山田ノジルのドラマレビュー #8 『ファーストクライ』第8話
ドラマ「ファーストクライ」8話レビュー 妊婦の孤立と孤独
ついに「自分を捨てた母を探し出す」「母への復讐」へと辿り着いた第8話。いやー、山場でしたね。今回登場したのは、未受診妊婦のまま隠れて子どもを産み落とし、すぐに手放さなければならなかった二人の女性でした。
そこに殺意はない。愛情はある。それでも、そうせざるを得なかった
第8話で描かれたのは、そんな妊婦たちの孤独と孤立だったのだと思います。
ドラマでは「予期せぬ妊娠」の結果として、孤立していく女性たちが描かれていました。しかし現実には、結婚し、行政や医療、福祉ともつながり、予定内の妊娠であっても、妊娠によって孤立することは珍しくありません。
想像を絶するつわり。ホルモンバランスの変化によるメンタルの不調。自分の身体なのに、自分のコントロールが利かなくなっていく恐怖。そして、仕事はどうなるのか。金はどうなるのか。産んだあと、私はちゃんと生きていけるのか――。
そうした身体や心の変化に加え、子どもへの責任によって価値観や生活が変わり、これまでの人間関係や社会とのつながりが切れていくこともあるでしょう。つわりなどのマイナートラブルで仕事が続けられなくなる。日常生活に支障が出る。なのにパートナーは知らん顔……という恨み節も、残念ながらよく聞く話です。

Photo:PIXTA
ちなみに自分の場合は、既婚で、一応は望んで妊娠出産したものの、周囲から手放しで喜ばれたわけではありません。20代で子どもを産んだ後輩からは「(その歳で)なにやってんすか」と苦笑されたり、古巣のクライアントからは、体験取材に制限が出たことについて苦々しく陰口を言われていたり(それを告げ口してくる人がいるんだな)。40歳での出産となったため、やたらと高齢出産のリスクを説かれることもありました。
基本、何を言われてもあまりダメージを食らわない私でも、些末なプチムカは山のようにありました(それと同時に、支えてくれた人たちへの感謝も山のようにあります)。ああもちろん(?)、例にもれず夫は空気です。空気すぎて、周囲からは「実は妄想のパートナーなんじゃないか」と思われていたよ!
若く妊娠しても何か言われ、高齢で妊娠しても嫌味を言われる。実に腹の立つ世の中ですね。
私のように、既婚で、望んだ妊娠で、周囲に支えてくれる人もいた人間ですらそうなのだから、未婚や計画外の妊娠に対して社会が向ける偏見や圧力は、どれだけのものでしょう。
クラシカルな名作であるホラー映画『ローズマリーの赤ちゃん』をはじめ、巷には妊娠出産にまつわる怪異や恐怖を描いた作品が数え切れないほどあります。その根底にあるのは、女性の身体や妊娠について、本人以外の人間が勝手に決定し、利用し、コントロールしてこようとする社会そのものへの恐怖ではないでしょうか。
『ファーストクライ』でも、今回のエピソードでは、望まぬ妊娠によってパートナーから中絶を迫られる女性が描かれました(同時に、親の社会的地位の問題もからんでいそう)。第4話では、男児が生まれるまでと、妊娠出産を強いられる多産DVが描かれていました。

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妊娠には、常にそうした「影」の部分がついて回る
問題は「助けがあるかどうか」だけではないのだと思います。家族がいても、パートナーがいても、行政や医療とつながっていても、妊娠は人を簡単に孤立させます。そして、助けてくれる人がいないことと、助けを求められないことは少し違います。それでも妊娠中は、そのどちらも簡単に起こるのです。そんな空気の中で、自分の心と身体にムチを打ち、限界まで独りで抱え込んでしまう人もいるでしょう。
今回描かれた二人の妊婦も、子どもを憎んでいたから手放したのではありませんでした。そこには愛情がありました。それでも、自分独りでは抱えきれない事情があり、子どもを手放さざるを得なかったのです。
だからこそ、「なぜ産んだのか」「なぜ育てないのか」と、結果だけを見て母親を責めるのは、あまりにも簡単すぎます。
今、大阪府泉佐野市が準備を進めている「赤ちゃんポスト」をめぐって、「育児放棄を助長する」という声もあるといいます。
けれども、子どもを手放さなければならないほど追い詰められた人を、さらに「母親失格」と責めたところで、孤立の連鎖が断ち切れるわけではありません。

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妊娠も、出産も、育児も、結局は女性だけの責任にされがちです。前回に続き繰り返しますが、妊娠も出産も育児も、独りでできるものではありません。
「子どもを捨てた母」を探し出し、「母への復讐」へと進んだ第8話は、その母親たちが、なぜそこまで追い詰められたのかを描いた回でもありました。
子どもを捨てた、という事実の前に、その人は、誰に助けを求められたのか。そして、誰がその人を孤立させたのか。『ファーストクライ』によってそうした背景も共有されていき、あるべき社会の姿が見えてくるのかもしれません。
次回の視聴リンクはこちら。
山田ノジル
フリーライター。女性誌のライターとして美容健康情報を長年取材してきたなかで出会った、科学的根拠のない怪しげな言説に注目。怪しげなものにハマった体験談を中心に、取材・連載を続けている。著書『呪われ女子に、なっていませんか? 本当は恐ろしい子宮系スピリチュアル』(KKベストセラーズ)ほか、マンガ原作や編集協力など多数の作品がある。 X:@YamadaNojiru
















