
閉経間近なのに経血ドバッ!? 経験者が語る「更年期の大出血」原因と対策【体験談】
「更年期になったら、もうすぐ生理が終わる」と思っていませんか?実は、閉経が近づくにつれて経血量が少なくなる方もいれば、逆に劇的に増えたり、だらだら続いたりすることも少なくありません。多くの方が経験する、この戸惑いや不安を伴う「閉経前の大出血」。この記事では、医療ライターとして私自身の経験や、周りの方々のリアルな声も交えながら、なぜ大出血が起こるのか、どんな状態なのか、そしてどう考え、どう対処すれば良いのかをお伝えします。皆さんの不安解消の一助となれば幸いです。
閉経前の生理、どうなると思ってた?
更年期と聞くと、「あぁ、もうすぐ生理が終わるんだな」とイメージする方は多いでしょう。以前の記事でもお話ししましたが、更年期は多くの女性に訪れる自然な変化の時期です。
41歳で比較的早めに閉経を迎えた、医療ライターの私がお伝えする、今回のテーマは、ちょっとびっくりするかもしれない、そして実際に経験すると少々不安になる症状、「閉経が近づいているのに、生理の量が信じられないくらい増える」という現象、通称(?)「更年期の大出血」についてです。
私自身も実は、この大量出血を経験しています。それは、私が比較的早く閉経を迎えた後に始めたホルモン補充療法により月経が再開し、それから3週間ほど経ったある日のこと。ホルモン補充療法によって月経(生理)が再開する可能性は、事前に聞いていましたが、まさか、ここまでとは……という、驚くほどの経血量でした。最も量が多かった時は、Lサイズの月経カップ(私はもともと経血量が多かったため、ナプキンでは不安かつムレるのが嫌で、月経カップ派でした)が1時間半でいっぱいになり、あふれてしまったほどです。それまでは、どんなに量が多くても4時間はもっていたので、その倍以上の経血が排出されたことになります。

ちなみに、Lサイズの月経カップの容量は一般的に、24ミリリットル前後。多い方でも、一日分の経血量は、ほぼ受け止められる計算です。それが1時間半であふれるなんて、あらためて考えるすごい量ですね。よく生きてたな(笑)。
なぜ「大出血」が起こるの? ホルモンバランスの乱れ
さて、更年期とは、一般的に閉経を挟んだ前後約5年間、合計約10年間を指します。昨今では、英語の呼び方を採用して「ペリメノポーズ(閉経移行期)」と呼ぶ場合もあります。
閉経移行期の間は、まだ生理がある状態ですが、卵巣の働きは徐々に衰えていきます。なぜこの時期に、経血量が減るのではなく、逆に増える「大出血」が起こることがあるのでしょうか? その鍵を握っているのは、女性ホルモンの「エストロゲン」と「プロゲステロン」という二つのホルモンバランスの乱れです。
エストロゲンは、子宮の内側にある子宮内膜を厚く育てる働きを持つホルモンです。一方、プロゲステロンには、十分に厚くなった子宮内膜を安定させ、時期が来たらきれいに剥がして体外に出す(=生理)という働きがあります。ペリメノポーズになると、卵巣の機能が不安定になるため、排卵が起こりにくくなったり、排卵が起きてもプロゲステロンが十分に分泌されなかったりといったことが増えてきます。
すると、エストロゲンによって子宮内膜はせっせと作られて厚くなるのに、それをきれいに剥がす合図となるプロゲステロンが十分に働かない、という状態が起こることがあります。その結果、子宮内膜はどんどん分厚く積み重なっていきます。最終的には、分厚い子宮内膜が維持できなくなり、一気に剥がれ落ちるのですが、分厚くなっていた分、とんでもない量の経血となって出てきてしまうのです。周期も乱れがちになり、短い間隔で生理が来たり、来たと思ったらダラダラと長く続いたりすることもあります。剥がれ落ちた内膜がレバー状の塊となるのも、この時期に多く見られます。
これが、「閉経前の大出血」の主なメカニズムといえます。
どんな「大出血」を経験する? リアルな声
閉経前の大出血については、人によって感じ方は違うものの、多くの方が「今までとは比べ物にならない」「本当にびっくりした」と言っています。冒頭で紹介した私の事例も話しつつ、友人に聞いてまわったところ、こんな声が集まりました。
「寝る前に夜用のナプキンをして、さらに多い日用のタンポンをして寝たのに、朝起きたらパジャマもシーツも血まみれだった」
「2~3時間おきにおむつ型のナプキンを交換しても間に合わず漏れる」
「経血量が多すぎて、ずっとトイレにいようかって思うくらい」
「会議中に急にドバッと出てしまい、イスを血まみれにしてしまった」
「ナプキンを交換しようとトイレに行ったら、今まで出たことのない、血の塊みたいなのがボトッと出てきて、思わず病気かと思ってびっくりした」
「生理期間が今まで5日くらいだったのに、閉経間近になってから2週間近くダラダラ続くようになった」
