女性 腹痛

ミレーナ(IUS)装着中の女性2名の体験談【後編】

【ミレーナ体験談】気になる装着時の「痛み」と、挿入後の体調は?心配を少しでも減らすためにできること

10代のときから月経痛に苛まれ、ミレーナの装着を決めたマチさん(41歳)と、ミオリさん(25歳)。
 
ミレーナとは、IUS(Intrauterine Systemの略で、黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する子宮内システム)と いわれるもののひとつで、子宮内に装着する小さなT字型の装置のこと。ここから女性ホルモンの一種、プロゲステロン(黄体ホルモン)が持続的に放出され、過多月経や月経困難症の改善が期待できる。一度装着すると、最大で5年間効果が持続する。
 
現在、月経困難症への対策として装着を進める女性が増えている。一方で、子宮内避妊具といわれることからもわかるように、避妊を目的に装着する女性もいる。
 
5年間装着した場合の妊娠率は約0.2%、1000人が1年間装着して妊娠するのは2人程度というのは、非常に低い確率といえる。
 
コンドームは正しく使用した場合2%、正しい使用方法ではなかった場合は約15%の妊娠率。妊娠を望んでいない場合、不安を感じる確率ではないだろうか。(この記事は全2回の第2回目です。第1回を読


避妊&性感染症予防をしっかりと


 ミレーナは、ピルと同様に、女性が主体的にできる避妊法でもある。マチさんもミオリさんも、月経困難症の緩和を目的にミレーナ装着を決めたが、避妊についてはどう考えていたのだろうか。
 
「避妊目的で装着を決めたわけではないですが、自分主体でしっかり避妊できるならありがたいと感じます。過去に、コンドームが抜け落ちて緊急避妊ピルを処方してもらいにいった経験があるので」(マチさん)

 

コンドーム 避妊具
画像:PIXTA


 
けれども、性感染症予防のために、コンドームは今後も使用しつづけるという。それはミオリさんも同様で、次のように話してくれた。
 
「現在パートナーはいないですが、できた場合、ミレーナのことを相手に伝えるか……いま時点ではわかりません。コンドームはしっかり着けてほしいから、あえて伝えないかも。相手をどこまで信頼できるかによるかな。当面、妊娠は考えていないし、将来的に子どもを持ちたいと思うかどうかもわからないので、避妊はちゃんとしたいです」(ミオリさん)


ミレーナの挿入、痛くない?

ここからは、クリニックでのミレーナ挿入に話を移そう。  実は筆者も2018年にミレーナを装着し、交換も一度経験している。ミレーナに関心がある女性たちからさまざまなことを質問されるが、もっともよく聞かれるのが「装着するとき、痛くない?」だ。痛みに不安があって、一歩を踏み出せない人が少なからずいると感じる。



子宮への挿入は、医療機関で医師によって行われる。ミレーナは柔らかいプラスチック製で、縦がおよそ3cm程度のサイズである。専用の挿入器具を用い子宮内に収めてから、紐の長さを調整する。施術自体は、ごく短時間で終わる。
 
 

ミレーナ IUS
ミレーナのアプリケーター(写真:丸の内の森クリニック提供)


 
痛みについて問われれば、筆者は必ず「痛かった」と率直に答える。個人的にミレーナを勧めたい気持ちはあるが、ウソはつきたくない。そして、「でも、我慢できない痛みではなかった」「5年間で得られるメリットがあまりに大きいので、私は我慢できた」と付け加える。
 
しかし痛みの感じ方は人それぞれ。我慢できる、できないを他者が勝手に決めることはできない。


痛みの心配を少しでも減らすために
 

マチさんとミオリさんはどうだったのだろう。
 
「私がいままで体験した痛み……腰を強く打ち付けてケガをしたり、医療レーザでの脱毛をしたりのなかで、トップクラスの痛さでした」(ミオリさん)
 
「ミレーナを勧めてくれた友人が、失神するほどの痛みだったというので、すごく怖いと思ってしまって。だから、事前に病院選びに時間をかけました。できるだけ近所の病院がよかったんです。もし痛みがつづいたり、具合が悪くなってもタクシーで帰れる距離なら、当日の心配がひとつ減ると思ったので」(マチさん)  

 

実際、マチさんも施術時に強い痛みを感じた。医師によると、「子宮の位置が下がっているし、子宮口がかたい」のが原因で、特に痛く感じたのではないかということだった。施術後クリニック内で横になり休息し、血圧を測るなど体調をチェックしてもらってから、帰宅した。
 
痛みの感じ方は、身体的な理由だけでなく、メンタルの状態や環境によって左右されることも大きいと考えられる。


挿入後の体調は?
 

