がある、といった意味ではありませんのでご注意を。
たとえば、年齢が少し低い、高い、注意が必要な持病がある、双子など多胎妊娠である。これらはいずれも妊娠中に注意が必要な要素ですが、現在では適切な管理のもとでたくさんの人が無事に出産しています。
「適切な妊娠管理」が目的
ハイリスク妊娠を区分することの意味は、一般のクリニックや診療所で安全に分娩管理ができるか、あるいはNICU(新生児集中治療室)などを備えた高次の医療機関、大学病院や周産期母子医療センターなどでの管理が必要かを分けることにあります。
ハイリスク妊娠と診断された場合には、よりこまめな健診や検査、必要に応じた入院管理などを通して、安全に出産まで迎えられる仕組みを整える必要があり、そのために既往や妊娠初期の検査によってチェックを行うのです。
施設によっては、妊婦さんの問診時に「妊娠リスクスコア」を設定して確認しているところもあります。この妊娠リスクスコアという概念自体は、全国的に認知されていますが、標準化された全国共通のスコアが存在するわけではありません。運用基準や対応の内容も施設によって異なることがあります。

私は当てはまるの? ハイリスク妊娠の主な要因チェックリスト
「ハイリスク」と判断される理由には、大きく分けて、妊娠前からの要因、妊娠中に起きた要因、赤ちゃん側の要因の3つのパターンがあります。ここでは、それぞれの理由について簡単に理解していきましょう。
1. 妊娠前からある要因(お母さんの状態や既往歴によるもの)
・年齢
極端に年齢が若い10代の方の出産や35歳以上の初産(高齢出産)は、妊娠高血圧症候群などのリスクがやや高まるといわれています。
・体格(BMI)
やせすぎ・肥満のどちらも、妊娠中の合併症のリスクにつながることがあります。
・持病(合併症)がある
高血圧、糖尿病、甲状腺の病気、心臓病や精神疾患などがある場合は、妊娠に影響したり、治療の継続をしながら管理していく必要があります。
・過去の婦人科手術・出産歴がある
過去に帝王切開をしたり、子宮筋腫の手術をしたりといった、子宮の手術をした経験があると、次の妊娠で注意が必要な場合があります。
2. 今回の妊娠中に発生した要因
・多胎妊娠(ふたご・みつごなど赤ちゃんが複数いる)
お腹の赤ちゃんが複数いる場合、早産リスクや母体の負担が大きくなるため、慎重な管理が必要です。
・妊娠高血圧症候群
妊娠後期に血圧が高くなる病気で、母子ともに合併症のリスクがあるため、状況に応じて入院や薬の管理を行うことがあります。
・妊娠糖尿病
お母さんの血糖値が高い状態が続くと、赤ちゃんが大きくなりすぎたり合併症が増えたりといったリスクがあるため、食事・運動・薬でコントロールします。
・前置胎盤
前置胎盤とは、胎盤が子宮の下のほう(赤ちゃんの出口の近く)に位置していて、出血のリスクが高い状態のことです。入院管理が必要になることもあります。分娩は帝王切開になりますが、帝王切開時の出血も大量になる可能性があります。

3. お腹の赤ちゃん側の要因
・胎児発育不全(赤ちゃんの成長が少ない)
胎盤や母体の血流などが原因で、赤ちゃんが小さくなる場合があります。
・胎位異常(赤ちゃんの向き・位置)
骨盤位(逆子)などの場合、経腟分娩にはリスクが伴うため、出産の方法を慎重に検討する必要があります。現在の日本では、ほとんどの場合に帝王切開による分娩が選択されます。
適切な治療と管理で安心なお産を
ハイリスク妊娠について解説してきましたが、「これって意外と当てはまる人は多いのでは?」と思うのではないでしょうか。実際、年齢については現代では30代以上の妊婦さんはかなり多いですし、妊娠高血圧症候群は、全妊娠のうち10%、胎児発育不全は8〜10%の頻度で起こるとされています。
冒頭でお伝えした通り、ハイリスク妊娠はネガティブな意味ではなく、「より丁寧な見守りが必要」ということなのです。ただでさえ心身の変化の大きい妊娠生活。主治医と相談しながら、適切な治療や管理を継続していきましょう。
後編では、実際にハイリスクと診断された場合の病院での管理体制や転院の必要性、そして気になるお金や公的支援についても詳しく解説していきます。
【参考文献・出典】
病気がみえる vol.10 産科 第4版 2023,メディックメディア
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン 産科編」














