女性 下腹部痛 流産

【専門医が教える】流産?どんな症状が出る?早期発見のために知っておくことから流産の確率まで解説

妊娠中は身体の変化が大きく、さまざまな不安を感じやすい時期。特に初期の頃は、「流産」という言葉を耳にすると、さらに不安が高まるかもしれませんが、流産は決して珍しいことではありません。この記事では、流産の基本的な定義や確率、症状や原因、種類、自分でできる予防法がある場合などについて詳しく解説します。

 

 

流産の定義とは

流産とは、妊娠が継続できずに胎児が子宮内で死亡・排出されてしまうことを指します。日本では一般的に、妊娠22週未満で妊娠が終わってしまう場合を「流産」と呼び、妊娠22週以降に妊娠が終わる「早産」と区別されています。


まずはじめに伝えておきたいのは、妊娠初期は胎児が非常に不安定な時期で、自然に流産に至ってしまうことは珍しいことではないということです。
 

流産はとても悲しいことで、自分の行動が原因だったのではないかと自分を責めてしまうお母さんが少なくありませんが、必ずしもお母さんの行動や不注意が原因ではないケースがほとんどなのです。
 

ポイント

・流産は妊娠22週未満で妊娠が継続できず終わってしまうこと
・妊娠11週くらいまでは流産のリスクが比較的高い
・染色体異常など偶発的な原因が多い


注釈
※1 染色体異常:遺伝子が乗った染色体に異常があること。流産や先天疾患の原因となる場合がある

 

流産の確率はどれくらい?

厚生労働省や日本産科婦人科学会の調査によると、妊娠が確認された場合でも約10〜15%ほどが流産に至ると報告されています(※2)。特に妊娠初期は流産のリスクが高く、全流産の約8割が妊娠11週頃までに起こります。


流産の確率は決して低くないため、多くの女性が経験しています。
 

もし流産という結果になってしまったとしても、自分だけが特別なわけではなく、誰にでも起こり得ることなのだと理解していただければと思います。
 

ポイント

・妊娠確認後でも10〜15%が流産に至る可能性がある
・初期(12週頃まで)の流産が全体の約8割

 

日本における年齢別の流産確率
※日本における年齢別の流産確率。全体としては20%前後と、世界の先進国の水準と変わりない(claudeで作成)

 

 

主な流産の症状は?

流産が起こるときには、全く症状がないことも多いですが、いくつかの症状がみられることがあります。ただし、症状の現れ方や程度は人によります。ここでは代表的な3つの症状について解説します。

 

症状01. 出血

流産の代表的な症状のひとつ、妊娠中の少量の出血は、必ずしも流産を意味するわけではありません。色や量はさまざまで、鮮血の場合もあれば茶色いおりもの程度の場合もありますが、出血そのものは正常な経過でも起こることがあります。出血とともに下腹部痛があるときは、切迫流産などの可能性もあるため、なるべく早めにかかりつけ医に相談しましょう。

 

症状02. 下腹部痛や腰痛

下腹部痛や腰痛も流産のサインの一つです。生理痛に近い痛みを感じることが多いですが、痛みの程度は個人差があります。また、チクチクという軽い痛みから、生理痛より強い痛みまでさまざまです。痛みが続く、あるいは徐々に強くなる場合は医師の診察を受けることが望ましいです

 

症状03. つわり症状の急激な変化

つわり(妊娠初期に起こりやすい吐き気や食欲不振などの症状)が急に軽くなった、あるいは急に強くなったと感じる場合は、体調の変化を観察する必要があります。必ずしも流産を示すものではありませんので、心配する必要はあまりありません。明らかに妊娠初期の症状が大きく変わって不安を感じた場合は、一度かかりつけを受診して赤ちゃんの様子を確認してもらうと安心です。

 

ポイント

・妊娠中の出血や下腹部痛・腰痛は要注意かもしれない
・つわりの急激な変化も症状のこともある
・気になる症状があれば受診しておくと状況がわかる

 

流産の原因は?

流産の原因は一つではなく、複合的な要因が重なる場合もあります。しかし、多くの場合は下記のような要因が挙げられます。

 

1.胎児の染色体異常

妊娠初期の流産の大部分は胎児側の染色体異常によるとされています。これは受精時の偶然で誰にでも起こることであり、母体の健康状態や生活のせいではありません。

 

2.子宮やホルモンの異常

子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)や子宮奇形など、子宮そのものの形態的な問題や、黄体ホルモンの不足などが原因になることもあります。

 

3.感染症

細菌やウイルスなどの感染症によって、子宮内に炎症が起こると流産につながることがあります。

 

4.生活習慣

過度な飲酒や喫煙、激しい運動やストレスなども流産のリスクを高める要因とされています。

 

これらはいずれも確実に予防できるわけではありませんが、生活習慣を整えることなどでリスクを下げることは可能です。

 

ポイント

 ・流産の多くは受精卵の染色体異常によるもので、偶然おこる
・母体の子宮やホルモンの異常、感染症、生活習慣なども関与する場合もある


注釈
子宮筋腫(しきゅうきんしゅ):子宮の筋肉にできる良性の腫瘍。大きさや場所によって症状や妊娠への影響がある
黄体ホルモン:女性ホルモンの一種。妊娠の維持に関係している

 

流産の種類は?

