crumiiを応援する バナー
お腹をさする妊婦

妊娠中の「胎動」について徹底解説!

妊娠中に、赤ちゃんの存在を一番感じられる瞬間は「胎動」があるときかもしれません。
本記事では、この「胎動」について、基本情報から妊娠時期ごとの胎動の変化、胎動の異常、よくある誤解などをわかりやすく解説します。

胎動ってなに?

胎動とは、妊娠中にお母さんが感じるお腹の赤ちゃんの動きのことです。

赤ちゃんは妊娠初期から子宮内で動いていますが、胎児が十分に大きくなるまでその動きを感じることはできません。多くの妊婦さんは妊娠5か月頃(18〜20週)に初めて胎動を自覚します。初めての妊娠(初産婦)の場合はもう少し遅い20週過ぎになることもありますが、経産婦さんですと16週頃から感じ始めることもありますし、そもそも感じ始める時期にはかなり個人差があります。

胎動の感じ方は「ぽこぽこ」「ぐにゃぐにゃ」と形容され、泡がはじけるような感触や、腸が動くような感覚など、人によってさまざまです。胎動を感じられること自体が、お腹の赤ちゃんが元気に育っているサインでもあり、多くのお母さんにとって胎動は赤ちゃんの存在を実感できる嬉しい瞬間だと思います。

妊娠時期ごとに胎動はどう変化する?

pixta_73082065_M.jpg
photo: PIXTA

胎動の感じ方や頻度は、妊娠の時期によって変化します。

妊娠中期に入ると赤ちゃんがどんどん大きく成長し、胎動も次第に力強く頻繁になってきます。また、赤ちゃんの活動パターンも一定のリズムを持つようになります。一般的に赤ちゃんは午後から夜にかけて活発に動くことが多いとされており、逆にお母さんが日中動いている間や深夜帯は胎動に気づきにくいこともあります。
一日の中で赤ちゃんにも睡眠と覚醒のリズムがあり、多くの場合、20〜40分程度の「お昼寝」を繰り返しており、その間は胎動が感じられないこともありますが、これは正常範囲です。

胎動の回数は妊娠後期に向けて徐々に増えていき、妊娠32週頃をピークにその後は大きく増減しなくなります。ただし、これは赤ちゃんの動きが弱くなるという意味ではありません。お腹の中の赤ちゃんは出産直前まで継続的によく動きますし、陣痛中にも動きを感じるのが通常です。
妊娠後期になると赤ちゃんが大きくなり子宮内のスペースが狭くなるため、動きの種類は「キック」よりも身体をぐっと伸ばすような「圧迫感」に変わることが多いです。ただ、胎動の頻度自体が極端に減ることはありません。

なお、胎動の感じ方には個人差があり、胎盤の位置やお母さんの体格などさまざまな要因の影響を受けます。例えば胎盤が子宮の前壁(お腹側)にある場合、胎盤がクッションになって赤ちゃんの動きがお腹の壁まで伝わりにくく、胎動を感じにくいことがあります。また、赤ちゃんの背中が前側(お母さんのお腹側)にある姿勢だと、背中がクッションとなって胎動が弱く感じられることもあります。

ここまで書いたように、「正常範囲」の要因によって一時的に胎動がわかりにくい場合もありますので、「胎動を感じにくいな」と思うときには、少し時間をおいたり、リラックスして横になるなどして赤ちゃんの動きに集中してみると良いでしょう。

胎動の異常とは?

では、どのような胎動の変化が「異常」と言えるのでしょうか。

医学的には明確な胎動の回数に関する基準は定められていませんが、
「普段より胎動が明らかに減った」
「胎動パターンがいつもと違う」
とご自身が感じる場合は注意が必要です。

日々の中で感じている赤ちゃん固有の動きのリズムから大きく逸脱する変化があれば、それが胎動の異常のサインだと言えます。
また、妊娠24週を過ぎても一度も胎動を感じない場合も異常の可能性があります。そのような時は自己判断で様子を見たりせず、早めに一度かかりつけの産婦人科に相談してみましょう。

胎動の異常、特に「胎動の減少」は、お腹の赤ちゃんになんらかの不調が起きている可能性を示唆します。赤ちゃんが今までより動かないのは、胎盤機能の低下による酸素不足や胎児機能不全(いわゆる胎児の「元気がない」状態)のサインかもしれません。胎盤が子宮内で剥がれてしまう「胎盤早期剥離」が起こると、胎児への血流が減ってしまい胎動も減少することがあります。実際、ある調査では死産の約半数で、その前に胎動の減少が認められたとの報告があります。
これは決して妊婦さんの責任という意味ではなく、胎動の変化が胎児の異常の重要な「警告」となり得るということです。胎動の減少に早めに気づき、適切に対処すれば赤ちゃんの命を救える場合もありますので、ぜひ頭に入れておいてくださいね。

