サプリメント 錠剤 手

こわがらないで更年期 #04

更年期をサプリメントで乗り切れる?最近よく耳にする「エクオール」とは?更年期真っ最中の医療ライターが解説

更年期の不調に対して、「手軽に始められそう」というイメージのあるサプリメント。ドラッグストアやインターネット通販などでも簡単に入手できるため、興味を持つ人も多いのではないでしょうか。「薬で治療する前に、まずはサプリメントでなんとかしたい」と考える人もいるでしょう。そこで今回は、サプリメントとは何なのかを説明するとともに、更年期におけるサプリメントの上手な使い方を紹介します。

 

更年期の不調はサプリメントで和らぐ?

そもそも、サプリメントとは何かについて、明確な定義はありません。基本的には、特定の栄養成分を補給することを目的とした健康食品のうち、特定成分が濃縮された錠剤・カプセル状・顆粒状等をした製品を指します。
 

医薬品ではなく、病気の治療や予防を主な目的とはしていないため、サプリメントをつくっている会社によって、効果や安全性の基準がまちまちです。よって、通常の食品よりも健康によいかどうか、更年期症状を和らげるのに役立つかについては、必ずしもそうとは言い切れないところもあります。
 

とはいえ手軽なので、栄養不足を補うのに使っているという人は少なくないでしょう。

 

更年期向けサプリメントによくある成分

薬 サプリメント
画像:PIXTA

 

更年期向けとして販売されているサプリメントに含まれている、主な成分を挙げます。
 

大豆イソフラボン

女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをするといわれる成分です。腸内で分解されるとエクオールという、エストロゲンに近い働きを持つ成分に変化します。

 

エクオール

大豆イソフラボンが腸内細菌によって分解されてできる成分。大豆イソフラボンよりもエストロゲンに近い働きを持つとされています。

 

ローヤルゼリー

ミツバチの分泌物で、アミノ酸やビタミン、ミネラルなど豊富な栄養素を含んでいます。

 

そのほか、各種ビタミン・ミネラルなども配合されています。

 

エクオールには、HRTの代わりになる可能性も

昨今では、更年期向けサプリメントと聞いて、最初に「エクオール」を思い浮かべる出す人が多いかもしれません。エクオールとは、上記の通り、大豆イソフラボンが腸内細菌によって分解(代謝)されてできる、エストロゲンに近いとされる成分です。

 

研究によると、エクオールを摂取することで、更年期によく起こるホットフラッシュ(ほてり)の回数が減ったり、首や肩のこりが楽になったりする効果が確認されています。 

 

さらに、更年期になるとあらわれやすい、ヘバーデン結節やブシャール結節といった指の関節が痛くなる症状の緩和にもつながる可能性があります。そのほか、骨密度の減少を抑えたり、血液中のLDLコレステロールの代謝を助けたり、お肌のハリを保ったりする効果も期待されています。 

 

日本人女性の約半数は、大豆イソフラボンを摂取しても、それを体内でエクオールに変えることができません。そのため、もともと自分の体の中でエクオールを作れない人にとっては、サプリメントで補うことが、さまざまな不調の改善に役立つ可能性があります。 

 

エクオールは大豆イソフラボンから作られるため、大豆アレルギーのある人は摂取できません。しかし、ホルモン補充療法(HRT)を受けたくても受けられないという方にとっては、エクオールが代替となる可能性も期待されています。

 

自己判断せず、迷った時に相談できる医師を見つけて

 

サプリメントのなかには、エクオールのように、更年期などの不調に役立つものもあります。とはいえ、あくまで「食品」であり、体への影響は緩やかで個人差があります。手軽に使えることはもちろんメリットですが、体調や症状によっては、薬でエストロゲンをしっかり補充したほうが良い場合も少なくありません。 

 

「薬だと更年期にガチ過ぎる気がしてイヤ」「まずはサプリからはじめたい」といったイメージにとらわれず、症状の度合いに応じて、適切な選択をすることが大切です。できることなら婦人科を受診し、医師に相談したうえで選択してほしいなと思います。

 

