crumii編集長・宋美玄のニュースピックアップ #53
出生前診断を受ける妊婦さんが10年で4倍に——NIPTの現状と課題とは
カテゴリー:妊娠
このようなニュースがありました。
出生前診断、妊婦の1割超実施 10年余りで4倍に―成育医療研など大規模調査
2023年に「出生前診断」を受けた妊婦は11.5%で、2011年の3.2%から約4倍に増えたというニュースです。理由として、2022年にそれまで35歳以上というNIPTの年齢制限が実質撤廃されたことが挙げられます。日本でNIPTが始まった2013年に7775件だったのが、2023年には4万813件に達したとのことです。(ただし、無認証施設での検査数は不明です)
出生前診断を受ける妊婦さんが増加。
何が変わった?
私は、産婦人科医になってから主に周産期センターで勤務し、2009年にはイギリスのFetal Medicine Foundation という出生前検査の研究所に留学していました。約20年前は、お腹の赤ちゃんが健康かどうか知りたいと言うと「親になる覚悟が足りない」と言われるような時代でした。妊婦健診でも出生前検査のことを積極的に情報提供されることはありませんでした。
NIPTが日本に入って来るころから、報道各社が「新型出生前診断でダウン症が99%分かる」「命の選別との批判を呼びそうだ」とセンセーショナルに報道し、結果的に多くの妊婦さんに検査の存在を知らしめ、NIPTの運用の動向が注目されました。結果として検査を受けるために非常に高いハードル(認証施設が限られる、年齢制限、夫婦揃って複数回のカウンセリングなど)が設けられ、結果的に受けたくても受けられない妊婦さんたちをターゲットとした無認証施設が多く出来ました。

かつては夫婦でのカウンセリング義務や年齢制限があった(Photo:PIXTA)
制限の撤廃でNIPTは受けたい人が受けられるように
2022年に認証施設の基準が緩和され、年齢制限や夫のカウンセリング同席などの要件が無くなり、費用負担も当初より軽くなってきたため、受けたかった人がより受けられるようになってきたと言える結果です。母子手帳に出生前検査の説明が載るようになるなど、以前より情報も得やすくなりました。
そして、NIPTという制度の高いスクリーニング検査(リスクの高い人を抽出する検査)が広まったことで、羊水検査の件数が減少したのは意義深いと思います。
NIPTの普及で羊水検査は減少
記事によると、確定診断のための羊水検査は、2023年に7,811件だったのが、2014年にの1万6,454件をピークとなり、23年は5,620件に減少したとのことです。また、羊水検査は染色体異常の検出率が従来の約8%から20%に向上したとのことで、NIPTが普及したおかげで、羊水検査が必要性の高い人に絞って受検されるようになっていると言えます。羊水検査はわずかながら流産のリスクもあるため、好ましいことと思います。
編集部注:羊水検査とは、妊婦さんのお腹に針を刺して、羊水を採取し調べる検査のこと。確定診断として行う。

羊水検査では赤ちゃんのいる子宮に針を刺す必要がある Photo:PIXTA
厳しい規制がかえってアンダーグラウンドを生んだ
ただ、この10年余りNIPTが注目され、普及してきた過程で、弊害もいくつかあります。
そのうちの一つは、国が数ある検査の中でもNIPTだけを規制したため、需要がアンダーグラウンドに潜り、無認証施設が多数出来たこと。無認証施設は、胎児を診ることのできない非産婦人科医が経営しているところも多く、精度の高い3つのトリソミーだけでなく、諸外国で実用化も推奨もされていないような項目を多数調べて無駄に高額な費用を取ったり、あたかも先天性疾患が全て分かるかのような広告を出したりしています。
NIPTさえ受ければ大丈夫、は誤解。
見落とされがちな胎児超音波検査の重要性
検査項目のラインナップがたくさん並んだ広告を目にすると、NIPTで色々な項目がわかるような気になってしまいます。でも実際は、NIPTで分かるのは染色体の一部は本数の異常や構造の異常で、先天性疾患全体からすると一部にすぎません。SNSで妊婦さんたちが出生前検査について話題にされているのをよく見ますが、NIPTを受ければ安心と思っている方も多く、重要な出生前検査である胎児超音波検査について知らないままになっているのを感じます。
他にも、海外ではNIPTや胎児超音波検査を公費で受けられる国も少なくないのに、日本では全額自己負担というのも、受けられる人と受けたくても受けられない人の格差を産んでいると思います。様々な考えの方がいる事項ではありますが、妊婦さんたちのニーズが高まってきているので、そろそろ議論を俎上に乗せても良いのではと思います。
赤ちゃんの情報を知りたいという妊婦さんやご家族は多いと思います。crumiiでは、赤ちゃんの病気や出生前検査についても継続的に発信していきます。

