「あまりに量が多くて、貧血になりやすくなった気がする」
もともと経血量が多かった人も、そうでなかった人も、何かしら「いつもと違う」生理の感じに戸惑いを覚えているのがわかります。
これは更年期? それとも別の病気? 受診の目安
このように、経血量が劇的に増えることは更年期の一症状としてあるとはいえ、注意が必要なケースもあります。なぜなら、別の病気が原因で大量出血が起こっている可能性がゼロではないからです。
特に以下のいずれかに当てはまる場合は、「更年期だから」と自己判断せず、婦人科を受診して相談することをおすすめします。
閉経と診断された(または1年間生理が来ていない状態が続いていた)後に、何もしていないのに出血があった
これは「不正出血」にあたり、更年期とは別の原因が考えられます。
生理と生理の間に出血がある(不正出血)
生理のタイミング以外での出血は、要注意です。
出血量が多く、めまいや立ちくらみ、強い疲労感(貧血のサイン)がある
体に大きな負担がかかっていて、治療が必要な状態といえます。
強い腹痛や気になる症状がある
出血だけでなく、痛みがひどいなどの症状がある場合も受診しましょう。
性行為の後に毎回出血する
性交後出血も、受診して原因を調べることをおすすめします。
上記のような症状の背景には、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症といった病気や、稀ではありますが子宮体がんなどが隠れている可能性もあります。「いつもと違う」「何かおかしい」「不安が大きい」と感じる場合は、遠慮せずにご自身の感覚を信じて、産婦人科医に相談するのが安心です。
つらい出血をどう乗り切る? 対処法
更年期による大量出血の場合も、医師に相談すれば、ご自身の状態や希望に合わせて治療法を選ぶことができます。
止血剤や痛み止めを使う
急な出血を一時的に抑えたり、つらい痛みを和らげたりするのに有効です。
ホルモン補充療法を行う
ホルモンバランスを整えるのに有効です。詳しくは、以前の記事でお話ししています。
IUS(ミレーナなど)を装着する
子宮内に黄体ホルモンを持続的に放出する装置を入れ、内膜が厚くなりすぎるのを抑えることができます。
また、症状が非常に重く、上記のような方法で改善しない場合には、子宮内膜を物理的に除去・破壊する手術(子宮内膜アブレーションなど)や、子宮全摘術が選択肢となることもあります。
まずは一人で抱え込まず、「こんなにつらいんです」「どうにかしたいです」と率直に医師に伝えてみてください。きっと、あなたに合った解決策が見つかるはずです。
更年期の出血、正しく理解し、こわがらずに向き合おう
閉経前の大量出血は、閉経移行期に多くの女性が経験しうる、ホルモンバランスの乱れによる体の自然な変化です。急な大出血に驚いたり、不安になったりするのは当然のことですが、そのメカニズムを知っていれば、少しは心の準備ができるでしょう。
ただし、全ての出血が更年期によるものとは限りません。特に閉経後の出血や、量が多い、痛みが強い、ほかの症状を伴うなど、「いつもと違うな」「なんだか不安だな」と感じる場合は、迷わず婦人科を受診してください。
更年期には、体の変化に戸惑うことがたくさんありますが、仕組みを理解し、必要に応じて専門家の力を借りれば、自分に合った方法で向き合っていくことができます。大量出血も、適切に対処して、安心して過ごしていきましょう。
【参考文献】
・宋 美玄「【読む常備薬】図解ただしく知っておきたい子宮と女性ホルモン」(河出書房)
・公益社団法人 日本産科婦人科学会, 公益社団法人 日本産婦人科医会「産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2023」
・「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版」(メディックメディア)
・Mayo Clinic「Perimenopause - Symptoms and causes -」
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/perimenopause/symptoms-causes/syc-20354666 (2025年4月27日閲覧)
山本 尚恵
医療ライター。東京都出身。PR会社、マーケティングリサーチ会社、モバイルコンテンツ制作会社を経て、2009年8月より独立。各種Webメディアや雑誌、書籍にて記事を執筆するうち、医療分野に興味を持ち、医療と医療情報の発信リテラシーを学び、医療ライターに。得意分野はウイメンズヘルス全般と漢方薬。趣味は野球観戦。好きな山田は山田哲人、好きな燕はつば九郎なヤクルトスワローズファン。左投げ左打ち。阿波踊りが特技。