クリニックによっては、麻酔の使用も選択できる。「浸潤麻酔」や「頸管内ブロック」という子宮の入口付近への麻酔や、笑気麻酔で、痛みを和らげるというものだ。クリニックのHPで確認したり、事前に問い合わせたりするとよいだろう。
 
挿入直後には、下腹部の軽い痛みや出血がみられることがあるが、通常は数日で落ち着く。後日、医師の検診を受け、ミレーナが適切な位置に収まっているか、その後の副作用はあるかのチェックを受ける。
 
マチさんの場合、ミレーナ挿入後の月経は、これまでと変わらず強い痛みを伴うものだった。装着後どのくらいで月経が軽くなるか、どのように緩和されていくかには個人差がある。1カ月後の検診で、マチさんのミレーナは子宮内の適切な位置に収まっていなかったとして、調整のための処置を受けた。  

 

また、あごに大きなニキビができたのも、マチさんは気になっていた。はじめて、といってもいい場所にできたので医師に相談したところ、ホルモンバランスの影響ではないかといわれ、漢方薬が処方された。
 
「まだ、ミレーナと自分の相性がわからないのですが、これから効果を感じられるようになっていくといいなと思っています。ホルモンのアップダウンを感じず、月経に振り回されないって、どんな人生なんでしょうね」(マチさん)

 

 期待がふくらんでいるマチさん。また時間をおいてお話を聞いてみたい。


5年目の交換、期待と不安

ミオリさんは最初の装着から5年経ち、そろそろ交換のためクリニックに行かなければタイミングだ。
 
「交換は、子宮からミレーナを抜き取って、新しいものを挿入するので、それぞれに痛みがあると聞きます。それで気が重くなっていたのですが、この5年間で月経困難症のない毎日がどれだけ快適かを知ったし、麻酔の使用も選択できると聞いたので、いまは早めに行こうという気持ちになっています」(ミオリさん)

 


 
crumii編集長・産婦人科医 宋美玄の解説
 
 

IUSは内服薬と違って、飲み忘れることなく、かなり確実性の高い避妊が出来、月経困難症の治療にもなるものです。医療費のコスパもよく、選ぶ人が増えてきているチョイスです。ですが、挿入時に痛みがあるのがハードルになっています。痛みの程度は個人差があり、一般的に経腟分娩や流産手術を経験している方の方が痛くないことが多く、ほとんど痛くなかったという人も少なくありません。私のクリニックでは2~30人に1人くらいの割合でしばらく横になって休んでいただいたり、痛み止めを内服されたりしています。また、文中にある通り麻酔薬の併用も可能で、多少効果はあるようです。
 

また、安定するまでにだいたい2~3ヶ月かかり、それまでは不定期に不正出血があったり低頻度で脱出、穿孔(子宮の筋肉に突き刺さること)などのリスクがあるため、確実に定期チェックを受けましょう。

 

 

(この記事は全2回の第2回目です。第1回を読

 

 

三浦 ゆえ

編集者&ライター。出版社勤務を経て、独立。女性の性と生をテーマに取材、執筆を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(宋美玄著、ブックマン社)シリーズをはじめ、『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る小児性被害』(今西洋介著、集英社インターナショナル)、『性暴力の加害者となった君よ、すぐに許されると思うことなかれ』(斉藤章佳・にのみやさをり著、ブックマン社)、『50歳からの性教育』(村瀬幸浩ら著、河出書房新社)などの編集協力を担当する。著書に『となりのセックス』(主婦の友社)、『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

院長

宋美玄先生

産婦人科

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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