一口に「流産」といっても、その進行具合によってさまざまな状態があります。ここでは代表的な5種類を紹介します。

 

切迫流産

流産になりかかっている状態で、妊娠が継続する可能性も多いです。出血や下腹部痛などの症状がみられますが、胎児はまだ子宮内に留まっている状況です。安静などにより流産を回避できる場合もあります。
 

進行流産

切迫流産の状態からさらに進み、流産が進行している状態です。出血や痛みが強くなり、子宮口が開きはじめ、流産を止めることが難しくなります。

 

不全流産

流産が起こりはじめ、胎嚢(たいのう)や一部の胎児組織が子宮外に排出されたものの、まだ子宮内に残存物が残っている状態です。強い痛みや出血を伴う場合が多く、医療的処置が必要となることが多いです。

 

完全流産

流産が完全に起こり、すべての胎児組織や胎嚢が子宮から排出された状態です。強かった痛みや出血は、完全流産になってしまうと、は比較的早期に落ち着くことが多いですが、医師の診察を受けて、子宮内の状態を確認する必要があります。

 

稽留流産

子宮内で胎児の成長が止まってしているにもかかわらず、出血や腹痛などの自覚症状がほとんどない状態です。定期検診などで超音波検査を行って初めて発覚する場合もあります。そうなった場合、自然に待機する方法と、流産手術を行う場合があります。

 

ポイント

 ・流産は進行度によって種類が分かれる
・症状や進行度に応じて適切な医療ケアが必要


注釈
胎嚢(たいのう):妊娠初期に子宮内で形成される、胎児を包む袋状の構造

 

流産の予防法はあるの?

残念ながら、染色体異常など偶発的な要因を完全に防ぐことはできません。しかし、生活習慣を見直すことでリスクを減らす可能性があります。特に妊娠初期は、次のような点を意識すると良いでしょう。

 

妊娠初期の場合

無理のない生活

妊娠初期はホルモンバランスの変化やつわりなどで体力を消耗しやすい時期。激しい運動や過度な仕事量は避け、適度な休息を心がけましょう。また、ストレスの蓄積も体調に影響を及ぼす可能性があります。趣味やリラックスできる時間を持つことも大切です。

 

アルコールやタバコを控える

アルコールやタバコには、胎児の成長を阻害する物質が含まれています。これらは流産だけでなく、早産や低体重児の出産リスクも高めるとされています(※3)。妊娠がわかったら、なるべく早めに控えることをおすすめします。


ポイント

・完全に流産を防ぐことは難しいが、生活習慣の見直しは大切
・妊娠初期は体力温存、ストレス軽減を心がける
・アルコールやタバコは控えることでリスク低減


注釈
早産:妊娠22週以降から37週未満で出産すること
低体重児:出生時の体重が2,500g未満の赤ちゃん

 

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photo:PIXTA

 

 

流産後の妊娠について

一度流産を経験すると、「次の妊娠は大丈夫かな?」と不安になる方も多いでしょう。しかし、流産後でも健康的に次の妊娠を迎え、出産される女性はたくさんいらっしゃいます。流産直後は身体と心の回復が何より大切です。医師の指示を仰ぎながら適切なタイミングを見計らい、必要に応じて検査やカウンセリングを受けると安心です。


また、流産した原因が特定できる場合は、次の妊娠に向けて対策を立てることも可能です。子宮の形態的異常やホルモン異常が疑われる場合は、医療機関で検査を受け、治療・管理をすることで流産のリスクを減らせるケースがあります。
 

ポイント

・流産後でも妊娠・出産に成功する女性は多い
・身体と心をゆっくり回復させることが大切
・必要に応じて検査やカウンセリングを受けると安心

 

受診の目安はどのタイミング?

妊娠中に以下のような症状や不安を感じたときは、早めに産婦人科を受診することが推奨されています。

 

・出血や下腹部痛、腰痛がある
・つわりなど妊娠初期症状が急に変化した
・明らかに胎動が減ったり感じなくなった(妊娠中期以降)
・不安やストレスが強い

 

症状が軽度でも、一度検査を受けることで安心につながります。特に出血を伴う場合は早めの診察が大切です。医療機関では超音波検査などを用いて胎児の状態や子宮内の状況を調べ、必要に応じて安静指示や治療が行われます。


ポイント

・症状がある場合は早めに受診することでリスクを低減
・妊婦健診は定期的に受け、異常の早期発見を心がける

 

まとめ

流産は決して珍しいことではなく、妊娠初期の10〜15%が流産に至るといわれています。多くのケースでは胎児側の染色体異常など偶然の要因が大半で、母体の不注意が原因ではありません。基本的には、赤ちゃんを信じて心配しすぎずに過ごしましょう。妊娠中に出血や下腹部痛、つわりの急激な変化などがみられた場合は、早めに医療機関を受診し、適切なケアを受けることが大切です。


流産を経験した方のなかには「次の妊娠がうまくいくのだろうか」と強い不安を抱える方や、あの行動がいけなかったのかも、と思い詰めすぎてしまう方も少なくありません。


流産を経験しても、妊娠して産婦人科に帰ってきてくれる妊婦さんはたくさんいます。ですが、複数回続けて流産に至った場合は、原因がみつかることがあるので、かかりつけに相談してみることをおすすめします。


しっかりと身体と心を整えることで再度妊娠・出産を目指すことは十分に可能です。ひとりで抱え込まず、パートナーなど周囲のサポートや医師のアドバイスを受けながら過ごすようにしましょう。


少しでも不安や異変を感じたら、遠慮なく産婦人科へ相談を。適切な情報とサポートが、不安を和らげる一助になるはずです。
 


この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師の診断・治療に代わるものではありません。身体の状態や症状には個人差がありますので、不安な場合は必ず専門の医療機関を受診してください。
 

【参考文献】

日本産科婦人科学会HP 流産・切迫流産

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

院長

宋美玄先生

産婦人科

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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