胎動が減少する原因として、赤ちゃん自身の要因以外にもいくつか考えられます。
一部の鎮痛薬や睡眠薬などは胎盤を通じて赤ちゃんに作用し、一時的に胎動を減少させることがあります。また、喫煙や多量の飲酒も胎児の動きを少なくしてしまう要因として知られています。
こうした要因による一過性の胎動減少が疑われる場合でも、「いつもと違う」胎動の変化に気付いたら早めにかかりつけに相談することが大切です。

*「胎盤早期剥離」に関しては、私も自身のニュースレターで詳しい解説記事を書いたので、よければご参照ください。
皆さんに知っておいてほしい産婦人科の怖い話② 〜常位胎盤早期剥離〜

胎動についてよくある誤解と真実

妊娠中の胎動に関しては、さまざまな噂や思い込みが存在します。ここでは代表的な誤解と正しい情報を4つ解説します。

誤解①「妊娠末期には赤ちゃんの動きが少なくなるのが普通」

赤ちゃんは出産直前まで元気に動きます。胎動の頻度自体が妊娠後期になると減ることはありません。臨月に入っても胎動を感じなくなるのは正常ではないため、もしそのような懸念があったら、早めにかかりつけの産婦人科へ相談してください。

誤解②「1日に感じる胎動の回数には○回という基準がある」

正常な胎動の回数には個人差が大きく、一律の基準はありません。
世界保健機関(WHO)も十分な科学的根拠がないことから、全ての妊婦さんに対し日常的な胎動カウント(いわゆる「10カウント法」など)を推奨はしていません。また、「胎動を10回数えるのに2時間以上かかった場合は連絡するように」と説明している医療機関も多いようですが、妊婦さんの胎動の感じ方は個人差があるので明確な基準としてはあまり使えません。
大切なのはお母さん自身が赤ちゃんの普段の胎動パターンを把握し、そのパターンからの明らかな逸脱に「なんかおかしいな」と、いち早く気付くことです。

誤解③「胎動が減っていても心音が聞こえれば大丈夫」

胎動の明らかな減少や停止に気付いたら、夜間でもすぐに産科医療機関へ連絡・受診することが重要です。もし市販の家庭用ドップラー(赤ちゃんの心音を聴くことができる胎児超音波心音計)などで一時的に心拍音が聞こえても、それだけで赤ちゃんが元気だとは限りません。市販の家庭用の心音計はあくまでも「聴いて楽しむ」ためのものだと認識し、過信しないようご注意ください。

誤解④「胎動が多すぎるのも異常なサイン」

胎動が少ない場合の注意点は前述した通りですが、多すぎても「多動なんじゃないか」「胎児が苦しがっているサインなのでは」という誤解を持たれる方がいます。これまでの研究やデータを踏まえると、実際には胎動が多いこと自体が異常のサインであることはまずありません。
赤ちゃんも一人ひとり性格があり、よく動く子もいれば、穏やかな子もいます。胎動の強さや頻度には個人差が大きく、日によって活発な時間帯も変わります。赤ちゃんがよく動くのは、子宮内で筋肉や神経が発達している証拠でもあり、元気なサインと考えられます。一時的に胎動が激しいと感じても、その後にいつも通りのリズムに戻っていれば特に心配はいりません。

 

いかがだったでしょうか。
「胎動が少ない気がする、こんなことで受診したら迷惑なのでは」と思ってしまうかもしれませんが、「胎動が少なくて不安です」という妊婦さんの受診を迷惑がるような産婦人科医はいません(いないはずです、もしいたら同業者としても幻滅します)。
「万が一」の可能性を考え、心配なときは夜でも休日でも必ず相談してくださいね。

不安も多い妊娠生活かとは思いますが、今回の記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。妊婦さん自身にも、男性パートナーにも、一緒にこうした学びを深めてもらえる機会になれば幸いです。

妊婦のおなかに手を添えて話す夫婦
photo: PIXTA

【参考文献】
1.RCOG. Your baby's movements in pregnancy.
2.産婦人科オンラインジャーナル. 胎動は赤ちゃんが元気なしるし 〜胎動が少ないと感じたら〜.

重見大介

この記事の執筆医師

産婦人科オンライン代表

重見大介先生

産婦人科

産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。産婦人科領域の臨床疫学研究に取り組みながら、遠隔健康医療相談「産婦人科オンライン」代表を務め、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りに従事している。他に、HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんに関する啓発活動や、各種メディア(SNS、ニュースレター、Yahoo!ニュースエキスパート)などで積極的な医療情報の発信をしている。

監修チームについて知る
crumiiを応援する バナー

シェアする