例えば、日常生活に支障が出るほどの急なほてり(ホットフラッシュ)、不眠、気分の落ち込みやイライラ、関節痛がある場合、サプリメントにこだわっているうちに症状が進み、治療が難しくなることがあるかもしれません。 更年期をより快適に過ごす、自分に合った方法を見つけるにはぜひ、気軽に相談ができる、信頼できる婦人科医を見つけてください。

 

医師はあなたの症状や体の状態を把握し、適切なアドバイスや治療法を提案してくれるはずです。「こんなことで相談しても良いのかな?」とためらわずに、気になることは相談してみましょう。

 

我慢は禁物!社会全体で考える更年期の課題

更年期の体調不良を我慢することは、個人だけでなく、社会全体の損失にもつながります。
 

経済産業省が2024年に発表した調査結果によると、更年期症状による労働損失等の経済損失は、社会全体で1.9兆円と推計されています。更年期を迎える40代~50代は、会社で責任ある立場につくことの多い年齢とも重なっていることから、更年期の不調は社会全体の課題でもあります。

 

最後になんだか難しい話をしてしまいましたが、更年期には程度の差こそあれ、ほとんどの人の体に変化が生じます。変化自体は避けられないものですが、そこであらわれる症状を和らげる方法や手段は、科学的根拠のあるものがいくつもあります。せっかくあるのだから、使わなければもったいないです。十分な知識を持って迎えれば、更年期は決してこわがるような存在ではないはずです。

 

更年期の症状は、徐々に始まり、ゆるやかに続いていきます。そのため、症状が出ていることに気付きにくいことが少なくありません。「頑張れば動ける」程度のものがずっと続いていたら、それが日常になり、いつしか倦怠感がなかった頃の元気な自分を忘れてしまうこともあるでしょう。ですが、やはり常に「頑張らなければ日常生活が滞る」のであれば、それは治療が必要な状況といえます。
 

ほとんどの人が、今でも十分に頑張っているのですから、更年期の症状に対してそこまで頑張らなくても大丈夫です。
 

更年期を抜けて、女性ホルモンに振り回されなくなった日々は、とてもラクで楽しいですよ! 更年期の先に待っている毎日を、元気に楽しく過ごすためにも、信頼できる婦人科医を見つけて、更年期を一緒に乗り切っていきましょう。

 

 

【参考書籍】
・宋 美玄「【読む常備薬】図解ただしく知っておきたい子宮と女性ホルモン」(河出書房新社)
・内山 成人「大豆由来の新規成分“エクオール”の最新知見」日本食品科学工学会誌, 2015, 62(7), 356-363
・鈴木 信孝「機能性食品:プラセンタエキス」日本補完代替医療学会誌, 2020, 17(2), 99-104
・安井 敏之, 松浦 幸恵「補完代替医療とその留意点(エクオールを中心に)」月刊地域医学, 2019, 33(12), 35-40
・経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について 令和6年2月」
・健康長寿ネット「サプリメントの定義と正しい利用法」https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/supplement.html(2025年3月20日閲覧)
・日本医師会「「健康食品」・サプリメントについて | 国民のみなさまへ」https://www.med.or.jp/people/knkshoku/(2025年3月20日閲覧)
・厚生労働省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0202-1a.html(2025年3月20日閲覧)
・国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「「健康食品」の素材情報データベース」https://www.nibiohn.go.jp/eiken//info/pdf/k092.pdf(2025年3月20日閲覧)
 

 

山本 尚恵

医療ライター。東京都出身。PR会社、マーケティングリサーチ会社、モバイルコンテンツ制作会社を経て、2009年8月より独立。各種Webメディアや雑誌、書籍にて記事を執筆するうち、医療分野に興味を持ち、医療と医療情報の発信リテラシーを学び、医療ライターに。得意分野はウイメンズヘルス全般と漢方薬。趣味は野球観戦。好きな山田は山田哲人、好きな燕はつば九郎なヤクルトスワローズファン。左投げ左打ち。阿波踊りが特技。

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

院長

宋美玄先生

産婦人科

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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